幻夢唱
○幻夢唱
逢魔が時の 緋に抱かれ
石積みの塔 そびえ立つ
朽ち木の扉 風に揺れ
うす暗闇を 覗かせる
らせん階段 渦巻いて
先は捻れて 窺えぬ
並ぶ窓より 差す緋色
上行く程に 薄れゆく
終に至りし 塔の果て
月光滲みし 石畳
星を望みし 頂きに
白絹纏いし 乙女あり
黄金の笛に 口づけて
淡き白百合 そっと舞う
奏でし詩の 悲しきに
月の雲衣は 濡れそぼる
終に零れた ひとしずく
塔の裾野に 広がりて
泉となりて 煌めいて
水面に魚の 跳ねて静けき
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