自分隠し
中学生くらいに記憶を遡る。
テレビゲームに夢中になり、アニメを見てはしゃぐ……
そういった自分は恥じるべき姿なんだって学習した。
だから……周りを見渡し、僕はそういうものに興味のないふりをした。
もちろん、そういった友達が0だったわけじゃない。
それでも、僕が過ごした時代……
僕が過ごしたその学校では、
そこを支配する正義の味方たちから、
そんな悪はそれは美味しい獲物になるだろう。
だから……僕はそんな僕を隠した。
無口な何を考えているかわからない人物を演じた。
それは、それで不気味な奴だっただろうけど……
それが、その場所で僕が僕の守り方だった。
無難にその場所で必要な時間を潰すための身の隠しだった。
誰にも興味を示さない、何の興味も無い素振りの僕に、誰も興味を示さない。
今日も正義の味方の犠牲になっている同属を横目に僕は、
何も見えないふりをして、何処か勝ったつもりで居たのかもしれない。
TVゲームが好き……TVアニメが好きと言っても、
僕には兄が居た。
それらの権限は、そんな兄が所有していた。
だから、僕はいつもゲームをしている兄のテレビ画面を、誰よりも真剣に眺め……それらをプレイした気になっていた。
途中、兄と同部屋だったが別部屋に移動した。
もちろん、ゲーム機は兄が所有していた。
だから、兄が使用していない、一世代古いゲーム機を遊んだ。
その時くらいから……プレイ側より製作側に興味を持った気がする。
自分もこんなゲームやシナリオを作ってみたいとか……
自分の作ったものがこうやって……誰かに触れられて世界に残るという事に……
少しだけ興奮に似た何かを感じた気がした。
高校時代も変わらない……
ひっそりと自分の趣味を楽しむ程度で、
まじめに学校に通うふりを続け……
適当に就職活動をし、なりたくもないサラリーマンになって、
給料貰って、今まで通りにひっそり趣味を楽しむ程度。
それが……これまで自分を育てた親への親孝行でもあるんだと思った。
それが、僕のこの世界の生き方だと理解した。
「なるほど……それが悪の対象である自分を隠し切ってきた学生時代の武勇伝とでも言いたいわけか?」
そんな話をいつの間にか聞いていた白衣の男。
「そんな糞みたいな人生の唯一の趣味を不自由に縛り付けていた人生は……悪として生きるより不幸だったとは考えなかったのか?」
そう白衣の男に言われる。
もちろん、違う世界線を辿った自分の姿など知る余地も無い。
それを比較するなど不可能な話だ。
退屈を平常運転してきた。
他人の引いたレールを、正道と歩いてきた。
そうすることが、正解だと理解しているつもりでいた。
「あーーーーーーーーーーーっ」
再び頭が真っ白になり……理不尽な怒りが湧き上がる。
すると再び後ろに誰かの気配を感じた。
首筋に注射器のようなものを突き刺され、僕は意識を失う。
カーテンの隙間から漏れる光で目が覚める。
虚ろな目を開き……のそりと起き上がる。
ふと部屋の隅のダンボール目を送る。
○○中学校、○○高校の卒業アルバムが収納されている。
同時にカレンダーに目を送る。
燃えるゴミの日。
僕は、台所に雑に放置してあったゴミ袋を手に持つ。
そして、ドアを開け外に出るとゴミ袋をゴミ捨て場に雑に投げ捨てる。
そして、部屋の隅にあった箱を同時に投げ捨てた。