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感じ取ったもの、飛び出したもの

「──……踏破報酬のヤツ、だよな?」


「もしそうなら、やはり誰かが討伐した事になるが」


「誰かって、それこそ【白の羽衣(スワンクローク)】くらいしか……」


「ンな馬鹿な、アイツらが未帰還になって1週間だぞ?」


「あぁ、それならとっくに再現出リポップしてる筈だ」


「相討ちになったとて遺体や遺品がないというのも──」


 何気なく辺りを見回していたサレスが宝箱を発見し、それを全員が認識するやいなや彼らはその宝箱を訝しみ始める。


 別に、穀潰し(サレス)が見つけたからとかそういう話ではない。


 ここに居る全員が目先の〝餌〟に釣られるような愚者ではなく、それを〝罠〟かもと疑える知恵者だというだけの事。


 そして数分後、彼らは1つの結論に辿り着く──。


「──サレス、あの宝箱を開けてくれるかい?」


「え、ボクが……!?」


 穀潰し(おまえ)が開けろ、という非情極まる結論に。


「ちょ……ッ! ちょっと待ってください! 私はまだ納得してません! どんな仕掛けがあるか解らないんですよ!?」


「そうよ! こんな小さくて経験も浅い子にやらせるなんて鬼畜が過ぎるわ! そんなにもこの子が憎いっていうの!?」


 それに待ったをかけたのは先ほどサレスを庇った2人。


「ゴチャゴチャとうっせぇんだよ偽善者ども! 大体、間違ってるっつーならAランクパーティーの捜索だの救助だのにFランクの雑魚が混じってる事自体が大間違いだろうが!!」


「「……ッ」」


「わ、解りました、ボクが、開けますから……」


 先達の狩人ハンターとしても1人の人間としても、この庇護欲を掻き立てられる少年を危険な目に遭わせたくない一心で異を唱えたものの、【淡青の波濤(オーケアノス)】のリーダーである狂戦士バーサーカーが吐き捨てた正論に2人は黙るしかなく、どう転がっても断る選択肢などないと解っていたサレスが頷きつつ1歩前に出た時。


「そう怯えなくていいよサレス、僕らは何も君を殺したいわけじゃないんだ。 何せ、ここで君を死なせたら確実に僕らに対する協会長ギルドマスターからの評価は急落するだろうから──ね?」


「っ、はい……」


 恐怖に震える少年の細い肩に手を置いた【黒の鉄冠(ロンバルディア)】のリーダーである賢者ワイズマンはサレスを気遣うようでいて、その実サレスを〝使い勝手の悪い捨て駒〟と捉えているとしか思えぬ発言とともに手の力を強め、それにより顔を歪めつつも役割を果たさざるを得ない状況に追い込まれるサレスだったが。


(ボクにできるのかな、踏破報酬の宝箱の解錠なんて──)


 どうにも、サレスには自信がないらしい。


 それもその筈、迷宮の道中に置かれている事がある宝箱については罠こそ仕掛けられている可能性こそあれど解錠は比較的簡単なのだが、こと踏破報酬ともなるとそうはいかず。


 熟練の盗賊シーフ、或いは解錠用の魔術スペルが得意な狩人ハンターを連れて来なかったが為に、せっかく護る者(ガーダー)を討伐できても報酬を得られない、そんな事態に陥ってしまう新米も多いのだとか。


 ましてやサレスはFランク、()()どころか()()()


 罠うんぬんより、まず解錠が不可能なのでは──と。


 迷宮攻略の不文律くらいは知っていた彼が鍵穴に触れる。


 瞬間、そんな定説を裏切るかのように──。


「──えっ」


「「?」」


「あ、開いた……?」


「「な……ッ!?」」


 あまりにもあっさりと宝箱の鍵が()()()()開いた。


 サレスはもちろん、後方で控えている者たちも驚愕する。


(……おい、どういうこった? 〝解錠に手こずったヤツを殺す罠〟がある可能性を危惧したってのに何も起こんねぇぞ)


(勘が外れたかな……まぁ、それならそれで問題は──)


 何しろ彼らが出した結論は、『【白の羽衣(スワンクローク)】を即死させるほどの罠が仕掛けられている事を前提として、この中で命の価値が最も軽い者にそれを起動させる』というものであり。


 罠がないどころか解錠すら一瞬という慮外の事象が2度も続いた事で困惑したのも束の間、取り繕うように『中身を確認してから捜索に戻ろう』と提案しようとした──その時。


「──……っ!?」


「は? おい──」


 緩やかに口を開けていく宝箱の中から〝何か〟を感じ取ったサレスが無音で右へ跳び、それを垣間見た狂戦士バーサーカーが無断で役割を放棄しようとしたと勘違いして『何やってんだテメェは!!』と怒号を放とうとした──……放とうとしたのだ。


 次の瞬間、全員の視界に映ったのは──。


「──な、あ"……ッ!?」


「「「「「!?」」」」」


 つい先ほどサレスを雑魚呼ばわりした【淡青の波濤(オーケアノス)】のリーダーが、その屈強な胴体を触手に貫かれた姿であった。

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