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手放さなかった理由

「──……なるほど、それなら……」


 如何にも老人らしい長々とした過去の出来事を聞き終えたユニが、『ふむ』と唸って新たな考えに移行し始める一方。


「そ、それじゃあ向いてもいないのにサレス君が竜狩人協会(D・ハンターズギルド)に籍を置き続けてたのは、あちらの協会長ギルドマスターの独断……?」


「初孫に良く似た此奴を手元に置きたかったのじゃろうな」


「そんな、身勝手な理由で……」


「……っ」


 友好関係にはないとはいえ、これでも一応ドライアを尊敬していたらしいミノからすれば悪い意味での青天の霹靂だったようで、おそらくサレスの才覚を知っていながら不向きな環境で苛ませ続けたドライアに対して露骨な軽蔑を示し。


 色々と居た堪れなくなってきたサレスが息を呑む中。


 思考を別方向に飛ばしていたユニが、ある疑問を抱く。


「けどさ、それなら何でAランクパーティーが未帰還になるような迷宮への捜索に参加させたんだろうね? あの人は」


「確かに……危険な目に遭うって解ってた筈ですよね?」


 初孫に似ているから手元に置いておきたい。


 しかし明らかに危険なクエストに身を投じさせる。


 ……矛盾していないか? という抱いて当然の疑問を。


「言うたじゃろう? ファラスは生まれながらに天性の才を持っておったと。 地道にでも経験を積ませていけば、いずれワシや彼奴さえ超えた筈じゃと。 つまりは、()()()()()じゃ」


「「……?」」


 翻って、そんなものはラオークからしてみれば()()どころか()()だったのか、サレスとミノが揃って疑問符を浮かべるのをよそに、さも『何故この程度の事が解らんのか』とばかりに鼻を鳴らすも、言われるまでもなくユニは解っており。


「顔も身体も瓜二つという事は、きっと秘めたる才覚も成長曲線も瓜二つに違いない。 本気でそう信じてたんだろうね」


「蓋を開けてみれば、とんだ〝厄災〟だったわけじゃが」


「う……」


 なまじファラスが優秀だったせいで、ファラスの生まれ変わりだと言われても違和感ないほど良く似たサレスもまた同等の才能を有している筈だ、そうに違いない、そうでないとおかしい、そんな歪んだ執着の指針に従った結果、厄災を呼び込む事になったと聞いて更にズーンと凹んでいくサレス。


 かつて同じ孫を愛でていた筈の祖父母でも、ここまで扱いが違うのかと複雑な気分にもなっていた少年に構う事なく。


「これで解ったじゃろう? 首狩人協会こちらとしては、そのような厄災など手元に置きたくはない。 かといって竜狩人協会あちらに戻せば──もはや戻りようもないが、妄執に囚われた彼奴によって使い潰される。 八方塞がりとは良く言うたものよな」


「そ、そんなっ──」


 何はともあれ、『狩人ハンター業から足を洗え』といういう結論を変えるつもりはないらしいラオークからの頑なな拒絶の意思を正面から受けたサレスが思わず立ち上がりかけたその時。


「──ところで話は変わるんだけどさ」


「……何じゃ」


「私とサレス、明日【白の羽衣(スワンクローク)】を救けに行くんだよ」


「……貴様1人なら解るが、厄災それを伴う理由は?」


 突然、ユニが明日の予定を口にし始めた。


 もちろん【白の羽衣(スワンクローク)】が未帰還になっている事自体は把握していたが、サレスを再び迷宮へ連れていく理由だけが全く理解できないラオークからの怪訝そうな問いかけに対し。


「1つは単に、この子が唯一の生き残りだからって事。 逃げて来られたって事は、経路や罠の有無なんかも解るよね?」


「え? あ、た、多分……?」


 1つは、と前打ってユニが語ったのは誰もが真っ先に思いつきそうな解りやすい理由であり、『多分』という発言や内向的な態度が不安こそ煽れど、まぁ理解できなくもない。


「それだけでは弱い、まだあるのじゃろう?」


「もちろん。 もう1つは──」


 しかし『1つは』と言った以上、他にも己を納得させるに足るだけの理由づけができるのだろうと読んだラオークから先を促されたユニは然りと頷きつつ少年の肩に手を置いて。


「──今回の成果次第で、合否を決めてみない? って事」


「「え!?」」


 ラオークやミノどころか、サレスにすら伝えていなかったらしい、あまりに荒唐無稽で一方的な理由を口にした。











(……だから、〝厄災〟だと言うたのに……)

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