翌日、協会前にて
……結論から言うと、ユニの要求は一部だけ通った。
残念ながら〝何の条件もなしにサレスを首狩人協会に登録する〟という要求は通らなかったようだが、〝明日のクエストの成果で合否を決める〟方は渋々とはいえ通ったらしい。
もちろん、いくつかの条件はあって──。
・常にサレスが先導する事。
・必ず1度の攻略で完遂させる事。
・サレス自身を含め、救助対象以外の犠牲を出さぬ事。
・仮に黒幕が居たとしたら、必ずサレスに始末させる事。
たとえクエストに成功し、【白の羽衣】の行方や今回の事態を引き起こした原因を排除できたとしても、これらの条件を満たしていない場合は決して認めないとラオークは断言。
中々に厳しい条件が揃っているものの、サレス自身はともかくユニはこれといって不安を抱いておらず、『ホドルム仲間たちさえ気にかけておけば大丈夫だろう』と踏んでいた。
翌日、集合場所に〝彼ら〟が現れるまでは。
「……もう1回、言ってもらえるかな」
ユニでさえ耳を疑うような戯言を口にするまでは。
「ですから、お願いです! 僕たちも同行させてください!」
「……聞き間違いじゃなかったか」
朝も早くからそう叫んでいるのは、ユニがアイズロンに転移してきてすぐに出会った、とあるパーティーの男聖騎士。
そんな彼がユニへ頼み込んでいるのは、【白の羽衣】の捜索及び救助が目的のクエストへのパーティー単位での同伴。
Cランクパーティー、【銀の霊廟】。
5人全員がCランクの竜狩人で構成されたこのパーティーは、【紅の方舟】にこそ劣れど優秀なのは間違いなく。
クエスト内容が〝最後の希望を擁するAランクパーティーが未帰還となった迷宮の攻略、並びに【白の羽衣】の捜索及び救助〟という最上位の難度を誇るものでなければ、それを受けた狩人がユニでなければ同伴も選択肢ではあったろう。
……つまり、そういう事だ。
「あの方々は……! 【白の羽衣】の方々は僕たち5人が狩人になったばかりの時、嚮導役を担ってくださったんです!」
「恩も返せずじまいなンざあんまりじゃねぇか……!」
「足手纏いなのは解ってます! ですが、どうか……!」
どんな事情があろうと、どれだけ頭を下げられようと。
「悪いけど、君たち程度じゃ足手纏いにもなれないよ」
「「「「「……ッ!!」」」」」
「そういうわけだから、じゃあね。 行くよ皆」
「ま、待っ──」
足を引っ張る事さえできないような〝雑魚〟を5匹も連れていくほどユニは酔狂ではない為、短く会話を終えて踵を返した最強の狩人に縋るように手を伸ばそうとした、その時。
「──いいじゃないか、ユニ。 連れてっておやりよ」
「ッ! 貴女は……!」
突如、全員の背後からかけられた女声に振り向くと。
「……どうして貴女がここに? ドライアさん」
「なぁに、ほんの気紛れさね」
そこに居たのは、御年120歳とは思えぬ凛とした姿勢で杖をついて歩み寄ってくる、竜狩人協会の長の姿だった。