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狩人講習:1日目・戦力、戦法の確認 (中)

 それから、およそ30分弱ほどが経過した後──。


「シェイ、翼を壊して! 〝飛行〟の選択肢を奪うの!」


「は、はい……! 【賢才術:万能(マルチスペル)】、【一過双電リターンボルト】!」


 激しい攻防の末、ようやく動きが鈍ってきた土塊を前にした4人は最後の一撃に向けて動き出し、シェルトからの指示でシェイが放った直線状の雷撃は躱されてしまったが、その勢いを維持するどころか加速する形で反転、威力を高めながら二又に分かれて一対の翼を貫いて破壊し。


「ハクア、足場を崩して機動力を削いで!」


「心得たっす! 【忍法術:五行(ゾクセイ)】、【土遁:震天地シンテンチ】!」


 かと思えば今度はハクアに指示を出し、一時的にとはいえ飛べなくなった事により巨体にそぐわぬ足取りで攻撃を回避しようとしていた土塊の足元を、ハクアが強く細かい揺れの地震で地面を砂に変えて崩し。


「行くわよハーパー! 狙うは一点!」


「首、ですわね!」


 最も安定感が損なわれる瞬間を見逃さなかったシェルトとハーパーが、シェイの魔術で崩れた岩塊やハクアの地震で隆起した地面を障害物や足場として器用に使って、シェルトが土塊の真上、ハーパーが土塊の首に相当する部位の真下まで接近した事を互いに確認した瞬間。


「【剣操術:竜殺(ドラゴンキラー)】!!」


「【護聖術:白架(セイントクロス)】!!」


『──……ッ』


 ユニが錬成したからか、やたらと硬かった土塊の首も流石に耐え切れなかったらしく、シェルトとハーパーによる合わせ技で首を切断され、やっとの事で土塊は完全に沈黙した。


「よっしゃあ! 倒したっすよー!」


「ま、まぁまぁの相手でしたわね!」


「疲れ、ました……」


「ゆ、ユニ様! いかがだったでしょうか……!」


「ん?んー、そうだなぁ……」


 思わぬ苦戦を強いられたものの、どうにかユニから与えられた試練を乗り越える事ができた喜びを3人が噛み締める中、特にユニへの憧れの感情が大きいシェルトは勇み足でユニの下へと駆け寄り。


 褒めて欲しいんだろうなとはユニも解っていたが、それでも過大評価は彼女たちの為にならないと判断したがゆえに。


「まぁ、甘く見積もって20点かな。 100点満点で」


「「「「えっ」」」」


「1人につき25点、合計100点からなる減点方式で見てたんだけどね。 まずは──うん、シェイからいこうか」


「ひぁ!? は、はい……ッ!」


 ユニの口から飛び出た、あまりにもあんまりな点数に4人の目が点になるのも束の間、当の本人は少女たちの動揺など気にもかけずに個人個人の採点及び評価に移り始め。


「君は4人の中で最も視野が広い。 他の3人がどう動いているのかも、どのように動くべきなのかも解ってる筈だ。 なのに何故かそれを伝えようとしない。 積極性が君の課題だね」


「うぅ……が、頑張ります……」


「マイナス15点。 次に、ハクア」


「は、はいっす」


 憧れのクロマより遥かに広く、ともすればユニにも劣らない広い視野を持っているのに、どういう訳か()()()()()()()()()()()()()()それを活かそうとしないシェイ。


「君は単純に、ハヤテを目指しすぎ。 あの娘の動きはあの娘自身の体質があってこそ可能なんであって、君の体質には向いてない。 近接戦闘の才覚センス自体は悪くないんだけどね」


「そ、そうっすか……」


「マイナス15点。 で、ハーパー」


「わ、私もですの……?」


 ハヤテへの強い憧れのあまり、おそらくは常にハヤテの動きを模倣する事を念頭に置いているせいでATK(物理攻撃力)INT(特殊攻撃力)SPD(びんしょうせい)も全てが半端となっているが、()()()()()()()()()()()()()()優れた近接戦闘の才覚センスを発揮できるのに何とも宝の持ち腐れなハクア。


「君は、そもそも前衛向きじゃない。 肉体的にも精神的にも足りない部分が多すぎる。 トリスみたいにやれなんて無理難題は言わないけど、もう少し己を見つめてみるといい。 きっと君の得意分野が見えてくる筈だよ」


「ご指導、痛み入りますわ……」


「20点マイナスかな。 そして、最後にシェルト」


「お願いします……ッ」


 そもそもの前提として聖騎士パラディンに向いておらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()トリスを目指すとかどうとか以前に1人の狩人ハンターとしての在り方を、もっと己の内に燻ったままの〝強み〟を活かす形で探した方が賢明なハーパー。


 と、3人の評価を辛口ながらもところどころに長所を伝えるという、いかにも嚮導役ガイドらしい総評を終えた後、先ほどまで微笑んでいたユニは一転して無表情となり。


「はっきり言っておこう。 君は今、【最強の最弱職(わたし)】の完全下位互換だ。 能力値ステータス技能スキルの効力が半減してる事もそうだけど、それを理解しながらも【最強の最弱職(わたし)】にしかできない事を無理にやろうとしてるのが気になった。 このままだと私どころか一山いくらの転職士リワーカーで終わるけど、いいの?」


「ッ、い、いいえ……精進、します……」


 前の3人は多少なりとも褒める部分があったのに、よもや己へ向けられる評価の全てが謗りになるとは思ってもいなかった為か、または憧れを抱いていた相手から〝完全下位互換〟などと酷評された為か、どちらにせよ一気に先ほどまでの元気をなくして肩を落とすシェルト。


 ここで、4人への批評が終わり。


「マイナス20点。 で、合計10点。 解ってくれた?」


「「「「はい……」」」」


 お世辞にも高いとは言えない10点という現実を前に4人は一様に項垂れこそしていたが、それでも憧れの感情を止める事はできなかったらしいシェルトがパッと勢い良く顔を上げ。


「あ、あの……! 私たち、どうすれば……!?」


 一体どうしたらユニの眼鏡に叶うのか、そして虹の橋のようなパーティーになれるのか、そんな疑問への助言を求める旨のシェルトの必死な叫びに呼応するように3人もユニを見つめていたが。


「大丈夫だよ。 それを教える為の嚮導役ガイドだからね」


「ユニ様……!」


「何、簡単な事さ。 君たちには今から──」


 ユニはあくまでも平静な様子で、その為に来たんだから心配しなくていいと人当たりの良い笑みを浮かべており、それを見た4人が先ほどまでの暗い雰囲気など何処吹く風といった具合に顔を明るくするのを見たユニは一呼吸置いてから。


「──〝転職〟してもらうよ」


「「「「ッ!?」」」」


 ある意味、最も残酷な要求を突きつけた。

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