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乱入、協会長

 ──協会長ギルドマスター


 それは文字通り、世界各国に点在する竜狩人協会(D・ハンターズギルド)を取り纏める長としての立場にある権力者の事を指す。


 彼らは、というより狩人協会ハンターズギルドで働く者たちは皆、『協会員試験に合格してから資格を取得した狩人ハンター』か『かつては現役だったが何らかの理由で一線を退いた元狩人(ハンター)』かのどちらかに限られる。


 ある程度、各々の人格も評価するとはいえ荒くれ者も多いというのは全く否定できず、やはり知識ばかりの頭でっかちでは御する事さえ難解だろうから──との事らしい。


 だが、その男だけは大きく事情が異なっていた。


 今一度、確認せていただこう。


 協会ギルドに勤める者たちは皆、『後から狩人ハンターの資格を取得した者』か、『かつては狩人として国内で活動していた者』のいずれかしか存在しない筈なのだ。


 ……その男以外は。


「「「……っ」」」


 この場に居合わせた誰もがその事情を理解し、ごくりと音が鳴るほどに固唾を呑んで彼に注視する中。


「おいこらハヤテ。 今お前が耳障りな甲高ぇ声で言おうとした事、俺の目ぇ見てもっかい言ってみろ」


「な、何でそんな事……っ」


「当然だろうがよ。 俺ぁ協会長ギルドマスターだぞ?」


「う……だ、だから、ユニを……」


 どう考えても3人における火付け役だろうハヤテに焦点を当てた彼は、もちろん先ほどハヤテがユニに突き付けようとした再度の宣告も聞いていたが、そのうえで改めてハヤテの口から『協会長ギルドマスターを前にしても同じ事が言えるのか』と半ば脅すように話を振り。


 もはや比べるまでもなく己より強い目の前の筋骨隆々な男の底冷えするような声に身を震わせつつも、どうにかこうにかユニの名を挙げたまでは良かったが、肝心要のユニにどうして欲しいのかを口にするより早く。


「いいか? そもそもお前ら虹の橋(ビフレスト)は国が、ドラグハートが認可した唯一のSランクパーティーだ。 だから国の、っつーか当代の〝女王陛下〟の許可もなしの離脱なんざ認められるわけねぇんだよ」


「……っ」


 大前提として、ここでハヤテたち3人がごちゃごちゃ言っ たところで『ユニの離脱』なんてものは絶対に叶わぬ夢だと吐き捨てる。


 実際、彼が言った事は殆ど間違っていない。


 そもそもパーティーの成立には、『2人以上の狩人ハンターが揃う事』と『協会ギルドへの申請、及び認可』が必要であり、パーティーのランクは基本的に属する狩人ハンターたちのランクの平均によって決定される。


 だが、Sランクパーティーの場合は全てが異なる。


 メンバーが何人だろうと、そして平均ランクがいくらであろうと、たった1人Sランク狩人ハンターが属するだけで、そのパーティーはSランクとして認定される事になる。


 ただし、Sランク狩人ハンターの認定と同じく国内の全狩人協会(ハンターズギルド)協会長ギルドマスター、及び狩人協会ハンターズギルドを統括する〝協会総帥グランドマスター〟、そして当代の国王陛下の認可を得なければならない為、決して容易ではない。


 だからこそ、ユニの離脱など夢のまた夢なのだ。


 逆に言うと、ユニを離脱させる為には『国内の全狩人協会(ハンターズギルド)協会長ギルドマスター』、『狩人協会ハンターズギルドを統括する協会総帥グランドマスター』、『当代の国王陛下』に乞い願わねばならないからである。


 言われずとも理解していたからだろう、ハヤテがまたも悔しげに言葉に詰まる一方、彼は呆れた様子で視線を移し。


「大体、虹の橋(お前ら)のリーダーはユニじゃねぇか。 こいつの意向も無視して離脱しろだぁ? ちったぁ考えてから物言えっての」


 この4人を取り纏めるリーダーであり、虹の橋(ビフレスト)というパーティーの名付け親でもあるユニを、あろう事か意見1つも聞かずに離脱させるというのは考えなしが過ぎるだろうがと。


「……っ! あたしだって、ちゃんと考えてるもん! あんたみたいな脳筋の単細胞に何がわか──」


 あからさまに『馬鹿が』と罵られたハヤテは、ばんっと強めに卓を叩きながら、もう片方の手で目の前の協会長を指差した途端、思わず罵詈雑言が口を突いて出てしまったと瞬間的に後悔したのも束の間──。


「──死にてぇか」


「っ、ぁ……!?」


「ひ、ぅ……っ」


 たった5文字に込められた、まさに怒髪天を衝くが如き凄みを持つ声が、ハヤテのみならず居合わせた全ての者の鼓膜を揺らすやいなや、ハヤテやクロマのように根源的な恐怖から小さな悲鳴を漏らして身を凍らせる者も居れば。


「「「……っ!!」」」


 Aランクより更に下、BやCといった中堅どころの狩人ハンターたちや、中堅にさえ至っていないDランク以下、要は殆ど新米の狩人ハンターたちの中には、それが己に向けられていないというのに腰を抜かし、泡を吹いて気絶する者まで現れる始末。


 とても人間1人の仕業とは思えぬ惨状だが、この男ならやるだろうと誰もが知っていた事だ。


 ……特に、()()()()は。


「……【武神術:覇気(ソウルシバー)】。 〝武闘匠バトルマスター〟の支援系技能サポートスキル如きで失神者続出とは、軟弱極まりないな」


「流石はこの町の協会長ギルドマスターにして()()()()()()()()()()。 威圧1つでこの惨状とは恐れ入る」


 かたや腕を組んだまま、かたや心にもない乾いた拍手をしながら、トリスとユニはその惨状を引き起こした張本人である男の職業ジョブとその技能スキルと、そして何より己らと同じSランクの竜狩人ドラゴンハンターでもあるという衝撃的でありながら、この町どころか世界においても周知である事実を淡々と口にする。


 武闘匠バトルマスターは、聖騎士パラディンと同じく合成職アドバンスの1つ。


 物理防御力を示す〝DEF〟の数値に秀でた聖騎士パラディンとは対照的に、物理攻撃力を示す〝ATK〟の数値に秀でているのがこの職業ジョブの特徴であり。


 協会ギルド内の殆ど全ての人間を震え上がらせたのも、ユニやトリスが言っていた【武神術:覇気(ソウルシバー)】なる〝随時発動型技能アクティブスキル〟で可能とする全方位への威圧の影響である。


 それは、この世界の生物や武具における上限値であるLv100に到達した竜化生物さえも、ほんの一瞬びくっと身を凍らせるか否応なく警戒態勢へ移らせる事ができるほどの威圧感を纏える──……筈なのだが。


「……平然としてるお前らが異常なんだからな」


 同じランクとはいえ全くと言っていいほど己の威圧が通用していない2人の年若い狩人ハンターが持つ、この時分の己にはなかった圧倒的な才覚を見て呆れたように、そして諦めたように溜息をこぼすこの男こそ──。


      ──【超筋肉体言語マッスルランゲージ】──


     ──〝スタッド=パンツァー〟──


 自他ともに認める、〝接近戦最強の男〟である。

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