いざ、外へ
一方その頃、宝箱を開け終えた【黄金の橋】はといえば。
宝箱の周囲に嫌というほど散乱していた異形の存在の肉片や骨片を各種技能で始末した後、〝扉〟のある上層へ戻る為に、そして道中の彷徨う者を蹴散らす為に技能と魔術と精霊の力をフル稼働させて、〝帰るまでが迷宮攻略〟を実践し。
「シェルト様! それに2人も! 扉が見えましたわよ!」
「「「!」」」
装備などに使えそうな部位の採取、肉片や骨片の始末、大穴が穿たれた上層への帰還、弱卒とは言えない彷徨う者への対処など、およそ1時間を費やした4人はついに、入口として通り抜けた〝扉〟が見えるところまで戻って来た。
「たった数時間とは思えない濃厚さだったわね……」
「その分、得た物は大きかったですし……」
「……まぁ、そうね。 充実した時間ではあったわね」
これまでに達成してきたいくつかのクエストの程度が低く思えてしまうほどだったと呟くシェルトだが、やんわりと反論してきたシェイの言う事も尤もだと否定し切れない様子。
ユニが手を下す前なら、そうはならなかっただろうが。
「そういやユニさん、結局どこにも居なかったっすね」
「えぇ、外で待っていただけてると思いたいけど……」
その張本人である、ユニの姿はここにない。
もちろん技能か何かで姿を隠しているだけなのかもしれないが、それを判断する術を4人は持ち合わせておらず、『とっくに戦いの終わりを悟って迷宮の外で自分たちを待っている』と仮定して扉を目指すしかなかったのである。
「開錠用の鍵、錬成できました……!」
「よし、それじゃあ出ましょうか」
「「「はい!」」」
そんな会話をしていた2人をよそに、あの戦いの影響で壊れてしまっていたらしい〝鍵〟の錬成を終えたシェイの声に呼応したシェルトからの号令で、ついに4人は迷宮を脱し。
迷宮突入から数時間が経過し、すっかり暗くなってしまった迷宮の外は、仄かな月明かりに照らされていて──。
「迷宮を護る者の討伐、並びに迷宮踏破おめでとう」
「「「ユニ様……!」」」
「やっぱ先に出てたんすね!」
月下美人とは彼女の為にある言葉なのではないかと思えるほど、月明かりに照らされてより美しく艶やかに見える笑みで出迎えたユニの元へ、4人は一様に駆け寄っていき。
「ユニ様……! この度の狩人講習、嚮導役を引き受けていただき誠にありがとうございました! ユニ様のお陰で──」
4人を代表して、ここまでの成長を短期間で遂げられたのはユニのお陰に他ならないと、あくまでも謙遜に謙遜を重ねたうえで1週間分の謝意を告げんとしたシェルトだったが。
「7種の突然変異種の中で最弱とはいえ、あれほどの力を持った増殖変異種を真正面から討ち破ったのは間違いなく君たちの実力だ。 もう少し、自分たちの力に自信と誇りを持つと良い。 それが私からの、この講習における最後の教えだよ」
「は……はいッ!」
「「「ありがとうございます!」」」
まるで何度も嚮導役をこなした事があるかのような慣れた口調で、ユニ自身が手を下したが為に人造合成種ではなくなってしまった事は秘匿しつつ、称賛を口にした事で少女たちは一様に感極まりながらも、最大限の礼で以て返すのだった。
『……これで、成ったというわけですか? あの4人も』
「そうだね、あの娘たちもトリスたちに負けない──」
「──立派な〝布石〟に成ってくれたよ」




