表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/345

相対する最強と厄災

 ハクアがクラディスと対峙していた理由は、ただ1つ。


 これが、〝護衛クエスト〟の一環だったから。


 もう少し正確に言えば、〝今回の主だった課題である採取クエストを完遂するその時まで、ユニをクラディスから隠し通す事〟が目的となる護衛クエストの一環だったからだ。


 そうでさえなければ、ハクアだって【狂鬼の戦乙女(ワルキューレンオーガ)】との1対1(タイマン)など受けたくはなかった筈だし、たった今この瞬間ですら這ってでも逃げたくてたまらない筈なのだから。


 ……しかし、そうも言っていられないのが現実であり、


 ユニの存在を隠し通すという事は、たとえ何が起ころうとユニを介入させてはならないという事でもある以上──。


「ゆ、ユニさん……すいません、自分が、弱いせいで……」


 己が不甲斐ないばかりに圧倒的な劣勢を強いられ、せっかく仲間たちが採取を無事に終え、これ以上の戦闘を避けられるようになったというのに、クラディスを実力でも説得力でも抑え込む事ができなかったと傷だらけの身体を押して頭を下げたのも束の間。


「及第点だよ、ハクア。 後は私に任せて休んでるといい」


「……ッ! は、はいっす……!」


 ユニから返ってきたのは初日に赤点を叩きつけてきた者と同一人物とは思えぬ柔和な声音から来る通知と、よしよしと親が子を褒める時が如く頭を撫でる優しい手つき、いつ発動したかも解らない【神秘術:回復(ヒールスペル)】による温かな治癒の光。


 ユニの指が誇る魔力伝導率を考慮してもなおMP(魔力)消費量は少なく、おそらくは最下級魔術ロウエストスペルだったのだろうが、ハクアの全身に刻まれていた夥しい数の負傷はもちろんの事、失った血液や精神的な摩耗までもが癒されていると実感し。


 情けないやら安心するやらで堪えきれなくなってポロポロと涙を流しつつも頷き、シェルトの肩を借りて戦線離脱するハクアを見送った後、如何にも面倒臭そうな表情で振り返ったユニが。


「久しぶり、クラディス。 できれば会いたくなかったけど」


 如何にも面倒臭そうな声音で挨拶したというのに。


「はッ、つれねェ事言うなよよろずの! ()()()()()()()()()()()()だぜェ!? もっと悦んでくれてもいいじゃねぇか!!」


「……そんなんだから会いたくなかったんだよ」


 文句をつけるどころか以前ユニと会って戦った日まで細かく記憶してという異様さを披露してきたクラディスに、ユニはすでに疲労困憊といった具合に溜息をこぼしつつ、その時の事を思い出す。


 ……そういえば、あの時も今と同じように〝前に戦った時の日付〟を細かく覚えていて『うわぁ』と引いたな──と。


「にしてもよォ、万の! さっきのお嬢サマは中々のモンだったぜェ!? 遊び相手としちゃあ上々だったかもなァ!!」


「【狂鬼の戦乙女(ワルキューレンオーガ)】のお墨付きか……同情するよ」


「まァそう言うなって! ンで思いついたんだがよォ──」


 そんなユニのドン引き加減など知った事かとばかりに話題を変えたクラディスの矛先は、ほんの一部とはいえハクアに向いたままであったようで、ニカッとギザ歯を露わにして笑ったかと思えば、ユニにも予想し得なかった言葉を口にした。











「──アイツ、アタシ様にくれよ! なァ!」


「……そう来るのか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ