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狩人講習:7日目・改変 (参)

 15種の武装アームズの1つ──【笛】。


 笛とは言うが、何も息を吹き込んで音を発するものだけがそれに分類されるわけではなく、いわゆる〝楽器〟に分類されるものならば何であろうとこの武装に含まれる事となる。


 その響きから攻撃的な印象は受けないだろうし、実際この武装アームズが持つ技能スキルの中に攻撃系技能アタックスキルは1つしかなく、おまけに音色の良し悪しが技能スキルの効力に直結するという特有の性質上、武器として使うには他の武装に大きく劣っており。


 現状、15種の中で最も使用率の低い武装アームズとなっていた。


 しかし、それはあくまで適性が低い者たちもカウントしているからであって、【笛】への適性が高い者たちがLvを上げた上で発動する技能スキルは、他の武装アームズにはない特異性を誇る。


 聴覚が機能している限り防ぎようのない力──〝音〟。


 ある時は味方を高揚させ、ある時は敵の鼓膜を揺らす。


 そんな厄介極まる効果の技能が不可避かつ不可視で影響を及ぼす、それが【笛】という武装アームズが持つ技能スキル全ての共通点。


 今シェルトが発動した【笛操術:響撃(スクリーム)】もその1つ。


 上述した唯一の攻撃系技能アタックスキルにして、不可避と不可視は言うまでもなく使用者の任意で指向性を持たせる事も可能な爆音波による遠距離攻撃を行う技能スキルであり。


 聴覚が機能している限りとは言ったが、この技能スキルによる爆音波は聴覚があろうとなかろうと関係なく敵の脳を揺らす。


 ましてや人造合成種キマイラは3つ首。


 息吹袋ブレスタンクは1つなのに、脳が3つという事実が響いていた。


『『『YE、ROO……ッ!?』』』


「ッ、効いてる! これなら……!!」


 跳び上がるべく力を込めていた4つの脚に対する3つの首からの命令がバラバラになり、おまけに爆音波自体の破壊力も以前までの彼女の技能スキルにはない確かな威力を備えていて。


 満足に突進する事さえできず、ふらふらと餌の方へ近づく事しかできない彼らの姿を見てシェルトは態勢を整え直し。


(新たな職業ジョブの適性を、そしてユニ様のお力を信じて……!)


 あの【最強の最弱職(ワーストゼロ)】が、こんな自分の為だけに技能スキルを使ってくれた事への悦び、そして以前までの欠陥を抱えた自分とは違う身軽で精強な肉体や魔力を得たという自負を胸に。


「【剣聖術:付与(エンチャント)】、からの──【剣聖術:属刃(エナジーブレイド)】!!」


『『『ッ!? G、LEEッ!?』』』


「よし……ッ、いける!」


 転職士リワーカーの欠陥を介さない、〝魔剣士キャバリエ〟の技能スキルによる今までの彼女には出力不可能だった強力な火属性をフリューゲルに付与し、付与した属性が敵の弱点だった場合に斬撃と属性の威力を高め、剣身自体も巨大化させる技能スキルを発動した一撃をすれ違いざまに放ち。


 以前まで脆い筈の継ぎ接ぎ部分でさえ傷つける事は叶わなかった彼女の一撃は、継ぎ接ぎどころか関節部位ですらない頑丈かつ屈強な右前脚を見事に切断してみせた。


 ……シェルトを改変させる際、ユニはこう言っていた。


 君が目指すべきは、【最強の最弱職(わたし)】じゃない。


 今の君と同じ、魔剣士キャバリエのSランク狩人ハンターだよ。


 そうすれば君も、Aランク到達は夢じゃなくなる──と。


(今はまだあの娘たちに及ばなくても……あの娘たちに並び立てなくても! 並び立ちたいと胸を張って言える資格は得られた! この新たな力で彼らを討ち倒せれば、きっと──)


 そんなユニの言葉を疑ってなどいなかったが、こうして実際に成果を出せた事でユニへの畏敬は更に強まり、それと同時に今の自分ならあの3人にも優るとも劣らないのではという自己過信にも近い希望的観測を抱きかけていた時。


『『『G、GRR……ッ、BOWO"OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO……ッ!!』』』


「〜〜ッ!!


 そんな淡い希望を吹き飛ばすように、ともすれば息吹ブレスと見紛うほどの魔力を帯びた大咆哮が3つの首全てから同じタイミングで轟き、ここに至るまで自信に満ちかけていたシェルトは奇しくも気を引き締め直す事ができた。


「ッ、そう、ね、そうよね……解ってた事じゃない……!」


 自惚れれば最後、死あるのみだと──。


「互いに手の内は晒したでしょう? ここからが本番よ!」


『『『〜〜ッ!! GROOOOWLッ!!!』』』

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