おはようございます?
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もっと急ぎたいのはやまやまだが、いきなり速度を上げるとこちらの様子をうかがっている魔物たちに感づかれてしまう。仕方ないが、今のペースを保ちつつ自分の周囲に張った結界の強度を少しずつ上げることにした。
ふう。これなら何とか耐えられるか。ようやく結界の強化を無事に済ませられたので、索敵をしてみた。
魔狼七~八頭、といったところか。群れかどうかはもう少し様子を見ないと分からないな。
・・・しっかし、本当に、よく寝る娘だ。とりあえず自力で座ってもらえるように起こすとするか。
「おい、起きろ。」
大声を出すと魔狼を刺激してしまうため、声を落としてサーラに呼びかける。やはり、起きないか。
「おい、そろそろ起きてくれ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「むぅー・・・。」
私はため息を一つつくとサーラを普通に起こすことを諦め、左手でサーラの頬をむにーっと引っ張った。くそぅ、こうなったら目が覚めるまで、ずっと引っ張っててやる。
どんだけ起きないんだよ、全く。相当むにーっっと引っ張っているはずなんだが。
どれ位の時間がたったのだろうか。
「・・・・・・・・・ん~~~?」
ようやくとろーんとした表情でサーラが目を開く。
「はおー、ほおほお、へほ、ははひへ、もらへはへんは?」
「は?」
「はおー、ひはひんへふぶぁ・・・」
「何のことだ?」
と私に言われてサーラは私の顔をじとーっと見た。
・・・ええとだな。それはー・・・仕方がないだろう。ファルドの森の中で大声を出したら、魔物に襲って下さいと言っているようなもんだ。
「ああ、すまんすまん。痛かったか?君を起こしてもなかなか起きなかったから、目を覚ますまで頬を引っ張り続けていた。大声を出して君を起こせる状況じゃなかったんだ。」
私は慌ててサーラの顔から手を放した。サーラの視線から多少こちらを責めるような成分が抜けたのは気のせいか。
「状況が変わってな。少しの間、起きていて欲しいんだ。」
「お・・・きて?」
「ああ、そうだ。とりあえず自力でティスに座って、手綱を持っていて欲しい。手綱は・・・そうだな、こうやって両手で持っていてくれるだけでいい。」
「こう・・・ですか?」
「ああ。私が動いて何をしようが、絶対にそのまま手綱は握って離さないようにしてくれ。」
「何か・・・するんですか?」
「ああ。私のミスで、ちょっと魔狼の群れに絡まれそうなんだ。ファルドの森を出る前にこいつらを引き離したい。」
「んー、まろう?」
「もしかして、魔狼も知らないか。」
「・・・はい。」
「狼は分かるか?」
狼はどうやら分かるようで、サーラはこくんと肯いた。
「狼は分かるんだな。よかった。魔狼というのは、赤い眼をした狼のような獣だ。赤い眼をしているのは魔獣だからだ。奴らは逃げようとする動物を追いかけてきて襲うんだ。このまま私たちを追って来られたら我々も襲われるし、森の外まで追いかけて来たら非常にまずい。普通の人々にとっては、魔獣は森の中だけに棲んでいる生き物なんだ。森の外に出て来たのを見たら、人々はパニックになって逃げ惑うだろう。そうなったらもう、魔獣に襲ってくれと言っているようなもんだ。」
「そうですか・・・。わかりました。」
私はサーラがちゃんと手綱を持っていることを確認すると、左手でサーラの腰を抱えながら右後方に振り返った。
どんだけサーラちゃんは頬をむにーっとされていたんでしょうねぇ(笑)。