表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/346

たった2人のSランクパーティー

 ──碧の杜(フェンサリル)


 それは、ここドラグハートに次ぐ国力を持つと云われる大国、〝ウィンドラッへ〟に籍を置く、たった2人のSランクパーティー。


 ちなみに、ウィンドラッヘの国力が他国と比べて優れているのもドラグハートにおける虹の橋(ビフレスト)と同じく碧の杜(フェンサリル)の功績が大きいのだが──……まぁ、それはさておき。


 先述した通り、碧の杜(フェンサリル)を構成するのはたった2人の狩人ハンター


 武闘家ファイター商人トレーダーを派生元とすし、竜化生物を技能スキルで手懐けて戦う前〜後衛の合成職アドバンス、〝竜操士テイマー〟のリューゲル。


 神官プリースト盗賊シーフを派生元とし、死者の魂を技能スキルで喚び寄せて戦う中・後衛の合成職アドバンス、〝死霊術師ネクロマンサー〟のフェノミア。


 ……たった2人の、Sランク狩人ハンターである。


 パーティー申請に必要な人数は『2人以上』、つまりソロでなければいいのだから特に問題はないのだが、当時は随分と国内の狩人協会ハンターズギルドや王侯貴族は2人のパーティー申請を受けて荒れに荒れたという。


 まだ2人がSランクではなく、Bランク狩人ハンターだった時。


 すでに国内で頭角を現し、Sランク確実だと囁かれていた2人を周知していた国や協会ギルドは、『別々のパーティーのリーダーを担わせれば、2つのSランクパーティーが誕生するかもしれない』と考え、それを2人に伝えようとした矢先のパーティー申請。


 何故そんな事をと、どうして先に相談してくれなかったのかと、今からでも考え直してくれないかと国からの使者や協会ギルドはそれぞれ違う場所と時間で2人に詰め寄ったが、2人の答えは全く同じものだった。


『あいつ以上の()()()が居るとは思えねぇ』

 

『あの人以上の()()()が居るとは思えない』


 そう、国や協会ギルドの思惑を大きく超えたところで2人は強く相互理解を深めていたのだ。


 結局、無理を押し通して未来のSランク狩人ハンターの不興を買うよりも、あれだけ無茶を言ったのに活動拠点としてウィンドラッヘに留まってくれた事を喜ぼうという結論に至り。


 それから僅か半年後、ウィンドラッヘに1つのSランクパーティー、互いの髪と瞳の色から着想を得た碧の杜(フェンサリル)が誕生したのである──。


 ──……そんな他のパーティーにはない変遷を経ている2人だから、などという理由でスプークを始めとした魔導師ウィザードたちや神官プリーストを除く白の羽衣(スワンクローク)は驚いているわけではない。

 

 結論から言えば、この2人がこの場に居る事そのものがある種の異常事態なのだが、それが何故かと問われれば。


「な、何故……っ、何故〝首狩人バウンティハンター〟がここに!?」


「そうだ、アンタら竜狩人ドラゴンハンターじゃねぇだろ!」


 そう。


 2人は間違いなく狩人ハンターではあるが。


 竜狩人ドラゴンハンターではない。


 その名の通り、国や〝首狩人協会(B・ハンターズギルド)〟が懸賞金を懸けた悪人の〝首〟をクエストという形で狩りに行く、〝首狩人バウンティハンター〟。


 竜を狩る物たちと、首を狩る者たち。

 

 狙いは違えど同じ狩人ハンターである事に変わりはないし、そもそもドラグハートにも首狩人協会(B・ハンターズギルド)の支部はいくつか設置されているのだが。


 何故ここに、というスプークの声に同意するような武闘家ファイターの発言からも解る通り、2つの組織と、それぞれに所属する狩人ハンターたちの関係は決して良好だとは言えない状態にある。


 最も大きな理由としては、首狩人バウンティハンターが標的するものが必ずしも悪人の首だけではない──という点にある。


 基本的に竜化生物の討伐クエストは専門家である竜狩人ドラゴンハンターに依頼されて然るべきなのだが、そうでない場合もあって。


 例えば各方々の町や村などを襲撃し、多くの人命を奪った竜化生物の討伐を依頼された竜狩人ドラゴンハンターが、その竜化生物相手に返り討ちに遭ってしまった場合、依頼人はいち早い解決を求めて首狩人協会(B・ハンターズギルド)に依頼する事があるのだ。


 もちろんそういった事は日常茶飯事である為、普段は人間相手に振るっている力を竜化生物相手に振るう為の訓練も積んでいるし、クエストとして受ける分には報酬も出るのだから断る理由もない。


 だが竜狩人協会(D・ハンターズギルド)としては報酬は得られないわ信用は失うわで堪ったものではなく、そうでなくとも上述した場合以外でもクエストのブッキングが発生してしまう事態もごく稀にあり。


 同業者であり、商売敵。


 正直、竜狩人協会(D・ハンターズギルド)だけが一方的に損を被る形となっている現状、両者の間にある壁を取り払う事は難しいだろう。


 そんな首狩人バウンティハンターの中で最高峰の実力を誇るSランクが2人。


 表面上では苦言を呈そうとしても、どう足掻いたところで永遠に敵う事はない絶対強者を前にして、武闘家ファイターだけでなく神官プリーストを除いた白の羽衣(スワンクローク)全員が慄きつつも警戒を解かぬ中。


「お久しぶりです、碧の杜(フェンサリル)の御二方。 今日こちらには虹の橋(ビフレスト)鏡試合ミラーマッチを観に来られたのですよね?」


「そりゃな。 そうでもなきゃ、こんな僻地まで来ねぇよ」


「招待されたからにはねぇ? 元々興味もあったし、ちょうど良かったわ」


 一歩前に出た神官プリーストだけが全く慄く事もなく挨拶するとともに2人の目的を確認したところ、リューゲルは退屈そうに欠伸をかましつつ、フェノミアは虹の橋(ビフレスト)のファンクラブが営んでいたグッズ販売で買った『ユニ様LOVE♡』と書かれた団扇で扇ぎながら神官プリーストの言葉を肯定する。


 属する組織は別だとしても、やはり同じ高みに立つ者のたちの前途は気になってしまうようだ。


「ま、お前らが俺らを嫌ってんのは解るけどよぉ。 今日は同じ目的で来てんだ、仲良く観戦といこうぜ? なぁ?」


「……そう、ですね。 行こうか、皆」


 そんなリューゲルが戦士ウォリアーの肩をポンと──ポンというにはあまりに強い圧が掛かっている気もするが──叩きつつ、せっかくだから普段の確執は水に流して一緒に観ようぜと白の羽衣(スワンクローク)を誘い、比喩抜きで断ればただでは済まないと確信した戦士ウォリアーからの号令に、一行が無言で首肯して歩を進めようとしたその時。


「お、お待ちください! であれば我々も──」


 ドラグハートにはない〝魔導結社マジックシンジケート〟と呼ばれる組織から竜狩人協会(D・ハンターズギルド)へ派遣された以上、与えられた役割がある事は解っているが、それでもユニ以外のSランク狩人ハンターとの知己を得ておくのは悪くないという下心満載のスプークが名乗りを挙げたものの。


「──お呼びじゃねぇよ、()()()()()()()の屑どもが」


「〝詐欺師ライアー〟に改名でもしたら?」


「な、な……っ!?」


 2人から返ってきたのは、あろう事か己が最後の希望(ラストホープ)に向けて放った侮蔑と似た罵倒と、魔導師ウィザードを名乗る事さえ烏滸がましいと知れという明らかな悪口であり、スプークが突然の誹謗中傷に呆気に取られている間に、2人と白の羽衣(スワンクローク)は改めて観覧客ギャラリーが集まりつつある竜狩人協会(D・ハンターズギルド)の修練場へと向かう。


「さぁ、観に行こうぜ。 ユニの独壇場を」


 虹の橋(ビフレスト)を纏めるリーダー、ユニの独り舞台を観る為に。

『よかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思っていただけたら、ぜひぜひ評価をよろしくお願いします!


↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてもらえると! 凄く、すっごく嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ