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弾幕勝負

 ──【悪魔の潜水艦(デモンズサブマリン)】。


 それは決して、アシュタルテの〝切り札〟などではなく。


 搭載した数々の兵器の威力も、その重厚なる装甲の強度なども【悪魔の潜水艦(デモンズサブマリン)】を超えるものは他にいくらでもある。


 しかし、こと〝対潜兵器〟となると話は違う。


 浮力や水圧への対策を兼ねなければならぬ為か、どうしても地上や空中で使用する兵器に比べると何もかも劣りがち。 


 威力も速度も規模も強度も、何もかも。


 とはいえ、そこは【悪魔大公グランデューク】。


 たった1柱で小国1つの生活基盤を支えられるほど莫大な闇の魔力と、あらゆる次元に存在する世界を魔界から覗き誰より早く流行を取り入れる感覚センスに秀でている彼女の〝兵装〟は、その他大勢の悪魔と比較するまでもなく粒揃いであり。


 アシュタルテをアシュタルテたらしめている妖艶な肢体をそのままに、トリスに僅かに劣る程度のDEF(物理防御力)MND(特殊防御力)を誇る装甲アーマーと、ハヤテに僅かに劣る程度のSPD(敏捷性)を誇る噴出喞筒ジェットポンプ推進器スクリュー、そして先ほどの魚雷トーピードを始めとした無数の兵器。


 どれを取っても、Sランク相当の兵装であると言える。


 相手が白色変異種アルビノでさえなければ勝利は堅かったろうに。


 では、【悪魔の潜水艦(デモンズサブマリン)】は全く以て通用しないのか?


 その答えは、すぐに解る事となる──。


          ★☆★☆★


『──WHIIIITE』


『こ、の……ッ!!』


 アシュタルテは今、純白の息吹ブレスの弾幕を紙一重で躱しながらも兵器による反撃や相殺を繰り返し、どうにか生き残っていた。


 まだまだ本気ではなかろうが、それでも白色変異種アルビノの攻撃の勢いは明らかに先ほどよりも増しており、どうやらアシュタルテを〝敵〟とまでは認識しておらずとも〝邪魔〟だとは思っているらしく、この場から優先的に排除しようという意思は感じられる。


(数も速度も規模も厄介極まりない、けれど……!!)


 事実、先刻の驟雨がそのまま向きを変えたような純白の弾幕は今この瞬間もアシュタルテを襲い続け、もはや目を開けている事すら難しい閃光も含めて先ほどより厄介になっているのは間違いないのだが。


 本当に厄介なのは、その〝威力〟。


 どれだけ数を増やしても、どれだけ速度を上げても、どれだけ規模を狭めても、白色変異種アルビノの吐く息吹ブレスの威力は常に〝最大〟。


 しかし、これは決して来るべきユニとの戦いに備えて温存するといった考えが白色変異種アルビノの中にないからではなく。


 通常の竜化生物の息吹袋ブレスタンクが地上個体ならば威力より精度が求められる為に小さく精巧な進化を遂げ、迷宮個体ならば精度より威力が求められる為に大きく粗雑な進化を遂げているのに対し。


 白色変異種アルビノの場合、息吹袋ブレスタンクの元栓ともいうべき部位が完全に口を開けたままとなっており、ある意味では通常の迷宮個体よりも粗雑な作りであると言えなくもないが、ひとたび『息吹ブレスを放つ』と考えるだけで何の予備動作もなく一瞬で放出してしまえるという事でもある。


 アシュタルテも持てる限りの兵器を、それこそ弾幕を張るが如く放ってはいるものの、その殆どは相殺すらできず無情にも撃ち落とされていくだけ。


 ……そんな〝いたちごっこ〟に嫌気が差したのだろうか。


『THIII……WHI』


『なッ──』


 これまで〝溜め〟など全くしてこなかった白色変異種アルビノが身体を反らしたかと思えば、その3mほどしかない小さな身体から放出されたとは思えぬ極大の息吹ブレスと、その周囲の隙を完全に埋めるが如く放出された無数の極小の息吹ブレスがアシュタルテへ向けて1度に吐き出され。


 驚愕する暇すらも与えられる事なく、アシュタルテは純白の閃光の中に呑み込まれて──……その存在を、消失させられた。











 半ば、そう確信していた白色変異種アルビノの眼に映ったのは。


『──った……とでも思ったかしら!?』


『……WIT?』


 得意げと言うには何とも焦燥感の拭い切れない絶妙な表情と声音で、すでに淡水の彼方へと飛来していった息吹ブレスが通った筈の位置から勢いよくこちらへ航行してくるアシュタルテの姿。


(【悪魔の探知機(デモンズソナー)】、【悪魔の隠密装置(デモンズステルス)】……ちゃんと機能して良かったわ、これがなかったら回避できずに消し飛んでたでしょうし)


 何故、今ので殺せていない? と白色変異種アルビノが疑問に思うのも当然の事であろうが、まだアシュタルテにも〝手札〟は残っていたらしく、その内の2つであるところの〝超音波による探知と予測〟と〝元々実体を持たない悪魔だからこそ可能な真なる透明化〟によって、どうにかこうにか回避できていたようだ。


『ここからよ白色変異種アルビノ! 退屈なんてさせないんだから!』


『……TEE……』


 そして更なるドヤ顔と自尊心を携え、アシュタルテはビシッと白色変異種アルビノを指差して第2ラウンドの開始を宣言した。


 普段、付き従っている筈の()()()()をよそに──。

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