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〝罠型擬態生物〟

 本来の目的だった〝【白の羽衣(スワンクローク)】の捜索及び救助〟を果たせないばかりか、サレスを残して全滅したという話を終え。


「──……そんな、感じでして……」


「宝箱から無数の触手が……?」


「はッ、眉唾にしか思えねぇな」


 今さらながら湧いてきた、もしくは今この瞬間まで抱き続けていたのかもしれない罪悪感から徐々に声が小さくなっていった事も相まって、いまいちサレスの話に信憑性を感じられない者たちがぐちぐちと苦言を呈していた、その時──。


『──……〝罠型擬態生物ミミック〟』


「え?」


 不意に背後から聞こえた熾天使セラフィムの呟きにユニが反応し。


「ユニさん? どうかされましたか?」


「ん? いや、何でもないよ」


「……? そう、ですか」


 技能スキルを行使する必要すらなく声を出さずとも会話できる事を忘れ、いきなり疑問の声を上げたユニに今度は聖騎士パラディンが反応、『何事か』と問うも返ってきたのは味気ない一言だけ。


 ……【最強の最弱職(ワーストゼロ)】でなければ気づかぬような異変でもあったのでは、と聖騎士パラディンが訝しみつつも再び進み始める中。


(今、何て言った? フュリエル)


罠型擬態生物ミミックです、ユニ様』


(みみっく……? 何それ)


 聞き間違えたのか、それとも単に自分が知らない単語だっただけなのか、それを知る為にユニが聞き返したところ、フュリエルが口にしたのは全く同じ聞き馴染みのない4文字。


 ……どうやら聞き間違いではなかったようだ。


 そうと解ったからには、と言わんばかりに〝無知〟を〝既知〟とするべく更なる問いを投げかけてくるユニに、フュリエルは『では手短に』と一礼しつつ主の疑問に答え始める。


 ──〝罠型擬態生物ミミック〟。


 箱や壺、家具や建造物、果ては生物の体内まで、あらゆる閉所に潜り込み、寄生し、その状態で獲物が近づいてくるまで待ち構え、眼前まで迫った獲物を粘ついた触手と鋭い牙で引き摺り込んで喰らう、獰猛かつ不定形な捕食者であり。


 捕食可能範囲から脱してしまえば執拗に追って来るといった事はしないし、そもそも罠型擬態生物ミミックだと解ってしまえば適正距離から攻撃するだけで未熟者でも倒せるのだという。


 ……ちなみに。


 如何にEXランクとはいえSランクの魔術師メイジ最後の希望(ラストホープ)賢者ワイズマンと比較すればMP(魔力)の総量で劣れど、その〝指〟の力で誰より効率良く技能スキル魔術スペルを発動でき、それこそ世界中の迷宮を渡り歩けると言っても過言ではない彼女が無知な時点で解るだろうものの、この竜化世界にそんな生物は居らず。


 ましてや【白の羽衣(スワンクローク)】だのサレスを除いた捜索及び救助隊だのを消息不明、或いは皆殺しにした存在はフュリエル曰く天使であり、その罠型擬態生物ミミックとやらではない──筈だが。


 幸か不幸か、この世界には〝迷宮〟が存在し。


 その関係上、罠型擬態生物ミミックが潜み擬態するに相応しいだけの〝宝箱〟が世界の其処彼処に当然の如く転がっている。


 この迷宮の最奥に巣食っているという主天使ドミニオンの目的は未だ不明だが、およそ身体的特徴の似通った蠕蚯蚓竜ぜんきゅういんりゅうの死骸を利用して罠型擬態生物ミミックそのものに擬態し、宝箱に潜り込む形で〝贄〟となる下等生物にんげんを待ち構えているのかもしれない。


 そう聞いたユニは、ある1つの確信を持った。


 かの主天使ドミニオンが、この迷宮を選んだのは偶然などではなく。


(【輪廻する聖女(セイントオブオラクル)】に狙いを定めてたと見て良さそうだね)


『仰る通りかと』


 特殊な事情を持つユニを除き、天界への干渉を許された唯一の人間を狙った〝必然的遭遇シンボルエンカウント〟だったという確信を。

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