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衝突する〝白〟と〝黒〟

 ……もはや言うまでもない事ではあるが。

 

 この世界にも、銃や大砲といった戦闘の素人でも簡単に玄人や竜化生物を殺してしまえるような〝武器〟は存在する。


 実際、狩人や竜騎兵などでなくとも全ての人間が平等かつ普遍的に扱える武装技能アームズスキルの中に【銃】があるくらいだし。


 そう、〝武器〟なら遠近問わず数多く存在するのだ。


 ……しかし、これが〝兵器〟となると話が変わってくる。

 

 例えば──〝誘導弾ミサイル〟。


 それ自体が高い性能を誇る推進器を持ち、目標へ向かって外部からの誘導を受けるか、もしくは事前に定めた目標へ自動誘導されるかして着弾、目標を絶大な爆発で殲滅する兵器。


 例えば──〝光線レーザー〟。


 自然由来かそうでないかを問わず光を集束、増幅させてから指向性を持たせて放射、距離の離れた目標の視界を潰すか直に貫くかして攻撃する光学兵器。


 仮に資源や原動力が不足していたとして、どちらも〝魔力〟や〝技能スキル〟を用いれば何とでもしてしまえそうではあるし。


 そもそも、この世界には迷宮宝具メイズトレジャーと呼ばれる理外の知見や技術で以て作られたとしか思えぬ、それこそ複製にすら長い時を要する事もある規格外の道具や武装、或いは兵器そのものが存在しているのだから実現できそうなものだが。


 大体、息吹ブレスなんて殆ど光線レーザーなのだから。


 それでも現状では、この世界に兵器らしい兵器を素人同士の諍いから国家間の大きな戦争に至るまで使用する者は皆無。


 この奇妙な歪みの根底には、〝下々の者たちに過度な武力を持たせてはならない〟という各国の臆病かつ傲慢な王侯貴族たちによる身勝手な思想の押し付けが深く根付いていた。


 そして今、アシュタルテが発射した〝魚雷トーピード〟もその1つ。


 この世界では()()開発されていない未踏の兵器。


 まだ、という事はいずれ開発される定めではあるのかもしれないが、少なくとも現段階ではそこに至っていないという事。


 それを、アシュタルテは己の手脚や羽といった肉体の一部を色濃い闇属性の魔力によって変異させ、戦闘に臨む。


 もちろん魚雷トーピードだけではなく、誘導弾ミサイル光線レーザーも扱えるし。


 それに加えて剣や斧、槍や弓といったこの世界にも当たり前に存在する武装も扱える、まさに〝常時全身武装〟状態。


 そもそも、〝悪魔〟という種の力の根源は──〝恐怖〟。


 〝人間〟という種が〝恐れているもの〟を力とする。


 そして、それは何もドラグハートに住まう人間に限った話ではなく、あらゆる世界に存在する人間たちが恐怖する様々なものを模倣し、力とする。


 また、魔界では〝恐怖〟の流行り廃りが激しく。


 悪魔たち自身もまた、流行に敏感であるようで。


 アシュタルテが今こうして〝兵器〟を模した力で戦おうとしているのは、どうやら今の流行が〝兵器〟だからであるらしかった。


 ……割と俗っぽい種族だった。


 まぁ、それはさておき。


 アシュタルテが右腕を発射管に変異させて発射した、光も通さぬほどの深い漆黒でありながら不気味な光沢をも放つ魚雷。 


 今もまだ横たわって眠ったままの白色変異種アルビノとほぼ同じサイズでありながら、【騎行術:神風(ライダーズアサルト)】を発動したシエルを上回る速度と、その速度からは考えられないほぼ完全な無音で目標を目掛けて進んでいき。


 まさに今、魚雷1つ分ほどの至近距離まで迫った時。


『……TE?』


『ッ!!』


 白色変異種アルビノが、ふと目を覚ました。


 未だ寝ぼけ眼ではあるが、明らかに目の前へ迫ってきている魚を──そして、その向こうに居るアシュタルテを見た。


 その姿勢に気づいたアシュタルテが僅かに硬直した瞬間。


 白色変異種は、ポッカリと純白の口を開けて。


『WHIIII』


『は、速ッ──』


 一切の充填もせず、それでいて迷宮を護る者(メイズガーダー)でも数秒の充填を要した白銀の巨剣の威力と速度を遥かに凌駕する混じり気のない純白の息吹ブレスを吐き出した。


 目を奪われる絶景の中、〝白〟と〝黒〟が衝突する──。

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