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天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ


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正しい魔法の学び方? 4

登録ありがとうございます!

 「その後、私が学校への入学を決めたことを両親に話すと、両親は『そう。』とだけ言って黙り込んでしまいまして。」

「もしかしてご両親には積極的には賛成してもらえなかったってこと?」

「まぁ、そうでしょうね。両親は私が学校へ行くことに対して特に反対はしませんでしたが、兄や姉たちと同じ職業学校へ通って欲しかったという思いはずっと持っていたようです。私が学校へ入った頃、既に他の店で働いていた兄と姉は私に魔法の適性があるのは本当なのかと、私に何度も聞いてきました。私が学校を卒業するまでそうでしたね。」

「恐らく、それはミリルが『先祖返り』で魔法の適性を持っていることへのやっかみもあったのだろうね。」


ミリルが少し遠い目をして窓の外を眺めていた。昔のことを思い出していたのだろう。


 「やっぱり・・・エルデさんもそう思われますか?」

「ああ。年長者であるという、自分達の絶対的な優位性がミリルの魔法の才能に脅かされるかもしれないんだ。先に働き始めていたのなら、余計に己が立場を守りたいと必死になるだろうと思うよ。」


 私はミリルの顔を見て肯き、微笑んだ。視線を横にすっとずらすと、サーラが相変わらずお茶菓子を嬉しそうに頬張っていた。どうやら大皿の上のお茶菓子はサーラが一人で半分以上食べてしまったようだ。サーラ、そんなに腹が減っていたのか?


 「ミリルも見た目によらず意外と苦労してるんだなぁ。」


ロイが話に割って入ってきたが、私の視線を感じて私に非礼を詫びてきた。


「あ、エルデさん、話に割り込んでしまってすみません。」


「いいよ、ロイ。気にしていないから、続けて。」

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて話を続けますね。」


ロイは私に断るとミリルの方を向いて話し始めた。


「ミリル、俺からもちょっと聞いていいか?」

「ええ。ロイさん、改まって何ですか?答えられることならば何なりとお答えしますよ。」

「それなら、質問がある。ミリルは学校へ行っている間に職業学校へは行かなかったのか?学校と職業学校って、希望すれば両方通えるだろう?」

「学校ってそんな制度あるんだっけ?」

「はい。私も又聞きですけれど、騎士団で学校に通いながら騎士養成の職業学校へも通っていた人がいると聞いた事がありまして。」

「ええと・・・そうですね。私も王立魔法学校と職業学校の両方同時に通うことができると入学当初に聞きましたし、同級生の中には実際にそうしている方達もいらっしゃいましたわ。」

「ミリルは学校へ通っていた時は学校だけ通っていたの?」

「はい。私が学校へ通うために両親が出した条件は、自宅から通うことと、学校の勉強をしながら家業の手伝いもすること、の二つでした。」

「それはそれで大変だなぁ。」


ロイがミリルの話を聞いてげんなりしていた。


「当時はその条件に私も納得できませんでしたが、両親は私にその条件を出すことで自分達なりに折り合いをつけたのだろうと今は思います。どうやら家業の手伝いをさせながら、元々通う予定だった商業関係の職業学校で学ぶ内容を私にそれとなく叩き込んでいたようです。それが分かったのは、学校を卒業して職業学校の専科へ通い始めてからですね。」

「ああ、そうか。ミリルは学校を卒業して学院へは行かなかったんだったね。」

「はい。職業学校の専科へ進みました。」


 いけない、ミリルの意外な過去の話につられて、本当に聞きたい事を聞いていなかった。


「ミリル、答えてくれてありがとう。それにしても話が随分横に逸れてしまったね。こちらが本題なんだけど、ミリルは学校で魔法についてどんな風に教えてもらったか覚えてる?」

「ええと・・・。いきなり魔法を使うのではなくて、確か最初は全員に魔法についての教本が配られて、魔力とか魔法の成り立ちとかを学びましたね。実際に魔法を使うのは、生活に役立つ補助的な魔法を教本に書いてある通りに詠唱することからですね。」

「まぁ、全く魔法を見たこともない初心者が魔法を学んでいくには妥当な方法でしょうね。」


ロイがミリルの話にうんうんと肯きながら相槌を打っている。ロイは大皿からお茶菓子を一つ取ると、ポイッとお茶菓子を口へ放り込んだ。そろそろ小腹の減る時間か。


「サーラはここに来る前に魔法を見たことがある?」

「うぇ?」


サーラが、お茶菓子を咥えたまま顔を上げた。急に話を振られて驚いたようだ。


「ああ、ごめん。サーラは食べている途中だったのか。とりあえず、今食べかけのお菓子は食べてしまおうか。」

「ふぁい・・・。」


もっきゅもっきゅという音が聞こえそうな咀嚼をして、サーラがお茶菓子を食べ終えた。


「サーラ、もう一度聞くよ。サーラはここに来る前に、魔法を見たことがある?」

「まほう、ですか・・・?」

「ああ。魔法、だ。」


サーラは首を傾げてきょとんとしている。


「まほう・・・。」


ひとしきり考えたのか、申し訳なさそうにサーラが口を開いた。


「ごめんなさい・・・よく、わからないです。」


 私が調子に乗ってしまったのと、サーラが重い物を無意識に魔法を使って持ち上げているかもしれないのは置いておいて。ここは抜けが無いように一から教えたほうがいいかもしれないな。



 ―――よし、サーラの教育方針は決まった。



「ミリル。学校で使っていた教本って、アトラー語で書かれているの?」

「まさか!エルヴァトラ語に決まってるじゃないですか。」


あれ?学院の教本はアトラー語が普通だったけれど、学校は学院とは違うのか。


「エルデさん、学校は私のように魔力検査で魔法の適性があることが分かって来る人がほとんどだと聞きましたわ。私も学校へ入った時は、アトラー語の読み書きはほとんどできなかったんですよ。」

「ふむ・・・そういうもんか。」

「そうだと思いますわ。まあ、学校は稀に魔法の適性は無くとも、魔法が好き過ぎてどうしても学びたいという方や、適性はなくても仕事の都合で魔法について学ばざるを得ない方もいらっしゃったようですけど。」

「へえぇ~そんな奴いるんだ。」


ロイも意外と好奇心旺盛だな。まぁ、王立魔法学校は魔法を学びたいという者に対して広く門戸を開いているから、時にはそういう者達も必要に応じて学びに来るだろう。


「ええ。私がご一緒したのは入学当初のわずかな間で、途中からは授業が分かれてしまってその後はどうなられたのかは分かりませんわ。」

「ロイ、その話は長くなりそうだからまた今度にしようか。」

「はい、エルデさん。失礼致しました。」


学校の教本がエルヴァトラ語なら尚更サーラにとっては好都合だ。


「ミリル、学校で使う教本って学校で売ってるの?」

「確か、最初の一冊は学校に入ってすぐに全員に配布されて・・・後はそれぞれの進み具合に合わせて各自が使う教本を図書館へ行って貰ってくる仕組みだったと思いますわ。」

「学校の図書館か。誰もが買える物ではないということだね。」

「魔法の力を悪用されないために、そのような仕組みにしてあると学校で聞きましたわ。」


まあ、そうだろうな。魔法の適性を持たない人達に向けて書かれた魔法についての解説書や、王国に住む者が全員受ける必要のある魔力検査についての本は誰でも街中の書店で買うことができる。しかし、魔法の教本は初歩的な物だと実に平易な言葉で使える詠唱呪文が書かれているので、誰でも入手できたらそれこそ危険だろう。


「ミリル、学校の教本って貸し借りできる物なの?」

「いいえ、できなかったはずですわ。初心を忘れないよう、学校から配布された魔法の教本は全て本人が保管するように義務付けられているはずです。学校で使用する魔法以外の教科書類は貸し借りや譲渡ができますが、魔法の教本だけは本人の魔力を教本に登録する必要があるので、所有者以外の者が触っても本を開くことができないようになっていたはずです。」


 そうか。商業ギルドのグラントに頼めば、グラント自身が使っていた教本を貸して貰えるかと思ったが、所有者の魔力が登録されてあるのなら無理だな。サーラに教える用に、自分も教本を一式手元に置いておきたいんだけどなぁ。


「エルデさん、研究所経由で教本を購入することは可能なのでしょうか。」


しばらく考え込んでいたロイがふと顔を上げて呟いた。


「あー、その線から攻めれば行けるか。研究所の職員が副業で貴族の子供の家庭教師を引き受けた、という話を私も聞いた事がある。おそらく勉強だけではなく、魔法も教えていたんじゃないかな。私も従業員に魔法の教育を施す必要ができたので一式教本を購入したいと申請すれば通るかも。」


 仕方がない、研究所経由で取り寄せるか―――


私は予定より早く兄への手紙を書かざるを得なくなったことに、げんなりした。

次回でこの話は一段落する予定です。

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