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狩人講習:2日目・討伐クエスト (下)

 クエストの内容を纏めると──。


           ★☆★☆★


 タブル村で野菜の収穫量、及び流通量が落ちてきている。


             ↓


 村人たちが独自に調査した結果、貴族の舌をも唸らせる野菜が育つ〝栄養価の高い土壌〟の質が落ちている事が判明。


             ↓


 更に詳しく調べたところ、その質を保つ為の1番の秘訣と言っても過言ではない、()()()()()が消えている事を了知。


             ↓


 その生物が消えた原因となった生物を発見し、駆除してしまおうと決意したまではよかったが、村人たちはおろか村に駐在していた2人の竜狩人ドラゴンハンターも返り討ちに遭ってしまった。


             ↓


 これはマズい、このままでは野菜が収穫できなくなってしまうと危惧した村長は、『学園を成績上位で卒業した優秀な竜狩人ドラゴンハンターのパーティーを』と竜狩人協会(D・ハンターズギルド)の総本部に依頼。


             ↓


 そのクエストに目をつけたのが、ユニだった。


           ★☆★☆★


 そして今、村人たちが幾人かの負傷者や犠牲者を出しつつも何とか突き止めたのだという、その生物の巣穴にて──。


『『『MOOOOOOOOOOOOLEッ!!』』』


「ッ、本当に平均Lv40なの……!?」


 倍のMPを消費して発動された【通商術:鑑定(アプライザル)】で見抜いた通り、平均としてはLv40付近である筈の地上を蠢く者(ランドリグラー)の群れを相手に、黄金の橋(ギャッラルブルー)は思わぬ苦戦を強いられていた。


 討伐対象──……〝掘土竜くつどりゅう〟。


 文字通り、土竜もぐらを派生元とする竜化生物である。


 例に漏れず肉食ではあるが、地上を蠢く者(ランドリグラー)という事も相まって最大でも4人と同じか少し上回るくらいのサイズの個体しか出没しておらず、


 なんだ、このLvなら流石に苦戦はしないな──。


 4人全員が、そう思っていた。


 そう、思ってしまっていた。


 ……そんな訳がないのに。


 通常、竜化生物における〝強弱の指標〟とは人間との共通点である〝Lv〟の他に、そもそもの派生元が肉食か否かという〝分類〟や、加齢によって老獪にはなっても老化はしない点から〝年算〟、派生元の存続が危ぶまれるほどに高い場合の〝稀少性〟などいったものが挙げられるが、それらを除く例外的な指標も存在する。


 例えば派生元が爬虫類や両生類の場合、外見が御伽話に登場する〝竜〟に酷似するからか他の種より強くなりやすく。


 例えばその名に〝竜〟を冠する生物──石竜子、竜宮ノ遣、竜ノ落子などは〝名は体を表す〟を地で行く強さを誇る。


 これらの条件を満たす竜化生物はLvや分類、稀少性や年算、地上か迷宮かさえ問わず、異様に厄介な相手となる。


 ……土竜も、その一角である。


 ここで場面を冒頭へ戻してみると、シェルトが掘土竜くつどりゅうの群れを相手に苦戦を強いられているのは間違いないのだが。


(悪戦苦闘してるの、私だけなのよね……)


 どうやら、シェルト以外の3人は順調そのものなようで。


「っし、また1匹ヤったっすよー!」


「ぼ、ボクも……!」


「上々ですわね! 残りも片付けますわよ!」


『『『LO、MEEEE……ッ』』』


 新たな職業ジョブも、そして刷新された武装アームズも正しく手足のように使いこなし、1匹、また1匹とLvが低い割に能力値ステータスが高く統率も取れている掘土竜くつどりゅうたちを事もなげに蹂躙していく。


 聖騎士パラディンだったハーパーは後衛職の〝精霊術師エレメンタラー〟に。


 忍者シノビだったハクアは前衛職の〝狂戦士バーサーカー〟に。


 賢者ワイズマンだったシェイは中衛職の〝錬金術師アルケミスト〟に。


 それぞれが補助武器サブウェポン主要武器メインウェポンへ持ち換えるとともに、Sランクの適性を持つ職業ジョブをへと、()()()()()()()()()()職業ジョブへと転職し。


(私以外、討伐開始時点ではLv1だったのに……)


 流石に一騎当千とまではいかずとも、シェルトの言葉通り最初はLv1だった筈の3人は、現時点ですでに平均20近くまでのレベリングに成功しており、どれだけ今の職業ジョブが馴染んでいるかをはっきりと示している。


 ……また、その事実を逆説的に捉えれば今までの職業ジョブが如何に馴染んでいなかったを示してもいるという事になり。


(私が、間違った〝憧れ〟を強いてたばかりに──)


 そんな女々しい後悔や慚愧の念に駆られていた、その時。


「しぇ、シェルト様! 足元から……!!」


「……」


 誰より広い視野で戦場全体を見渡し情報を獲得していたシェイからの警告を受けたが、どうしてかシェルトは動かず。


 ……ただ静かに、、冷静にMP(魔力)を練っていた。


(確かに私の〝憧れ方〟は間違ってたのかもしれない)


 【剣聖術:付与(エンチャント)】、【剣操術:連撃(ダブルエッジ)】──。


(でもそれは! 〝憧れ〟を捨てる理由にはならない!!)


 【増強術:攻勢(アタックアップ)】、【武神術:捨身(ノーガード)】──!


『MOOOOOOOOLEEEEEEEEッ!!』


「道を開けなさい! 【剣操術:斬閃(ソードビーム)】ッ!!」


『OEッ!? ME、OOO……ッ』


 4つの随時発動型技能アクティブスキルによって段違いに強化され、そして何より〝下限の再設定〟によって上限が暴騰した()()()()()()()()()()()()は、シェルトを真下から急襲しようとした掘土竜くつどりゅうを胴体から真っ二つに切断し。


「よっしゃあ! 討伐完了っすよ、お嬢ー!」


「そう、ね……皆、お疲れ様」


「「「お疲れ様でした!」」」


 その1匹をシェルトが始末している間、ハクアとハーパーが1匹ずつ始末した事で付近の掘土竜くつどりゅうは全滅、タブル村や協会ギルドへの成果報告を残し、黄金の橋(ギャッラルブルー)は見事クエストを達成したのだった。











『赤点回避くらいはできたのかしら? ()()()()


「まぁ、そうだね。 及第点とはいかないけど」


『厳しいのねぇ。 ま、どうでもいいけれど』

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