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時が来たら、また会おう

第1章、完結です!


第2章からは竜化生物もたくさん、サブタイ回収もしていきますので、何卒よろしくお願いします!


次回投稿は1週間後、11/28(火)です!

 それから、およそ30分間ほどの休息の後──。


「さて、と」


 いよいよ王都へ向かうべく、たった2日だけ借りていた宿の一室を引き払ったユニは、町の人々に見つからないように周囲の背景に溶け込む忍者シノビ技能スキル、【忍法術:隠形(カクレミ)】を発動しながら町の雰囲気を脳裏に刻み込むようにゆっくりと歩いていき。


(……どうしようかな。 必要な道具や糧食は常に持ち合わせがあるし、このまま王都へ向かう分には特に──)


 思い残す事はない──……とは言い切れないが、さりとて絶対に成し遂げなければならないというほどの事でもない以上、他の全ては完了しているのだから早急に王都へ向かう事に何一つ問題はない筈だと自問自答していた、そんな時。


「──……おや」


 ユニが、とある知人女性の存在に気がついた。


 かれこれ10年来の付き合いとなるその知人女性──もとい幼馴染の1人であるトリスは、全身鎧フルプレート型の迷宮宝具メイズトレジャーであるイージスを身に着けていないせいか、いつもは鎧の下に隠れている豊満な胸を隠す気がないピッチリした黒のインナーを身に着けて腕組みしながら仁王立ちしており。


「……もう、この町を出るんだな。 ユニ」


「随分と熟睡してたみたいだね、トリス」


 相も変わらず無表情ではあるものの、ユニを見送りに来たと見えるトリスの声音から一抹の寂寥感を感じたユニは、つい揶揄いたくなって『歴代最硬ともあろう者が』と含み笑いとともにそう告げたが。


「……神の力を直に受けたんだ、むしろ2日で目覚めた事を称えてほしいくらいだがな。 私でなければ死んでいたぞ?」


 とはいえトリスの言う通り、何もないところからヒノモトという1つの国を創造した神の力をその身に受けていながら人間としての形を保っている事はもちろん、たった2日で外出できるほどに回復している時点で凄いだろうと自負するトリス。


「君が相手だから使えたんだよ。 ()()()も久しぶりに溜め込んでた力を解放できてスッキリしてた、ありがとね」


「……神さえ〝あの子〟呼ばわりか。 お前らしいな」


 だがそれはユニも重々承知の上だったようで、トリスほど硬いなら直撃しても大丈夫だろうと踏んだ上で、ヒノモトの神に『虫干しの機会をあげるよ』と提案したのだと明かしつつ、あちら側としても喜んでいたという事実を何気なく語ってみせたものの。


 どちらかと言えば国を創った神すらも子供扱いするユニの不遜さの方に引っかかっていたようだが──……まぁ、それはさておき。


「そういえば、ハヤテとクロマはまだ寝てる? お見舞いに行くのも禁止されてたから、どうなってるか知らなくてさ」


「まだ床に就いている。 尤も、目覚めたとしても当分は寝たきりだ。 肉体的にも精神的にも随分と消耗していたからな」


「クロマは特にそうだろうね。 あれだけ頑張ったんだから」


 トリスと出会ったからか、ふと残る2人の事を思い出したユニからの問いかけに、こくりと首を縦に振ったトリスが告げる2人の容態を聞いて、さもありなんと納得したユニが口にした『クロマは特に』という贔屓ともまた違う事実に即した推し量りに。


「……〝竜化の解除〟か。 私は見ていないから何とも……」


「信じられない?」

 

「そうしてやりたいのは山々だが……」


「まぁ、いずれ解る──あぁいや、そっか。 難しいか」


 この世界でただ1人、【魔の理を識る者(マジックノウズ)】だけが可能だとされていた偉業を成し遂げたとは聞いていても、その現場を見ていないせいでいまいち信じ難くあるらしいトリスの苦渋な悩みに、これまで通りパーティーを組んでいれば解る事だと安心させようとしたものの、すぐに己の言葉を否定する。


「まだ正式な手続きを踏んでいないとはいえ、お前が離脱するとなれば虹の橋(ビフレスト)は解散したも同然だ。 あの2人と今一度パーティーを組むのなら、また新しく1からパーティーを作らなければならん──……が、その許可が下りるとも思えん」


「今回の事を考えれば、そうだろうね」


 また、ユニの意図を察したトリスも無言で首を縦に振るとともに自分たちが──虹の橋(ビフレスト)が置かれている現状を再確認した上で、ユニが離脱した後も3人でパーティーを続けられるわけもなく、そう望んだとしても新たなパーティーを組む事もできないだろうと推測するトリスに。


 ユニは、然りと首肯する。


 Sランクパーティーを潰すという愚行を犯した者たちを再び同じパーティーに、なんて国も協会ギルドも許すわけがないのだから。


 しかし、それでもユニはニコリと微笑み。


「けどさ、もう大丈夫だと思うよ」


「……何?」


「トリスは元々そうだけど、あの2人も今回の戦いで随分と覚悟が固まったように見えた。 クロマは特にね。 だからもう、これからは各々の道を歩んでいけばいいんじゃないかな。 私も、君もね」


「そう、か……そうだな、お前の言う通りかもしれん」


 あの戦いの最中にトリスも含めた3人の言動や行動、何より瞳の輝きから確かな覚悟を感じ取り、もう自分が居なくても大丈夫だと、それぞれの好きに生きていけばいいと、奇しくもスタッドからの激励に似た言葉で以て安堵させようとするユニに、ここで初めてトリスは細やかに笑みを湛え。


「……ユニ。 私はまだ、〝お前の盾になる〟という夢を諦めたわけじゃない。 これから更に力をつけて、もう1度お前に挑む。 その時は、受けてくれるか?」


 すぐにキリッと表情を引き締め直してから、かねてより掲げ続けている夢というか目標というか、とにかく〝ユニを護る盾になる〟と決めた時の想いは今も変わっていないのだと、いつかまた再会できたらその時は──と大袈裟に宣言し。


「大袈裟だな、今生の別れってわけでもないだろうに」


「覚悟の表れだと思ってくれればいい」


「そっか。 まぁ良いよ、拒む理由もないし」


「……ありがとう」


 実際に大袈裟だと軽く一笑したものの、トリスの表情や声音が至って真剣である事を改めて理解したユニから〝〟という彼女が望んだ返事が返ってきた事で、トリスはようやくふんわりと微笑み。


「言いたい事は言えた。 引き止めて悪かったな、ユニ」


「気にしないで、私も町を出る前に君と話せて良かったって思ってるからさ。 その時が来たら、また会おう」 


「あぁ、壮健で」


「君もね──」


 そして、もう伝えたい事は全て伝え切ったとスッキリした表情や声音で以て話を纏めにかかるトリスに対し、ユニは町の外へと通じる道の方へと歩を進めながらトリスの肩に手を置いた後、互いに振り返る事なく一時の別れを告げるべく、トリスの名を呼ぶと同時に町を後にした──。











 ──……結論から言おう。


 この別れは、スッキリしたものとはいかなかった。


 何故なら、ユニが何気なく口にしたトリスの名が──。











「──〝ベアトリス〟」


「ッ!?」


 トリスのものではないが、似て非なるものだったからだ。


 瞬間、トリスは名前を間違えられた事にではなく。


 ()()()()()()()()という事実に驚愕し、その勢いのまま振り返りつつ己の右腕を触媒として【護聖術:白架(セイントクロス)】を十字架における横木の部分だけ、つまり横薙ぎにするように発動させてユニを斬り裂かんとばかりに振り抜いたが。


 気づけばもう、ユニの姿はなく。


 そこには【通商術:転送(ポータル)】の残滓だけがあった。


「……何故……!! 何故だ、ユニ……ッ!!」


 独り残されたトリスは、つい先ほどまでのふんわりとした笑顔など見る影もない困惑と焦燥、混乱と驚愕といった感情に支配された表情を浮かべながら。


「何故お前が、()()()を知っている……!?」


 まるで、〝その名を知る者は居ない、居てはいけない筈なのに〟と言わんばかりの憤怒さえ思わせる疑問をこぼしたが。


 その疑問を解いてくれる者など、居る筈もなかった──。

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