第1章 1
信仰とは力 力は神権
俺たちがどこまで神に近づく事ができるかは、どれだけ信仰し、どれだけ神権、すなわち神の力を手にし、どれだけ神の力を行使するかにかかっているという。そうする事で人間は神に近づき、命が永遠に近づく。クイーンは神の力の具現。クイーンを信仰しクイーンに愛される事で、神の力はより光り輝く…
俺が起こしたあの事件から2日後、俺は下宿で荷作りをしていた。と言うのも、大学に行く必要がなくなった為だ。研究室の奴らが死んだせいで研究続行が不可能となり、大学側は特別に俺の卒業研究の単位を認めつつ研究を免除してくれた。卒研以外の単位は既に卒業条件を満たしていた為、完全に暇になる。加えてクイーンが教会の中に信者用の個室を複数設けてるらしく、俺の個室を用意してくれるという。俺はそっちに移動する事に決めた。因みに今、クイーンも荷作りを手伝っている。手伝わなくていいって言ったんだが、強引に部屋に入ってきた。
クイーン「服の種類少ないのね。」
寺西「服が多いと今日何着るか悩むからな。そうゆうのに時間かけたくないんだ。」
クイーン「もっとおしゃれした方がいいと思うけどな…んん?」
クイーン「…「隣の人妻との交際ダイアリー」…へぇ〜こういうの好きなんだ…。」
寺西「だぁぁぁぁぁ!!だから入れたくなかったんだ!」
そんなこんなしている内に、全ての荷物の荷作りが完了した。電話した引っ越し業者に喫茶ベツレヘムまで送ってもらった。
寺西「ところで喫茶店の営業の方は大丈夫なのか?あの日も営業できなかったし…。」
クイーン「ああ、それなら大丈夫。この喫茶店は教会を隠す為のダミーみたいなものだから。私が誰か入団したい人を探してる時だけ営業してるのよ。」
寺西「資金の方はそれで大丈夫なのか…?」
クイーン「その事はそのうち話すわ。着いてきて。」
クイーンは喫茶店の奥へ俺を連れて行った。そこにはエレベーターが設置されていた。
クイーン「このエレベーターは神の力を持ってない人には見えないようになってるのよ。」
寺西「都合いいな…」
俺とクイーンはエレベーターに乗った。地下へと動き出してから30秒くらいで着いた。
クイーン「では…ようこそ、アモル教本教会へ!」
エレベーターのドアが開いたその先には、教会、と言うよりは城に近い部屋が広がっていた。中世ヨーロッパに貴族が住んでいるような、そんな城の中の様だ。こんな場所設けるなんて半端ない資金が必要な筈だが…これもクイーンの力で建てたのか?俺たちは目の前の噴水のあるロビーを歩き出した。
クイーン「まず狭斗くんにはアモル教入信の儀に参加してもらいます。儀式の間があるから、こっちに来て。」
俺は儀式の間へ向かった。
儀式の間は結婚式場を連想させる様な部屋だった。前方に教壇があり、椅子が1つ設けられていた。俺はその椅子に座った。
クイーン「この紙に書いてある通りに進めていくから、リラックスして行ってね。」
クイーンは儀式の流れを記した紙を渡し、教壇に立った。すると、パイプオルガンの音色が聞こえてきた。自動演奏機能によるものか、クイーンの力によるものか…まず、クイーンの演説が始まった。
クイーン「アモル…すなわち愛。愛は我々にとって万物の根源です。人に親切な心を持って接する、誰かの為に行動する事で生み出される愛は、人々に無限の幸せをもたらします。誰かを愛し誰かに愛されるその循環によって世界の均衡は保たれているのです。」
クイーン「そんな誰かの幸せ、愛が勝手な都合により侵略される事があってはなりません。我々はその様な者達と戦い、愛による均衡を守っていく使命があります。あなたはそんな偉大なる愛に見事見定められました。」
クイーン「今一度伺います。私達と共に、世界を愛に満ち溢れる物としていくことを誓いますか?」
寺西「…誓います。」
クイーン「分かりました。次に、あなたの洗礼名を決定します。」
洗礼名?あのピカソみたいに長ったらしいやつのこと?
クイーン「神の力に聞きます。この者に相応しい洗礼名を教えて下さい。」
そう言うとクイーンは水晶玉に手をかざし、紫色に光り輝かせた。
クイーン「…「ディザスター」…改心できぬ悪しき者達の災いとなる者…その名をあなたに授けます。」
意外と短い。洗礼名というよりコードネームみたいだ。
クイーン「最後に、愛の女神自身による祝福を行います。お立ち下さい。」
俺は席を立ちクイーンと向き合った。すると…
クイーン「あなたの未来に、精一杯の愛あらんことを!」
クイーン「ん♡」
寺西「!!?」
で、ディープキス!?クイーンは俺に抱きつきつつ、ディープキスを施した。全身の力が…あかん!理性が追いつかない!俺は考えるのを暫くの間止めた。
クイーン「以上をもちまして、入信の儀を終了させていただきます。…お疲れ様!」
寺西「今の…必要だったのか…?」
クイーン「今のが1番大事なのよ!キスやハグは愛を示す最高の行いなんだから!」
寺西(…俺の貞操が危ないかもしれない…)
俺とクイーンは儀式の間を後にした。
クイーン「それじゃあ、今いる教団のみんなを紹介するわね!」
寺西「確か前、「教団の子達」って行ってたな。そこまで年齢はいってないのか?」
クイーン「そうね。みんな狭斗くんに近い感じかな。全部で6人いるわ。…ただ…気を付けてね。」
寺西「?」
クイーン「みんな狭斗くんみたいに、世間から酷い目に遭わされてた子達ばっかりだから…心が荒んでいるわ。私もみんなに全力で優しくしてあげてるんだけど…ひょっとすると、狭斗くんに当たってくるかもしれない。どうか気を付けてね…。」
寺西「やっぱり、事情は俺と同じか…。」
俺は恐怖心を抱き、教団の信者がいるという広間の扉をくぐった。