プロローグ 5
クイーン「今から狭斗くんの体の血液を私の血液と融合させるわ。あ、血液型のことは心配しないで。私の血液は全ての血液型に対応できるようになってるから。人間は血液の循環によってエネルギーを得ている…神の力は体内のエネルギーを使うことで使うことができるから、まず血液の性質を変ないといけないの。」
クイーン「だけど…注意しないといけないことが2つ。まず1つ目。私の血液を狭斗くんに入れた時、暫くの間凄まじい痛みが全身を襲うわ。体が順応するのに負担がかかるんだと思う。そこだけはどうか頑張って耐えて。そして2つ目。狭斗くんにどんな力が発現するかは私にも分からない。どんな神の力が発現するかはその人の思想、執着している事に根深く関係しているから予想は可能だけど、実際はその時にならないと分からないの。分かってもらえた?」
寺西「…少し怖いけど、自分で決めたことだ。やってもらうしかない。」
クイーン「じゃあ…」
クイーンは自分の胸に手を当ててルビーの様に紅いビー玉程の球体を出した。恐らくクイーンの血液を体内から出したのだろう。そして、その球体を、今度は俺の体、胸の辺りに投げる様に注入した。…少し経ったその時!
寺西「っ、がっ!!うあがああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺の体全身が猛烈な痛みに襲われた。体内の内側から針が1000本ほど出てくるかの様な、そんな痛みだ。俺は床に倒れ、もがき苦しみ始めた。
クイーン「どうか我慢して!頑張って!」
クイーンは俺が暴れているにも関わらず体をさすってくれていたが、気休めにもならなかった。そしていつの間にか俺はあまりな痛みのせいか、幻覚を見始めていた。家や木、山といったものがごちゃ混ぜになったかの様な、そんな幻覚だった。俺はそんな幻覚に吸い込まれるかの様に、深い闇に身を包まれた…
気が付けば、俺は暫くの間眠っていた。目を覚ますと、仰向けに倒れている自分がいた。
クイーン「あ、目が覚めた?よかった!あれから30分くらい寝たままだったのよ。」
寺西「そうか…マジで死ぬかと思った…。」
それにしてもなんだか暑い。体、特に右手が焼ける様に暑いのだ。あの時の症状の後遺症か何かが出てしまったかと心配になり、俺は少し起き上がって右手を見てみた。するとその時、俺の右手から真赤な炎が出始めたのだ!
寺西「ひ、火!?」
ま、まさかこれが俺の神の力とでも言うのか…!?と、とにかく屋内で火がつくのはまずい!何とか消さないと…水!水はどこに…
その時だった。さっきまで火が出ていた俺の右手から、今度は水が出始めたのだ!噴水の様に湧き出る水に仰天し、俺は足を崩して倒れた。
すると、今度は地面が揺れ始めた。地震?いや、地震にしては揺れ方が違う。ま、まさか、今度は地面を俺が揺らしたのか!?
気が付けば、強い風が吹いていた。…いや待て!扉も窓も締め切ってるのに!?暫くして、一連の騒動は収まった。
クイーン「………凄い…こんなに何種類も神の力が発現するなんて…」
寺西「今のが全て…俺に発現した力…なんだよな?」
クイーン「普通、人に発現する神の力は1種類だけなんだけど…狭斗くんって、只者じゃないのね!」
寺西「火…水…地面…風……………これってもしかして…四大元素?」
クイーン「え、えーっと…お姉さん科学の事はよく分かんなくて…」
寺西「素粒子物理学において最初に考えられたこの世を構成すると言われていた物のことだ。古代ギリシャで考案されて、熱いか冷たいか、湿っているから乾いているかでどれになるかが決まるとされている。科学という概念はこの四大元素から始まったと言われているが…1つ聞いていいか?」
クイーン「何かしら?」
寺西「神の力って使っていくと何かしら変化が出てくるのか?例えば、より強力な出力になったり、新しくできることが増えたり…」
クイーン「あり得るわ。かく言う私でもできることが増えていってるもの。まさか…」
寺西「ここからは俺の予想になる。俺の力はこの四大元素を操ることを起源にして、科学史を辿る様に様々な要素を操ったり現象を起こせたりする様になると思う。確証は…無いけど、感覚的に分かるんだ。らしくないな、俺は証拠が無いと信じないタチなのに。」
クイーン「な、何てこと…今いる教団の子達でさえ1種類しか使えないのに…凄いわ!」
寺西(子…?)
寺西「確か、神の力は本人が執着している事に基づいて決まるって言ってたな?俺の場合、科学に対する執着が半端なかったからいろんな科学現象起こせる様になったんだろうな。」
寺西「…これで今まで俺のこと散々バカにしてきた奴らに地獄を見せられる…俺の人生を無茶苦茶にしてきた奴らの人生を、今度はこっちが無茶苦茶にしてやるんだ!」
寺西「と、その前に、神の力を授けていただいた直後で申し訳無いんだけど、クイーンに少し協力してもらいたい事があってね。」
クイーン「え、何かしら?」
寺西「今から言う事って、今のクイーンの力で出来る事かな?」
俺はクイーンに計画の一部始終を話した。
クイーン「そ、そんな事を女神にさせようって言うの!?まあ、できなくはないけど…」
寺西「俺がアモル教団に入る第1歩を踏むためにも必要な事なんだ。お願い。」
クイーン「もーしょうがないわね…あ、その前に、狭斗くんが復讐したいって人達が、改心の余地があるかどうかだけ確認させてね。そうじゃないと、復讐自体できないから…」
寺西「間違いなく改心の余地無いと思うけど…分かった。」
俺はクイーンの報告を明日受ける事にして、明日まで計画を待つ事にした。