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3柱の従者、最後の1柱

ここまでが〝王都編〟!


1週間ほどお休みをいただいた後、〝竜狩人協会編〟が始まります!


次回更新は3/4(月)です!

 これまでに存在が明らかとなった、ユニの従者たち。


 天界のNo.2、熾天使セラフィムのフュリエル。


 魔界のNo.2、悪魔大公グランデュークのアシュタルテ。


 以上、2柱の〝人ならざるもの〟。


 しかし、ユニの従者はこの2柱だけではない。


 ここに至るまで、その存在だけが匂わされてきた。


 三界、最後の1つ──……〝冥界〟のNo.2。


 もはや言うまでもない事だが、その存在もまた己と同等かそれ以上の実力を持つ者でなければ知覚する事はできず、この部屋に辿り着くまでにすれ違った城内の人間は誰1人として気づいていなかった。


 ユニの背後に、〝ゆるふわな死霊〟が居た事を──。


 そしてヴァリアンテが隠し持ち、投擲された短剣ナイフは。


『ねぇ〝ゆにぴ〟! この人ヤバくない!? ()()()何にもしてないのにオラついてきてさぁ、マジでテンサゲなんですけど!』


 防がれるでも躱されるでも叩き落とされるでもなく、どういう訳か死霊の愛らしい顔の前の空間で完全に静止しており、その鋭い刃先をつんつんと突きながら文句を垂れている事は解るのだが。


「おらついて? てんさげ……? 何を言っている?」


「んー、私もたまに解んない時あるからなぁ」


 いまいち要領を得ない、どころか聞いた事もないような言葉ばかりをぷるりとした唇から吐き出している死霊に困惑しっぱなしのヴァリアンテに、ユニもまた首をかしげるだけ。


 事実、会話が成立しているのかいないのか曖昧だという事も往々にしてあるらしく、それは従者としてどうなのだろうかと今さらながらに思っていたユニをよそに。


『つーかオバさんさぁ! ゆにぴはあーしの〝好きピ〟なワケ! 親ガチャ失敗したっぽいけど、そんなんメンヘラの言い訳になんないから! とりま離れてよ!』


「……ッ、軽んじられている事だけは解るな……」


 好きピ──おそらく好きな人みたいな意味合いなのだろう言葉でユニを指し示すとともに、その瞬間までユニに触れたままだったヴァリアンテを、おそらく短剣を止めたのと同じ()()()で無理やり引き剥がす。


 何が何だかといった感じではあるが、侮辱されている事くらいは流石に理解できていたヴァリアンテは尻餅こそつかずとも引き剥がされた事に苛立っていたものの、ここで話を有耶無耶にする事に意味はないと判断し。


「……そもそも貴様は何だ? 死霊ではあるのだろうが」


『マ? あーしの事知らないの?』


「そりゃ知らないでしょ、悪魔大公グランデュークより知名度ないんだし」


『〝たるっち〟より!? うわぁメンブレ……』


 ただの死霊ではない、という事くらいしか解っていない目の前の存在の正体を問う旨の疑問を投げかけたところ、さも『知らない方がおかしい』とでも言いたげな返答が返ってきたが、それについては残念ながらユニから否定されてしまい、アシュタルテにまで妙な渾名を付けておいて勝手に病んでいる死霊を見て。


「……速やかに名乗れ、貴様は何処の誰だ」


『えー? しょうがないにゃあ……』


 いい加減、理性を苛立ちが凌駕しかけていたヴァリアンテからの2度目の問いに、まるでヴァリアンテが心から願っているとでも言いたげなニヤニヤとした厭らしい笑みを浮かべた死霊は、この部屋の中の照明という照明全てをスポットライトのように自分へ集めてから。


『あーしの名前は〝テクトリカ〟! 【死霊卿エルダーリッチ】のテクトリカちゃんだよ! 〝テッキー〟でも〝リカちゃん〟でも好きに呼んで! ね、ゆにぴ!』


「そうだね、テクトリカ」


『もー! ゆにぴサムかー!』


 冥界の支配者に次ぐ上位存在、死霊卿という己の官職名とともに己の名をも大々的に叫び、この部屋のあらゆる物体を動かして拍手喝采の真似事をさせるテクトリカだったが、どう足掻いても可愛らしい渾名で呼んではくれないユニに文句をつけながらもどさくさ紛れに抱きつく一方。


死霊卿エルダーリッチだと? あの、〝冥界神話〟の……」


『あれ? 知ってんの?』


 どうやらヴァリアンテは一般的には悪魔大公よりも知られていない死霊卿の存在を、それこそ歴史学者や神学者くらいしか目にする事がないだろう有名でありながら難解な神話を解読済みであった為に知っていたらしく。


「何故、冥界のNo.2がユニに取り憑いている? 何か企んでいるのならば、その前に存在ごと消滅させてくれる」


『べーだ! やれるもんならやってみろってのー!』


「良い度胸だ──」


 テクトリカが自身を〝冥界のNo.2〟と自称するよりも早く彼女が単なる死霊ではない事を本能的に見抜いていたヴァリアンテが部屋の壁に飾っていた戦鉾槍ハルバードの矛先を突きつけて喧嘩を売るも、あくまで人間を見下して挑発するテクトリカの態度も相まって、いよいよ一触即発な雰囲気となる中。

 

(やっぱり見えちゃうかぁ……置いてくれば良かったかな)


 Sランク狩人たちがアシュタルテの存在を知覚していた事を鏡試合ミラーマッチが終わった後に知っていた事で、まず間違いなくヴァリアンテも知覚可能だろうと推測していた以上、城の外にでも置いてくれば良かったと今さらながら判断ミスを後悔しはしたが。


 もっと言えば、その更に前。


(そもそも、3柱を付き従える事になった事自体が──)


 天使と悪魔と死霊を添える事となった、()()()の事を。


 ユニは若干──……否、割と後悔していたのだった。

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