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ドラグハート、ではなく

 ちなみに今、ユニがどこの迷宮で戦っていたかというと。


 ユニの本拠地、ドラグハート──……ではなく。


 世界最多となる3人ものSランク狩人ハンターを擁するドラグハートに次いで、【竜化した落胤(ドラゴンフォールン)】と【墓荒らしの女王(グレイブレスクイーン)】の2人からなるSランク狩人ハンターだけで組織されたパーティーが本拠地とする、ドラグリアで最も竜化生物の生息数が多い国。


 ドラグハートの隣国──〝ウィンドラッヘ〟。


 呼ばれたわけでもないのに、他国で活動していた。


 ……何故? と思う事請け合いだろうが、それも全てはユニの言う〝神の力〟の一端である〝星詠み〟が原因らしく。


 しばらくウィンドラッヘで活動すると良い事がある。


 と、そんな曖昧極まる予知が唯一の理由だったらしいが。


 この力を自覚し、そして使いこなせるようになってからというもの、ただの1度も未来視が間違っていた事はなく、ドラグハート以外だとクエスト達成時における協会の取り分が普段より多くなるというデメリットを加味してもなお、ユニは他国での活動という面倒な手段を選んでいたのだった。


 ……まぁ、そもそもユニは金など欲していないのだが。


 ──閑話休題。


『それにしても、今回は割と長期の攻略になったわね』


「難易度はともかく、深さがね……」


 アシュタルテの言う通り、いつもなら1日仕事どころか数時間で踏破してしまう事が殆どなユニからすると珍しく、実に1週間弱ほどの期間を経てようやくの攻略に至っており。


 難易度そのものは迷宮内の環境が常に平穏な、ともすれば森林浴でもできそうな針葉樹の森が全階層に渡って広がっていた為、言うほど高く設定されていたわけでもないのだが。


 唯一の難点を挙げるとすると──階層の数と規模か。


 階層1つごとに人間の住む街が最低でも3つは入りそうなほどに広大な森が続き、そんな緑だらけの迷宮を下へ下へと潜れば潜るほど彷徨う者(ウォーカー)の強さも加速度的に増していく。


 もちろんユニからすれば何の苦でもないし、どれだけ広大かつ変わり映えのしない青々とした景色が続こうと迷う事こそなかったものの、それでも最奥までの道筋を破壊して強制的に近道するといった芸当は流石にできなかったようだ。


 あまり勝手できない他国の迷宮だから、というだけだが。


「とはいえレベリングはできたし、また別の迷宮に──」


 まぁ、それはそれとして本来の目的であるところのレベリングはしっかりと達成できていた為、時間を無駄にしたというわけでもない以上、特に機嫌を損ねる事もなく、そして休む間もなく次なる迷宮へと想いを馳せんとした、その時。


「──潜っ、て……?」


 ぐぐっと伸びをしながら視線を遠くの空へ遣っていたユニが、どういう心境からかそのままの姿勢で静止し、かと思えば両腕を下ろしつつ目を凝らして何かを観察し始め。


『どうしたの? 向こうに何か──』


 その一連の動作に違和感を抱かずには居られなかったアシュタルテが、ユニと同じ方向の空へと視線を向けたところ。


『──……え? 何よ、()()は……』


「……何って言われても──」


 アシュタルテもまた、ユニ同様に目を凝らし始めた。


 それも無理はないだろう、そこに浮かんでいたのは──。


「──〝雷雲〟じゃない?」


 超巨大規模の、ドス黒い雷雲だったのだから。

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