感嘆符こそ付かずとも
Aランクパーティーが未帰還となっている上に、それを救けようとした者たちが壊滅した危険極まる迷宮の攻略に、ユニ以外のSランクの助力を受けられるのは正しく渡りに舟。
何故、協会長の許可もなく迷宮へ潜り込んでいるのかの説明──釈明? については確かに気になるところではあるが。
断る理由など、万に一つもなかった筈。
「きゃ、却下って……そんな無体な事を仰らずに……」
だというのに、『却下』の一言でその提案を切って捨てようとするユニへ、おそるおそる反論しようとする聖騎士に。
「この男を連れて行くっていうなら私は今すぐ帰るよ」
「えぇ!? いや、それは……! ですが……!」
あろう事か『コイツか私か今すぐ決めろ』と迫るユニ。
……強いのは、まず間違いなく【最強の最弱職】。
……正式に許可を得ているのも【最強の最弱職】。
そう考えればユニを選び、ユニの意思を尊重するのは当然と言えるが、それでも確実性を取るなら食い下がるべきだと判断した聖騎士が一歩前に出てまで意見しようとした時。
「悪いけど私は君が──……いや、君たちが嫌いなんだ」
「君……たち? あの、何の話をして……?」
どうにも妙な言い回しで彼を疎んでいると主張するユニに対し、何を思って言い直したのかが解らず困惑する聖騎士。
彼はこの国で生まれ育った竜狩人ではあるが、まだCランクという中堅の身である為、上位層との関わりが薄く。
レイズの二つ名に秘められた真意を、知らなかったのだ。
「……【高潔なる二面性】の何をアンタが嫌ってンのかは知らねぇが、ここでの至上目的は〝【白の羽衣】の捜索及び救助〟だ。 Sランクが2人居りゃあ成功率は爆上がりだぜ?」
「そもそもだ、ここで帰っちまったら〝クエスト達成率100%〟っつーアンタの名誉に傷がつくんじゃねぇのかよ」
「……」
そんな彼とは対照的に、首狩人であってもAランクだからか真意こそ知っていても、どうしてユニがレイズたちを嫌っているのかまでは知らない【紅の方舟】が聖騎士に加勢するかの如く後押しし始めた事で、ユニは渋面で押し黙る。
……極論、【白の羽衣】の救助など彼女1人でいい。
サレスに殺されたホドルムを蘇生してもらう為の交換条件として連れて来た【紅の方舟】はまだしも、【銀の霊廟】は勝手に希望しておいてユニの意に背こうとしてきている。
戦闘以外の点で余計な時間を食うという、『足手纏いにさえなれない』を地で行く彼らにユニが辟易する中にあって。
「いやぁ、モテる男は辛いな。 ユニ嬢、貴女は僕の目的を知っているからこそ──僕に嫉妬しているんでしょう? ふふ」
「な、何言ってんだ急に──」
話を聞いていなかったのか、それとも都合の良い事しか聞かない性質なのか、ユニが自分を拒絶しているのは最奥で救けを待っているかもしれない聖女に嫉妬しているからだと得意げに曰うレイズに【紅の方舟】の忍者も困惑し、『目的って何だよ』と問い返そうとした──……その、瞬間だった。
「──殺されたいならそう言え」
「「「ッ!?」」」
「「「「「……ッ」」」」」
ユニの口から飛び出たとは思えない強めの語気と、いつでも彼を瞬殺できる態勢へ移行したユニから感じる覇気の凄まじさに、【紅の方舟】は後退し【銀の霊廟】は腰を抜かす。
意識を保てているだけでも上等だろう。
その一言には感嘆符こそ付いているようには思えなかったが、それこそ竜化生物の咆哮並みの圧力があったのだから。
尤も、当のレイズは涼しい顔できょとんとしており。
自分に言っているのかどうかも解っていないように見受けられたが、どうにかこの場を収めなくては本当にユニがレイズを殺してしまう、と判断した聖騎士が何とか立ち上がり。
「あ……ッ、あの! 貴方の目的、とは……!?」
「うん? あぁ、それは──」
そもそも彼が言う〝目的〟とは何なのかと問いかけ。
それを受けたレイズは、『何故こんなに息も絶え絶えなんだろうか』とでも言いたげにしながらも爽やかに微笑んでから、まるで決定事項であるかのように──……こう答えた。
「──かの麗しき神官、マリア嬢を娶る事だよ」




