ケース①:鯉川友紀の場合
それは東京の空からやってきた。
「謎の飛行船を確認!!」
「何者かの侵略か!?」
その飛行体は、決して大きくはないがミステリアスらしく円盤状の物。東京にいる者達はそれを見上げ、驚きに包まれていた。
「ふふふ、ここが地球という星の生命体か」
「クンクンクン……。いくつかの強い匂いを感じるぞ」
「良い女がいっぱいいるじゃねぇか。奴隷用にも飼いたいなぁ」
なんて危ない発言をするのだろうか、この宇宙人達。しかし、"人"という言葉が入るためか、人間と等しい姿をした6人。上空から見える、数々の甘美な誘惑を出す女性達と蠅やゴミ、カスと同義な男達を、まるで飼育ケースに入れた者として見ているようだった。
「では、各々。吟味して女を……」
女性達が攫われるであろう、開始ゴングの直前。
ドゴオオオォォッ
「ど、どわぁっ!?」
「な、何事だ!?」
円盤状の乗り物に風穴が空いたのだった。その穴は人の1人が通ったとされるほどのサイズであり、6人の雄達の前にすぐに現れる、1人の強い雌。
「はいはーい!私、警視庁。特殊警察課の一人!鯉川友紀でーす!逮捕しちゃうぞ!」
鯉川友紀。と名乗る女性警官がこの乗り物に乗り込んできた。
上空を飛んでいる物に飛び込んでくる雌。翼があるわけでもないし、どーやって来たのか謎ではあったが、
「何者だ!」
宇宙人6人は当然構えたが、
「まず1人」
鯉川は当たり前のように視界に入ったただ1人に狙いを絞り、この面子の誰にも見えぬ速度で、狙った1人の頬を握り締めながら、ただただ。高速にダッシュをした。
乗り物という形を否定するように、壁を突き破り、突き破って……
ドゴオオォォッ
「!?お、おおおっ!?」
「私と一緒に、落下しましょ!」
侵略者6人の内の1人を外という、上空に放り出す。
「あれ?こーして見ると、あんた。良い顔してるね」
「お、落ちる!?な、何してんだぁっ!?」
鯉川の余裕と宇宙人の雄の動揺には、大きな実力の差がある。
急降下していく2人と1つの宇宙船。
「これは戦うのが楽しみ」
「し、死ぬだろうが!!」
ドオオオォォォォンンッ
宇宙船が地上に落ちた衝撃と音が凄まじく、鯉川達の落下がさほど響かなかったのは。単純に鯉川の力量がハンパではないからだ。
「さっ!戦いましょ!!久々に……って、今の落下の衝撃で死んじゃってる……」
パラシュートがあったわけでもない。ただただ超高度な受け身をとったことで、無傷&超高速での戦闘体勢の準備。これらをやってのけるのは、戦闘技術の云々の前にある。歴然とした実力差を証明していた。
「あーあー、私、一番の雑魚を選んじゃったかも」
勝者、鯉川友紀。
"韋駄天"の異名をとる超人。
とにかく素早く迅いという超人。