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竜化世界で竜を狩る 〜天使と悪魔と死霊を添えて〜  作者: 天眼鏡


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一瞬の攻防:表

 ……そこらの武闘匠バトルマスターが放つ技能スキルなしの正拳だと、せいぜい岩にヒビを入れられるかどうかといったところだろうが。


 スタッドは正真正銘、Sランクかつ()()()()武闘匠バトルマスター


 技能スキルなしのデコピンでさえ巨岩を破砕し、正拳なんて見舞った日には陸を、海を、雲さえも割る威力を発揮する。


 Lv100に到達した迷宮を護る者(メイズガーダー)の堅牢な鱗であろうと、スタッドの馬鹿力の前では煉瓦どころか紙切れにも等しい。


 そんな暴虐の限りを尽くした一撃に今、スタッドは武闘匠バトルマスター技能スキルである【武神術:捨身(ノーガード)】を乗せ、まさに武術の神が気紛れに放つが如き〝暴力〟で以てユニの端正な顔を撃ち抜くべく振り抜き。


「きゃあッ!?」


 一般家庭におけるリビングくらいの広さはある協会長室マスタールームにて超局地的な嵐でも吹き荒れたのかというほどの衝撃に、ハルシェは咄嗟に身を屈めつつスタッドがユニへ接近する際に踏み潰していった机の残骸に藁をも掴む思いで縋り付く。


 窓は割れ、壁は砕け、扉は吹き飛び──と。


「……ッ、ユニ、さん……?」


 甚大な被害を及ぼした人力の嵐は、【旭日昇天アリアケ】とは違い数秒ほどで収まってくれた為、静けさが戻ってくると同時に協会の外で今の破壊音に驚いた町の人々のざわめきが響く中、ハルシェがユニの安否を気にして机の陰から顔を覗かせたところ。


「──……何のつもりかな」


 そこには、ほんの数cmどころか岩のように頑強な拳と形の良い高い鼻が触れているのではないかというほどの至近距離にある状態で、さも何でもないかのように無傷で直立するユニが居た。


 ……帽子だけは壊れた扉の方まで飛んでいたが。


 また、この嵐を引き起こした張本人たるスタッドは先述した通り己の拳をユニの顔の前で寸止めしており、おそらく当てるつもりはなかったのだろう事だけは窺える。


 そして、ユニの表情から一切の動揺や恐怖が見られない事に満足したような、感心したような、もしく呆れたような溜息をこぼし。


「……ユニ、お前は頭も察しも良い。 最初ハナから気づいてたんだろ? あの3人の〝役割〟を」


「さぁ、どうだろうね」


 ハヤテ、クロマ、トリス──あの幼馴染3人が果たしていたユニへの役割とやらを、どうせ察していたのだろうというスタッドからの確信めいた問いかけを、わざとらしく首をかしげて答えを不明瞭にするユニだったが。


 ──何の事?


 そう聞き返さない時点で自白しているようなものである。


 それを知ってか知らずか寸止めしていた拳を引きつつ、まだ幼かった頃のユニの姿を脳裏に思い浮かべながら。


「……まぁ良い、お前が知っていようがいまいが関係ねぇ。 まだ完全に離脱が決まったわけじゃねぇが、あいつらと共に在るままじゃあ叶わなかった()()()も見えてくるだろうよ」


「……それで?」


 女王陛下と協会総帥グランドマスターの認可が下りない限り、ユニは正式に虹の橋(ビフレスト)を離脱する事はできない──ユニは女王陛下から気に入られている為、ほぼ確実に認可は下りるが──ものの、それが叶えばあの3人と一緒に居ては叶える為の行動にさえ移れなかった夢の、その先にある景色すら見えてくる筈だと曰うスタッド。


 まぁ、概ねその通りではあるのだが『何を知ったような口を』と思わずにはいられないユニの感情の機微を悟ったのか、スタッドは話を終わらせるべく『つまりだな』と纏めにかかり。


「お前はもう〝自由〟だ。 今回の件で、あの3人にとやかく言ってくる奴らは俺が黙らせといてやる。 だから何の心配も要らねぇ、これからは──……お前の好きに生きていけ」


 まるで、あの幼馴染3人を〝手枷〟や〝足枷〟、或いは〝首輪〟か何かであるかのような物言いをするとともに、だからといって蔑ろにするわけではなく、むしろ手厚くフォローしてやるから心配せず自由に生きろ──と。


 普段は厳しい男親が娘に対して不意に見せた優しい表情、的な似合わない笑みを浮かべて激励エールを送った。


 殴りかかってみせたのは、『これくらいでビビるようなら、そもそも離脱は許可できねぇ』と考えての事だったのだろう。


「……別に心配なんてしてないけどね。 まぁ、任せるよ」


 そんなスタッドからの激励に、ユニは飛ばされた帽子に付いた埃を払いつつ軽く悪態をつき、不安がってなんかないと口にした後──あれだけ自分が抜けた後の事を考えていたのだから、それは通らない気もするが──今度こそ【通商術:転送(ポータル)】に足を踏み入れながら転移先の座標を指定し。


「それじゃあ、またいつか──……あぁ、それと」


「え?」


 それすらも終え、もう当分この町へは来ないだろうという意味も込めた別れの言葉を告げるだけかと思いきや、ユニはふとスタッドの方へ視線を向けて──。











()()()()、スタッドさん」


「……おう」


「……?」


 寸止めしていた拳を引いて以降、何故か微動だにしていない彼に対して、どういう感情からか労わるような言葉を残して姿を消したユニと、その事に何の違和感も持たずに返事をしたスタッドに、ハルシェはただただ頭に疑問符を浮かべるしかなかった。

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