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死屍累々を尻目に

 確かに、やたら静かだとは思っていた。


 無論、今も雲羊竜うんようりゅうが落としている雷による雷鳴や、それに伴う破壊音は轟いているものの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が聞こえなくなったとは思っていたのだ。


 鬨の声、指示出し、断末魔、竜化生物の咆哮から雷撃を防いだり弾いたりした際の衝突音に至るまで、その全てが。


 だからこそ『君と私以外は全滅した』などという、あまりに唐突な現状報告を受けても納得できたというわけだ。


 ……とはいえ、それ自体は大した問題ではない。


 彼らも彼らなりの全力で以て応戦していたし、ほんの少しの痛撃を与えていたのも事実ではあるのだが、あいにく彼らが与えた痛撃の全ては雲羊竜うんようりゅうに痛痒を感じさせる前に竜化生物特有の圧倒的な自然治癒力で()()()()()()()()()()()


 率直に言えば、あれだけの数が揃っていてもなお〝居ても居なくても同じ〟、つまり雲羊竜うんようりゅうに敵として見做されていなかっただけでなく、リューゲルからも援護要因としてさえ見做されていなかったという事なのだが、それはさておき。


 直接的に戦闘へ加わっていたわけではない代表者たちについてもまた同様であり、その他の有象無象に比べれば多少なり抵抗した痕跡は見られるが、死んでしまえば関係ない。


 ()()()()()()()()()


 リューゲルは彼らをそう称したものの。


 今や彼らは、()()()()()()


 真に、居ても居なくても同じ存在と成り果てたのだ。


 ……決して。


 そう、決して哀れに思ったわけではないが。


「……蘇生、できるか?」


 あくまで試しにと問うたところ、ユニは短く唸った後。


「無理だと思うよ、何せ肉体が()()()()()()()からね」


「……そう、か」


 すでに過去、蘇生された事がある者たちについては元々希望などないのは解っていたものの、それ以外の者たちについても『魂を呼び戻したところで器がなければ意味はない』と告げられた事で、リューゲルも諦めから来る溜息を吐いた。


 ……尤も、こんな死屍累々の惨状であっても最後の希望(ラストホープ)の1人である神官プリーストなら半数以上を蘇生させられただろうし。


 ユニも〝神の力〟を行使すれば、〝2度目の蘇生は叶わない〟という絶対不変の制約を無視できたのだろうが──。


 前者は迷宮攻略でもしているのか連絡がつかないし、後者に至ってはユニに行使する気がないという詰みっぷり。


 結局、息吹ブレス1つで数百名の犠牲が出てしまうという最悪の事態を好転させる事はできず、ユニとリューゲルが参戦する前に起きた戦い以上の犠牲を出してしまったわけだが。


「こうなったからには、私が討伐してもいいよね?」


 ユニからすれば、そんな事はもっと関係ない。


 むしろ、これで邪魔が入らなくなったのだから逆角げきかく個体の莫大なEXP(経験値)を総取りできる好機だと喜んでいる始末。


 自分よりも強いユニに任せておけば楽に討伐できるのだから、この提案を断りはしないと思っていたのも束の間。


「俺がやる」


「えっ?」


 返ってきたのは、明確な否定と単独での討伐宣言。


「ここは俺が活動する国で、アイツの真下には俺の親族が経営する牧場がある。 お前に任せていい理由は1つもねぇ」


「……んー、君までそう来るのかぁ」


 以上2つの理由から──言っていないだけで他にもありそうな含みを感じるが──全てをユニに託す事はできないという彼の主張などユニからすれば本当にどうでもいいのだが。


「まぁ、そこまで言うなら仕方ない。 私は援護に徹しよう」


「……恩に着る」


 とはいえユニは強者に対して一定の敬意を払う傾向にある為、彼の主張を無碍にする事はせず、サポートに回ると言ってくれたユニに彼は軽く頭を下げて謝意を示してみせた。


 そしてリューゲルは、ユニの存在を警戒して今の今まで手を出して来なかった雲羊竜うんようりゅうを視界に収めて一呼吸置き。


「待たせて悪ぃな、クソ羊。 第2ラウンドと洒落込もうぜ」


『〜〜ッ!! BAAAOOOOOOOOッ!!』


 ここからが本番だと、笑みも浮かべず宣告した。

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