事後報告する強者たち
依頼を受け、現地に到着し、達成したらはい終わり──。
……と、それで済む筈もなく。
あの激戦の翌日、竜狩人協会の応接室にて。
「──以上が、サタン=クラウド討伐までの経緯だ」
「虚偽も誇張もないから安心していいよ」
「「「「……」」」」
ユニは今、此度の討伐作戦に多くの人員を割いていた4つの組織の長たちへ向け、リューゲルとともに経緯全てを語り終えたが、それを聞き終えた彼らの表情は何とも渋く。
頭を抱えていたり溜息を吐いていたりと反応自体は様々であるものの、そこに込められた感情は概ね同じものだった。
──……〝不満〟。
逆角個体かつ迷宮を護る者個体の雲羊竜討伐作戦。
それは、ともすれば白色変異種及び黒色変異種を除いた5種の突然変異種を相手取るのと同等の危険を孕む、甚大な犠牲を出す事を半ば前提とした作戦だった事は自明であったが。
その場に【竜化した落胤】と【最強の最弱職】が居合わせていたとなれば話は別であり、最低限どころか犠牲をゼロに抑える事もできたのではないか、という八つ当たりにも近い不満を抱いてしまう事も致し方ないのかもしれない。
……もちろん、彼らも頭では解っている。
現場に居なかった自分たちが何を言ったところで説得力はないし、そもそもSランク狩人2人を相手に苦言を吐くなどという自殺にも等しい行為を犯すほど愚かではなかった。
ゆえの、沈黙。
心中で如何なる負の感情が渦巻いていようと、ここは黙って全てを受け入れるしかない──言葉どころか相互注視さえなく一致した4人が出した答えは、まさに最適解だった。
「──何か文句がありそうだね」
「「「「ッ!?」」」」
……ここに【最強の最弱職】が居なければ、だが。
神の力があろうとなかろうと未来視に近い動体視力を持つユニの眼だが、それ以外にも幾つかの秀でた能力がある。
その1つが、〝虚実を見抜く力〟。
瞳孔の揺れ、手足の震え、呼吸の乱れ、ありとあらゆる情報を見逃さず、それを基に虚か実かを見抜くのだという。
あの雷雲が直接の原因となって命を落とした人間はおよそ1000名、不満を抱いていない方が不自然だと〝弱者たちの思考〟を理解していたユニからの確信めいた問いかけに。
「……あぁ、あるとも。 あるに決まっているだろう……!」
「ッ、おい! 抑えろ!」
ついに堪忍袋の緒が切れたのは、警察官の長。
ユニとリューゲルの強さを知り、それが敵に回ってしまった場合の恐ろしさも知る竜狩人協会の長が制止するも。
1度溢れ出してしまった感情は、もう止められない。
2人の絶対強者を敵に回す覚悟もできていないのに──。