魔法屋の増築 4
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「いやぁ、有難いねぇ。それはそうと、エルデさん。増築した部分の屋根の色はどうしますか。」
「そうですね、今ある屋根と同じ色にして頂きたいのですが。」
屋根の色について話をしながら、四人で裏口から外へ移動した。
モリスが屋根の色と持ってきた資材を見比べている。魔法屋の屋根は明るい赤茶色の石を薄く重ねて並べたものだ。
「う~ん、この辺かねぇ。」
とモリスは言って、積んである資材の中から大き石の塊を一つ取り出した。確かに、この石の色ならば今の屋根の色と違和感がないだろう。
「そうですね。この石の色でいいと思います。モリスさん、この石をどうするんですか?」
「ここで屋根用の大きさに合わせて切るよ。」
「「えっ?」」
ロイとサーラが驚いている。私は午前中の作業を思い出して成程、と肯いた。
「先程、壁に新しく扉を作った時の要領で石を切っていくんですよね。」
「その通りだ。一つの塊から屋根に合わせて石を切り出していくんだよ。」
私の話に相槌を打ちながら、モリスは屋根をじっと見て切り出す石の大きさと厚さを考えていたようだ。
「まぁ、これ位かねぇ。」
モリスが取り出した石の塊を撫でるようにしながら、屋根用の石を一つ切り出した。
「モリスさん、ちょっといいですか。」
モリスが切り出した石を地面に置き、目を閉じて石に大地の魔法を巡らせる。石の質感や色、大きさも把握した。それでは失礼して、と。
私は両手を広げて石の上に手を翳し、眉間に魔力を集中させた。眉間に集中させた魔力を掌から指先に向け、土魔法として流す。ガタガタガタ・・・という音が止むと、土魔法で複製した屋根用の石が地面の上に並んでいる。
「うわっ!エルデさんってば、どれだけ魔力使ったんですか。」
「いや、魔力は適当に使ってみただけだよ。さすがに、これだけの石で屋根全部は覆いきれないよね。」
「ええとですね。まずは最初に切り出した石の残りを全部屋根用の石に切ってしまってから、屋根に足りない石の分量を見積もりましょうか。いやぁ~魔法屋の皆さんのされることには、私も驚かされてばかりですよ。」
モリスが頭の汗を拭きながら提案してくれた。自分でも薄々感じていたが、やはりここの作業の進め方は普通ではないのだろう。
「石を切るのはモリスさんと私の二人で大丈夫ですか?」
「そうだねぇ、元の石もそこまで大量に持って来ていないから十分だろう。」
「ロイはさっき俺がやった土魔法で石の複製はできそう?」
「そうですね・・・エルデ様程の量は流石に一度で複製できないと思いますが、複製そのものはできると思います。」
モリスは私がロイと話している間にも石をゆっくり切り出している。
「そう。それなら、複製する前に、サーラとロイで今ある石をあちらに積んでもらおうか。十枚ずつ重ねて積んでおいて。」
私が少し離れた所を指してロイとサーラに言った。
「は、はい・・・。」
「畏まりました。」
ロイとサーラが二人で石を運んでいる。
「サーラちゃん、また魔法使ってるの?」
「え?」
サーラは屋根用の石をロイと同じ十枚を一度に運んでいる。石の板が十枚まとまればそれなりに重いはずなのだが、サーラの運んでいる様子は紙束を持っているかのようであり、石の重さを全く感じさせない。
「サーラちゃん、やっぱり重い物を運ぶ時には無意識に魔法を使っているんじゃない?俺の方が重い物を持ってるように見えるんだけど?!」
ロイも膂力はあるのでサーラと同じく石を軽々と運んではいるのだが、魔法を使わずに自力で運ぶロイの方が若干重そうに見えてしまうのが面白い。
「重い物を運ぼうとすると、なぜだか自然とこうなってしまって・・・自分でも、よくわからないんです。」
サーラが石を運びながら、恥ずかしそうに言う。
「まぁ、それでサーラちゃんが異様に疲れたり、困ってないのなら別にそれでいいんじゃない?」
「ええと・・・疲れたり、困ったり・・・は、してない・・・です。」
あれだけの重い物を運ぶために無意識に魔法を使い続け、疲れた様子がないということは、相当サーラちゃんの魔力が多いか、とても少ない魔力で効率よく重い物を運べているかのどちらかなのだろう。とはいえ、俺が見ている限りではサーラちゃんが魔力の使い過ぎで倒れる様子はなさそうだ。今ある分の屋根用の石は全部十枚ずつに分けて積み終わったので、エルデ様の所までサーラちゃんと戻った。
「エルデ様、終わりました。」
「うん、二人共ありがとう。モリスさん、屋根用の石はあとどれ位必要ですか?」
「これの倍ぐらいあれば足りるかと。」
「分かりました。ロイも手伝って。」
「畏まりました。」
「サーラはモリスさんと少し離れて見ているといいよ。」
「それではお言葉に甘えてそうさせて頂きます。サーラ嬢ちゃん、急に足の上に石がどさっと落ちてきたら危ないから、一緒に少し下がっていようか。」
「はい。」
モリスがサーラと一緒にその場から後方へ下がってくれた。これで一気に石を複製しても大丈夫だろう。
「ロイには複製のやり方を教えたことあったっけ?」
「ずっと前に、ここの建物を建てた時に少し伺ったかと思いますが、あの時は私自身が上手く複製ができなくて、結局エルデ様がお一人で複製をされたはずです。」
「それならもう一度、説明しようか。俺もサーラに教える時の練習にもなるし。」
「はい、お願いします。あの時に比べると私も魔法の練度が上がりましたから、今度は私もできると思います。」
私は地面にしゃがむと目の前に屋根用の石を置いた。
「そうだね、それでは始めようか。まずは一枚、屋根用の石を少し離れた所に置いて。」
「地面に直接置いて大丈夫ですか?」
「ああ、魔法で地面と石の違いは読み取れるだろうから大丈夫。それよりも元の材料どうしがあまり近くに無い方がいいかな。」
「この辺で良かったですか?」
「うん、いいね。次は石の周りを土魔法で覆って端から石の状態を少しずつ読み取るんだ。実際に石は切らないけれど、石の塊を土魔法で薄切りにしていく要領で断面の情報を読み取っていく感じと言えば分かる?」
「はい、エルデ様。読み取る時は一方向からのみでいいのですか?」
「さすがロイ、いいところに気付いたね。俺は一方向で大丈夫だけど、複製に慣れないうちは二方向から読み取った方が複製品の完成度が高くなるから、慣れるまでは二方向から読み取った方がいいかもしれない。最初に縦方向に読み取ったのなら、次は横方向に読み取っていって。」
「はい、そうしてみます。」
ロイは地面に置いた石の上で両手を翳し、軽く目を閉じている。複製する元の石の情報を読み取っているのだろう。
「エルデ様、終わりました。」
ロイがふう、とため息をついて翳していた手を下した。
「今読み取った元の石の情報がロイの頭の中で立体としてイメージできている?」
「はい、大丈夫です。」
「実際の材料を複製する時は、イメージした石の情報を土魔法で再現して行くんだ。今ロイは二方向から情報を読み取ったから、再現するときも同じ要領でするといいね。最初は元の材料と同じ物を一つ作ってみようか。慣れないうちは読み取った速度と同じ位でしか再現できないから、ゆっくりでいいよ。」
「はい、わかりました。」
ロイは目を閉じて集中し始めた。しばらくすると、元の石の上にロイの複製した石が落ちる音がした。
「あっ!」
複製した石が重なった勢いで、元の石がも複製した石も割れてしまっている。
「ロイ、済まない。俺の説明不足だ。複製した物が重い場合は今のように元の材料の近くで行わずに、少し離れた所で複製しないと、今のようになる。」
私は割れた石をくっつけた状態で両手に挟み、土魔法で割れた部分を元通りにした。
「材料の石を地面に置いているから、地面に置いた状態をイメージして複製するといいよ。ロイ、もう一回複製だけやってみようか。」
「はい、今度は上手くできるといいのですが。」
ロイの心配をよそに、二度目は元の石も複製した石も割れずに完成することができた。
「一度に多くの材料を複製する時は、沢山ある状態をイメージしながらするといいんだ。けれど、このときに複製物同士が接している所がくっついてしまうことがよくある。一つの複製がある程度の速さで確実にできるようになるまでは、一度に沢山複製するよりも一つずつ複製した方が早くできる。」
「分かりました、それでは私はしばらく一つずつ複製するようにしておきます。」
「うん、俺が見て大丈夫そうだったらロイに声を掛けるから、それまではそのペースで。」
ロイが一つずつ慎重に、かつ徐々に複製の速度を上げていく横で、私は一度にそれなりの量を複製していたのであっという間に屋根に必要な分は確保できそうだった。
「ロイ、最後に二つ同時に複製してみようか。」
私はロイの作業の様子を見て、今回は二つ同時なら大丈夫だろうと判断した。
「はい、わかりました。それでは失礼して・・・。」
ロイが少し私から離れた所で地面に両手を翳す。一個だけの時よりもゆっくりだが、地面の上に二つ同時に土魔法で石が並んで複製されていく。うん、良い感じだ。




