表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ
6/192

今日は色々あり過ぎて

前半サーラ、後半エルデ視点です。

一部表記を改めました。(2019/4/24、2019/7/22)

 私は「だついじょ」という部屋で着ていた服を脱ぎ、自分の鞄に畳んでしまった。「だついじょ」の扉をドンドン、と叩いて合図してから奥にある「ふろば」に入った。


しばらくしてから、扉が開いて閉まる音がした。


きがえ、もってきてくれたのかな。


 私は手短に「おふろ」をすませると籠に置いてある服を着た。綺麗に洗濯されていて、肌触りも悪くない。長さは・・・私の身長よりも背の高い人のものだから仕方ないのだろうけど、シャツだけなのに短めのワンピースみたいになってしまう。袖も袖口から指先がかろうじて出る位でとても長い。袖は何回か折り曲げれば何とかなるかな。何とか借り物の服を着終わると「だついじょ」の扉を少し開けて顔だけ出した。あったかくてきもちよかったな~。ああ、また、ねむたくなってきた・・・。


「あのー、おふろ、おわりました・・・ふぁふ。」


私の声が聞こえたのか、さっきの人・・・がここまで来てくれた。


「随分早かったな。あれだけ寝てたのに、まだ眠いのか?まあいい、台所はこっちだ。荷物はそれだけだったか?」


私は欠伸をしながら鞄をぎゅっと抱えて頷いた。と・に・・か・・・く・・・。ね・・・む・・・い・・・の。


キッチンとダイニングテーブルがある部屋の隅の何か立ててある奥に、小さなベッドと毛布が置いてあった。ベッドには洗いたてのシーツが敷いてある。


「今日は衝立と箱で台所と君の寝る場所を仕切ってみた。落ち着かないかもしれないが、今晩はこれで我慢してくれ。もし腹が減ったならテーブルにパンとミルクを置いておくから、好きに食べていい。詳しくは明日になってから話そうか。今日は、ひとまずゆっくり休むといい。良い夢を。」

「はい・・・おやすみなさい。」


いいひと、なんだろうなぁ・・・。そういえば、あの人・・・なまえ・・・なんて・・・いうんだったっけ?


「まぁ・・・いっかぁ~。」


と首を傾げながらつぶやくと私はベッドにずるずると這い上がり、横になる。強烈な眠気が襲ってくるが、眠いながらも鞄の中から手探りで小さな丸い物体を出して、枕元に置いた。


「もふさま~・・・・・・」


と心の中でその名前を呼び、すりすりと頬ずりをした。もふ様に頬ずりをすることで自分の身体の中に残っていた僅かな緊張も解け、私はすぐに眠りに落ちた。


 サーラが眠りについてからしばらくした後、もふ様全体が一瞬キラリと輝いた。






       ********************************************************






 ドンドンと軽く扉をたたく音が聞こえた。風呂に入ったか。さすがにすぐに動いて彼女と脱衣所で鉢合わせしても困るので、私は一呼吸おいてから着替えを脱衣所に置きに行った。隣の浴室から水音が聞こえる。お湯は使えているようだが、シャワーはさすがに使っていないか。おいおい使い方も教えないとな。意味もなく脱衣所に長居をすれば、それこそ私が怪しまれるだろう。今のうちに台所に彼女が眠るための場所を作っておこう。


 私は隣の作業場から折り畳み式の簡易ベッドを持ってきた。店の者が作業が長引いて帰れなくなった時や体調の悪い時に休憩できるように常備してある物だ。台所の隅の壁際にベッドを開いてシーツをかけ、畳んである毛布と枕を置いた。これで寝る場所は大丈夫だろう。あとは間仕切りか。長身の私の視線を遮られるほどの高さの衝立は店にも置いていないが、仕方あるまい。今夜は有るもので何とかするしかない。私は書斎と店の目隠し代わりに使っている衝立を持ってきた。あとは足元の方を何かで囲わないとな。そういえば、隣の作業場に何か他に使えそうなものはあったか?思い出しながら隣の作業場へ戻ると、ちょうどいい具合に空の木箱が2つある。これで今夜は妥協しよう。私は空の木箱をベッドの足元から少し離して詰み重ねた。



 「・・・・・・おわりました。」


始めの方は聞き取れなかったが、サーラの控えめな声がしたようだ。私は台所を出ると、サーラが脱衣所の扉から頭だけをぴょこっと出していた。相変わらず眠そうな顔をしているな。


「おう、随分早かったな。あれだけ寝てたのに、まだ眠いのか?ははは、まあいい。台所はこっちだ。荷物は確か・・・それだけだったか?」


サーラが肩掛け鞄を抱えて肯くのを確認すると、私は台所へ彼女を案内した。あれだけ寝たのに、まだ眠たいのか?そんなに寝不足なのだろうか。衝立の前でサーラに話す。


「今日は衝立と空き箱で台所と君の寝る場所を仕切ってみた。落ち着かないかもしれないが、今晩はこれで我慢してくれ。もし腹が減ったならテーブルにパンとミルクを置いておくから、好きに食べていい。詳しいことは明日になってから話そうか。今日は、ひとまずゆっくり休むといい。良い夢を。」

「はい・・・おやすみなさい。」


 サーラはぺこりと頭を下げて挨拶をすると衝立の奥へ入っていった。物音からしてベッドにもぐりこんだようだ。不覚にも既に何度か目撃してしまっているが、若い女性の眠っている所を今日初めて会ったばかりの男性である自分がまじまじと見ていいものではないだろう。私はテーブルにミルクとコップ、水の入った水差しとパン数個を入れた籠を置いた。テーブルに埃除けの布をかけ、台所を出て自分の寝室へ向かおうとした。


 ・・・ん、今何か光ったか?台所を出る直前に視界の隅で何か光ったような気がした。振り返って台所の中を見回したが、特に光を発するような物はなかったはずだ。今日は色々あり過ぎて私も疲れているのかなと思い、そのまま自分の寝室へ向かった。私もお風呂に入って寝るとしよう。

もふ様ちらっと初登場。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ