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閑話:解説と合流

 一方その頃、一仕事終えたユニとフュリエルは。


『……【黄金術:逆理(アルケミックモッド)】、でしたか。 よもや、ユニ様が〝歴史の改変〟まで行えてしまうとは思いもしませんでした』


「だろうね。 私にとっても〝賭け〟だったくらいだし」


 事もあろうに戦場の端っこで紅茶なんて嗜みながら、シェルトと人造合成種キマイラとの激しい戦いを呑気に観戦しており。


 シェルトを改変させた技能スキルの名を口にしつつ、より一層の畏敬を抱いたと告白するフュリエルに対し、『確率としては五分だったんじゃないかな』と珍しく謙遜してみせるユニ。


 錬金術師アルケミストの4th技能スキル、【黄金術:生命(アルケミックライブズ)】の覚醒型技能アウェイクスキル


 それこそが、【黄金術:逆理(アルケミックモッド)】。


 対象と定めた生物の〝過去〟を書き換えつつ、今ある〝現在〟と〝未来〟を消滅させ、書き換えた〝過去〟が正しい歴史なのだと、この技能スキルで過去を書き換えた者と書き換えられた者を除いた者たちの認識を改変させる、神技の如き技能スキル


 ……フュリエルの認識は改変されていないのではと思うかもしれないが、この技能スキルで改変されるのは書き換えの対象と同じ種類の生物のみであり、天使であるフュリエルや竜化生物である人造合成種キマイラの認識は据え置きとなっているようだ。


 ──閑話休題。


 元より魔剣士キャバリエの適性がS、剣の適性がAだったのに間違った憧れのせいで転職士リワーカーを選んでしまったシェルトは今、〝最初に戦士ウォリアーを選択した後、魔術師メイジに転職。 現在の主要職業メインジョブである魔剣士キャバリエを解禁した〟という書き換えられた過去を歩み。


「【笛操術:音纏(ソニックオーラ)】! 【剣聖術:付与(エンチャント)】! 躱せるものなら躱してみなさい! 音速の炎刃──【剣操術:斬閃(ソードビーム)】ッ!!」


『『『GUッ、RYUEEEッ!?』』』


 元々は眼中にもなかったとはいえ、実は適性Sだった笛の技能スキルをも存分に活用した〝音の速度〟と〝燃え盛る劫火〟を付与したフリューゲルによる飛ぶ斬撃は、人造合成種キマイラの屈強な胴体に大きな裂傷と火傷の瘢痕を残すほどの痛撃を与え。


 それでもまだ彼らの再生力の方が上回っているが、今のシェルトを〝雑魚〟とは流石に呼べないかと、あくまでユニの功績である事を前提としつつもフュリエルが少し見直す中。


「──おぉ!? お嬢があの怪物と互角に戦ってるっすよ!」


 シェイの魔術かハーパーの精霊か、どちらにせよ安全な方法で降下してきたと見られる3人の中で最初に着地したハクアは、シェルトが人造合成種キマイラと互角に戦えるわけがないと思っていたがゆえの驚愕を露わにしたが、その直後。


「……? そんなに、驚く事? シェルト様、強いよ?」


「へ? いやだって……あれっ?」


「シェイの言う通りですわ! 何せシェルト様は我らがリーダー、【宝剣遊詩人(ザン・ミンストレル)】の名を持つ優れた魔剣士キャバリエなのですよ!」


「そ……そうっすよね! いやぁ何言ってんすかね自分!」


「……?」


 何やら若干のぎこちなさが見え隠れしながらも、シェイからの純粋な疑問とハーパーからの二つ名まで付け加えた補足によってハクアが抱きかけていた〝何か〟は綺麗さっぱり消えてしまい、その後はシェイだけがハクアの様子に何らかの違和感を覚えていたようだが、それも結局は言及されず。


(ちょっとした違和感はあるのか……改善の余地あり、と)


 どうやら改変には成功していても、そこに何らかの違和感を残してしまい、その違和感は同じ影響を受けた者たちと接触する事で解消されるというのが【黄金術:逆理(アルケミックモッド)】の現状であり、いくら初の試行とはいえユニの技能スキルとしては中途半端もいいところ、とても完璧とは言えない出来の技能スキルである。


 しかし、それはユニにとって喜ばしい事でもあった。


 完璧ではないという事は、まだ上を目指せるという事。


 最強と呼ばれてもなお、目指せる境地があるという事。


「君たちにしては結構かかったね、お疲れ様」


「「ッ!?」」


「ゆ、ユニ様!? いつからそこに!?」


 それを理解したからか、いつもより少しだけ機嫌が良さそうな笑みと声音で話しかけたユニの唐突な登場に、ハクアとシェイは言葉もなく、ハーパーだけが当然の疑問を呈する。


 もちろん神の力による現象だったが、それはさておき。


「質問に質問で返すようで悪いけど、()()()()()()()()?」


「「「?」」」


「このままだと、あの娘は敗ける。 いくら優秀でも、まだ発展途上な上に経験も足りてないからね。 互いに鎬を削りながらも、最終的に死ぬのはシェルトの方さ。 で、どうする?」


「……どうするも何も──」


 確かにシェルトは強くなっているし──()()()()()()()()()と改変されているし──ぱっと見だと優勢にも思えるかもしれないが、それはあくまでも()()()()()()というだけ。


 このまま戦いが続けば十中八九シェルトは力を使い果たして敗北し、喰われるか潰されるか消し飛ばされるかして死ぬ事になると、まるで()()()()()()()()()()()()語るユニからの問いかけに、3人は大して迷う事もなく頷き合い。


「「「──参戦します!!」」」


「うん、行っておいで」


「「「はいッ!!」」」


 ユニに背中を押された後、戦場へと駆け出していった。


 一癖も二癖もある自分たちを纏める、自分たちにこそ()()()劣れど優秀である事に間違いはないリーダーを救う為に。











「……たった1週間で、あれだけ強くなれるなら──」











「──1年後くらいには、〝布石〟になってくれるかな?」


『……?』

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