成ったからには
ユニの脳裏を過った存在が、傭兵たちに投資か融資を施して一時的な力を与えた──という推測が真実か否かは、ハッキリ言って今ここで確認する術がない以上どうでもいい。
重要な事は、ただ1つ──。
「【電糸危機】の処理、完了だ! 警察官ども、さっさと初っ端の作戦遂行しやがれ! 報酬の上乗せ、忘れんなよ!?」
「「「Yeah!!」」」
高らかに仕事の達成を叫ぶ傭兵たちからも解る通り。
「勝手な事を……ッ、だが、これは……」
代表者が悔しがっている事からも解る通り。
「──成ったな」
「──成ったね」
「ぐッ……!!」
4つの組織が立てていた作戦の第一段階が、よりにもよって傭兵どもの手を借りる形で達成可能となってしまった事。
そして、こうなってしまったからには──。
「〜〜ッ、えぇい! 【警邏術:察犬】部隊! 再起せよ!」
「「「りょ、了解!!」」」
気に食わないが彼らの上から目線な物言いに従う形で策を成し、滞っている雲羊竜討伐作戦を進めていくしかない。
それを理解していたからこそ、代表者も部下たちも文句1つ口にする事なく、かたや命令を下し、かたや従うのだ。
そして、やはりと言うべきか指揮官として〝統率力〟だけは突出している代表者の指揮の下、再起した警察官たちが操る100匹以上の警察犬は瞬時に指令をこなしてみせ。
「包囲完了いたしました! 吠え声による牽制も同時並行しております! 膨張率の低下も確認、間もなく停止するかと!」
「そのまま牽制を続けろ! これ以上ヤツの好きには──」
その内の1人からの達成報告により、ようやく第一段階が成ったのだと息つく間もなく、引き続き気を抜かず任務を遂行しろと代表者が【警邏術:察犬】部隊へ命令を下す一方。
「──来るぜ、ユニ」
「そのようだね」
2人の絶対強者が、ほぼ同時に何かを察知する。
来ると言うからには自分たちへ向かって襲来する類のものなのだろうが、それが何なのかを全員が把握するより早く。
「「「なッ!?」」」
空を覆い尽くすが如く広がっている漆黒の雷雲の至るところから、まるで驟雨のような苛烈さの雷が降り注いできた。
その雷は並の迷宮を護る者を一撃で感電死させる威力を誇っており、人間ならばどれだけLvが高かろうと、どれだけ優秀な防具を身につけていようと即死、死体が残れば御の字という次元が違う攻撃である事からも襲来する雷に驚く中。
(ッ! マズい、想定を上回っている! 速度も、数も──)
代表者は代表者で〝雷の襲来〟こそ想定内の事態ではあったものの、その速度や数が明らかに自分たちの想定を遥かに凌駕しているという事実に唖然としており、このままではまたしても作戦に滞りが、と歯噛みしかけたその瞬間。
「「「……ッ!!」」」
降り注ぎつつあった雷の殆どが、何かに撃墜され。
助かった、と警察官たちが安堵するのも束の間。
「今のは〝息吹〟……! 動き出したか……!」
代表者はすでに雷の雨を撃墜したものの正体が、いくつも束ねて放出された竜化生物が誇る唯一にして最強の切り札である事を見抜いたうえで、〝あの組織〟が命じるまでもなく作戦の移行を察し、動き出したのだという事をもを悟る。
「次なるは第二段階、我ら竜騎兵の出番です! いざ出陣!」
「「「了解!!」」」
『『『GRYAAAAAAAAAッ!!』』』
そう、討伐作戦における二の矢──竜騎兵の出陣である。