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Fランクの盗賊

 ユニとドライアが会話を繰り広げていた、その一方。


「はぁ……」


 時を同じくして、リュチャンタの竜狩人協会(D・ハンターズギルド)内に存在する()()()()()()()()()()()()()()()()を収容する個人用の病室のベッドの上で1人の色白な少年が窓の外を見つめていた。


 彼の名は──〝サレス〟。


 リュチャンタの竜狩人協会(D・ハンターズギルド)に属する、Fランクの盗賊シーフ


 最下層たるFランクの盗賊シーフという事は、まだ新米もいいところなのではないかと思うかもしれないが、そうでもなく。


 ユニと同じく孤児だった彼がリュチャンタの竜狩人協会(D・ハンターズギルド)に所属して1年弱、そろそろ新米とは名乗れなくなるほどの年月を過ごしていながらFランクから上がれないでいる、いわゆる〝無能〟や〝落ちこぼれ〟などと呼ばれる類の16歳。


 ……一見、少女と見紛うほど可愛らしい16歳。


 そして、そんな少年の身体の上で寝転んでいたのは。


『CHEE……TAAH……』


 ──〝迅豹竜じんひょうりゅう〟。


 この世界で最も高いSPDを誇る竜化生物だが、今ここに居る個体がそんな優れた素養を持っているとは思えない。


 何しろ、小柄なサレスの上で寝転がれるほど小さいのだ。


 産まれたばかりの幼体にも見えるものの、その正体は〝縮小化〟の能力を持つ迷宮宝具メイズトレジャー〝リリパット〟で小さくなっているLv68のれっきとした成体であり、ギチギチに筋肉が詰まったその脚を用いた走行の速さに技能スキル魔術スペルもない素の状態で追いつき、そして追い越す事ができるのは──。


 ……最後の希望(ラストホープ)の一角、【極彩色の神風(ヴィヴィットウィンド)】くらいだろう。


「どうして君のご主人は、ボクを逃がしたんだろうね……」


『EAA……?』


「……解んない、か……はぁ──」


 そんな迅豹竜じんひょうりゅうを従えていたBランクの竜操士テイマーは、どうやら自身の生存よりもサレスを迷宮から脱出させる事を優先したらしく、ここへ辿り着いてからずっとその理由が解らずにいるサレスが、またも少年らしからぬ溜息を吐こうとした。


 ──その瞬間。


『──ッ!? CHE、AAA……!!』


「? どう、したの……?」


 寝ぼけ眼だった迅豹竜じんひょうりゅうが飛び起きるやいなや、小さな牙を剥き出しにして何かを警戒、或いは何かへ威嚇し始めた。


 その先にあるのは、病室の扉だけ。


 そして『コツコツ』とサレスの耳にも扉の向こうから聞こえる足音が届き始めたかと思えば、『ガチャ』と扉が開き。


「おや、起こしちゃったかな? ごめんね」


「……いえ、ずっと起きてました」


「そう? ならいいけど──」


 扉の向こうから現れた美男とも美女とも取れる中性的な何某かの美貌に見惚れつつも、サレスが『お気遣いなく』と首を横に振っている間も迅豹竜じんひょうりゅうの威嚇は留まる事も知らず。


 ともすれば病室で息吹ブレスを吐きかねないほどの臨戦態勢に移行しかけていた迅豹竜じんひょうりゅうを何とか宥めようとした、その時。


「──〝静かに〟」


『〜〜……ッ』


(凄い、たった一言で……)


 文字通り、たった一言かつ魔力など乗ってもいない威圧で危険度Aランクを誇る筈の迅豹竜じんひょうりゅうがベッドに伏せ、それまで充填していた魔力を口内や喉に負担がかかる事も厭わずに呑み込んでまで服従した事実にサレスが素直に驚嘆する中。


「これで話ができるね、まずは自己紹介といこうか」


「は、い……ボクは、サレスです……」


「私はユニ、【最強の最弱職(ワーストゼロ)】と呼ばれるSランク狩人ハンターだ」


「S、ランク……凄い、んですか? それ」


「え? あぁまぁ、それなりにね」


「そう、なんですね……すみません、勉強不足で……」


 促される形で名乗ったまではいいものの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()事に加え、他に目を向けていられる余裕などなかった事も相まってか、【|最強の最弱職】の存在はおろか、ランク制度にさえ明るくないままでいたらしく。


 彼自身に上昇志向がなかったからなのか、それとも彼を受け持った受付や試験官、或いは嚮導役ガイドに問題があったのか。


 ……原因は定かでないが、それはともかく。


「……何から何まで、好都合だね」


「? あの……?」


 彼は、()()()()()()()()()()()()


 竜や首を問わず狩人ハンターが山ほど居るこの世界では非常に珍しい、こんな存在を求めていたとばかりの呟きの真意は──。


「あぁごめん、自己紹介も済んだ事だし次に移ろうか」


「あ、はい……ボクに何か、ご用なんですか?」


「うん、実は──」


 今にして思えば、次の一言に全て込められていたようだ。


「──()()()()()()んだ、竜狩人ドラゴンハンター


「……え?」

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