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〝黒〟の正体

 そう、自分たちがここまで近くに来ているというのに。


 白色変異種アルビノは、すやすやと眠りに就いていたのだ。


 それこそ心地よさげな寝息を立てるほどに。


 尤も、目蓋がないせいで一目ではそれと解らないが。


 ……しかし、そんな事はどうでもいい。


『余裕見せてくれちゃって……』


 特に気にしている様子もないユニとは対照的に、ただでさえユニから下に見られたばかりのアシュタルテは、さも気にかけるまでもないと言われたように感じたらしく──そんな事実はないのだが──ふつふつと湧いてきた怒気を抑えるべく溜息をつきつつも。


『……ねぇユニ。 あの状態なら私の攻撃、通らない?』


『ん? んー……無理だと思うけど……』


 苛立ちそのものは全く引っ込んでいなかったようで、あれだけ無防備なら或いはとユニからの忠告を無視する事になってしまう攻撃の意思を見せてきたアシュタルテに、ユニは真顔で彼我の実力差を考慮し、どうやっても不可能だろうと改めて忠告してやろうとしたが。


『まぁ、やるだけやってみたら? でも1回だけだよ、そんな無駄な事にそこまで時間割いてらんないし。 いいね?』


『……はいはい、解ったわよ』


 1回だけならいいよ、と。


 その後はもう余計な事しないでね、と嗜めるような声音で与えられた〝たった1度の機会〟に、アシュタルテは全く嬉しそうではない表情と声音を見せながらもユニより前に出る。


 ちなみに、色濃い闇の魔力を充填し始めた彼女の苛立ちの矛先は、何も白色変異種アルビノにだけ向いている訳ではない。


(……1年前、初めて逢った時からそうだったけれど……完ッ全に私の事ナメてるわよね、あの娘……)


 そう、その苛立ちの一部は1年ほど前にフュリエル()()とともにユニへ挑んだ結果、大敗を喫したあの戦いの時から見くびられ続けているという事実に由来していて。


 ただの、とは口が裂けても言えないが普段なら見下して当然の人間風情に存在ごと軽んじられている事に今更ながら不甲斐なさの入り混じった己への呆れを込めた溜息をついてしまう。


(まぁでも実際ナメられて当然なくらいの実力差があるんだから仕方ないだろって言われたらそれまでだし……はあぁ)


 とはいえ彼女が脳内で呟いた通り、ユニとアシュタルテの間に天と地ほどの力の差がある以上、『ナメるな』と言ったところで『その弱さで?』と真顔で返されるのが目に見えており。


 たとえ今ここで下剋上を図ったとしても、そもそもユニは彼女を戦力として数えてすらいないのだから、〝戦力の低下〟など気にも掛けずにアシュタルテを殺すのだろうと解らせられている時点で、ユニの前では〝弱者で在る事〟以外の選択肢はないと改めて理解させられていた。


 ……が、しかし。


(……いつまでもこんなのじゃ駄目よね。 私だって〝実家〟じゃ指折りの強者なんだってとこ、あの娘に見せてやるんだから)


 だからといってナメられっぱなしというのもどうなんだろうかと、これでも故郷では屈指の強者なんだからと己の誇りと矜持を改めて掲げる意味でも、あの白色変異種アルビノだけでなくユニにも力を見せつける為に一層強く禍々しい魔力を溜めていく。


 アシュタルテの故郷、実家とは──……〝魔界〟。


 天界、冥界と並ぶ三界の1つであり、その漆黒の闇に覆われた世界を支配する〝皇帝〟の下、5つの〝爵位〟によって地位や強弱が決まるという天使と対になる存在──〝悪魔〟が棲む世界。


 下から男爵バロン子爵ヴァイカント伯爵ウァール侯爵マーカス公爵デュークとなっており。


 屈指の強者というくらいだから、アシュタルテは公爵デュークなのだろう──……そう思うのも無理はないと言えるが。


 残念ながら、公爵そうではない。


 悪魔の爵位は正確に言うと5つではなく──〝6つ〟。


 一般的に広く知られている爵位が5つというだけで、その5つの更に上、公爵と皇帝の間に位置する〝普通の悪魔たち〟が陞爵を狙える実質的な頂点となる爵位。


 その爵位の名は──。


『【悪魔の(デモンズ)──魚雷トーピード】ッ!!』


         ──【悪魔大公グランデューク】──


──〝アシュタルテ〟──

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