表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/202

ひょんなことから新商品

登録ありがとうございます。

 「いいよ。ミリル、話を続けて。」


私はミリルに話を続けるよう促した。


「はい、それではこちらのお茶菓子の説明をさせて頂きます。こちらは昨日サーラさんと一緒に王都へ行った際に買い求めた揚げ菓子です。最近王都で流行りの店だそうで、お店はマシューの店のマーサから教えてもらいました。甘い物やそうでないもの、硬い物や柔らかい物と色々な食感があります。試食して美味しかったので、お土産も兼ねたお茶菓子として購入して参りました。皆さんどうぞお召し上がり下さい。」


ミリルはテーブルの中央に数種類の揚げ菓子を持った皿を置いた。


「ああ、ありがとう。それでは早速頂くよ。」

「これ、昨日の・・・」

「ええ、サーラさんも昨日一緒に頂いたものですわ。」

「お、これはチーズか?甘くなくていいな。これなら俺も食べられる。」

「お、こっちは胡椒が練り込んであるのか。酒のつまみに欲しいな。」


皆が口々に感想を言い終わった後で、私はミリルに尋ねた。


「ミリル、これはどこの店のものかな?」

「はい、ジルさんのお店の近くにある揚げ菓子屋で、オーランという若い男が営んでおります。最近商いを始めたそうで、一人で店を切り盛りしているとのことでした。」

「うん、この甘くないのはいいね。日持ちはどれくらいするの?」

「ええ、揚げ菓子なので残念ながらこちらは買った日を入れて三日位しか日持ちがしないそうです。店を一人で営んでいるため、残念ながらこちらまでの配達は無理だと伺っております。」


「そう、この甘くないのは時々欲しくなるね。王都へ誰かが行ったときにお土産で買ってもらって来ればいいか。」

「甘くない揚げ菓子も珍しいとは思いますが、私はこちらの方がお勧めです。是非こちらも皆様に食べて頂きたいのですが。」


ミリルが先程とは別の皿に盛った揚げ菓子を出してきた。大人の親指よりも太い感じだ。


「これは?」

「こちらは商品を沢山買ってくれたお礼として店主のオーランから頂いた物です。『売り物ではないから、帰る途中にお腹が減ったら遠慮無く食べるといいよ。』と言って帰る私達に持たせてくれました。自分で食べるため日持ちがするよう、店で扱う商品よりも敢えて硬めに揚げてあると申しておりました。今は皆様にお出しするため切り分けてありますが、元々は一人で食べる物として、片端に紙を巻いて手に持って齧るような長い物でございます。」


ミリルが説明しながら、切る前の菓子の長さを両手で示した。大体、成人男性の片手を目一杯広げた位か。確かにこの大きさはお茶菓子には大きいな。


「うん、歯ごたえがあっていいね。確かに、これなら小腹も満たせそうだ。」

「おお、確かに硬いな。」


皆の食べる音がポリポリと書斎に響いている。


「歯ごたえがあって美味しいのですが、そのままの大きさですとお茶菓子として大きすぎると思います。こちらのように切り分けようとすると、硬くて力もかなり要りますし、切り方によっては割れたりするので切るのも大変でした。実際にこちらに盛ってあるように切っては見たものの、手でつまんで食べるのには少々太くて食べにくいのではないかと思います。そこで私の個人的な興味から、もっと細くて短い物は出来ないのかと帰り際に店主のオーランに聞いてみました。」


ミリルが男性の親指大の長さに切り分けてくれているが、確かにこの太さでこの硬さでは手でつまんで食べにくいな。


「うん、そうだね。仕事の合間につまむには、もう少し細くて短い方が食べやすいね。来客用に出すにしても、新し物好きにはいいかもしれないけど、食べる時の音が気になる人がいるかもしれない。」

「うちのお茶菓子限定でもいいから俺は欲しいな。」

「それで、店主のオーランは何と?」


 珍しく甘い物が苦手なロイの食いつきがいい。仕事中に自分もつまめるお茶菓子が欲しかったのかな。


「はい、定期的に購入して頂けるのならば新商品として検討してもよいとの返事でした。」

「なんとっ!エルデさん、是非、これは買い置きのお茶菓子に加えましょう。」

「新商品として検討してもらえる場合は、具体的な太さや長さは等はこちらの希望通りにしてもらえるのだろうか。」

「その辺りは交渉次第という感じでしょうか。それから、オーランが魔法屋用に新しく商品を作るのは良いが、同じ物を自分の店でも販売してよいのかどうかを気にしておりました。」

「そうだね。うちはお茶菓子で儲けるつもりはないし、欲しい時に優先的に購入できれば問題ないかな。うちも商業ギルドには加入しているんだから、他の店に変なことはしないよ。他でも売れそうな物が出来上がったら、魔法屋専用にしないで販売してもいいと思う。」


私の返答を聞いてミリルが嬉しそうに微笑んだ。


「それはオーランにとってもいい話になりますね。エルデさん、せっかくなので、オーランに作って欲しい長さと太さ、それに味の種類まで、今ここでまとめてしまってもよろしいですか?」

「いいよ。今日はお店の仕事より打ち合わせを優先しよう。試作品はオーランが味見をする以外は全て魔法屋に納入してもらうという条件で、試作に使う材料はうちが用意するか、費用をうちが持つという条件でオーランに話してもらおうか。」

「先程も申し上げましたが、オーランはここまでの配達は無理と申しておりました。それに、この店もわざわざそのためだけにオーランの店に行くだけの人手はありません。エルデさん、試作品の受け取りや材料の仕入れと支払いはどうされますか?」


 しばらく間を沈黙が支配した。私は解決できる手立てがないか考え―――あれならいけるか?と一つの方法を思い出した。


「そうだね。商業ギルドに一枚噛んでもらうかな。」


サーラはともかく、珍しくミリルとロイも不思議そうな顔をしている。


「と、言いますと?」

「オーランの店も、うちの店も人手がないだろう。」

「「はい。」」

「そういう店の経営者にとってギルドにお金を払う必要はあるんだけど、商業ギルドに有難い制度があるんだ。」

「それは、どういうことですか?」

「エルデさん、私にも分かりやすく説明して下さい。」


ここまで話して理解できなかったロイとミリルから質問を受けた。まぁ実際にこの制度を使っている店は少ないだろうから、仕方がないだろう。


「この制度は一度商業ギルドで新商品開発のための契約を結んでおくと、お互いの店に足りないものをギルドが有料で代わりにやってくれるというものだ。確かに、この制度は便利だけど店主同士が一緒に商業ギルドに出向いて契約を結ばなければならないのが難点でね。契約は魔法が絡むから制約も多い。」

「エルデさん、契約絡みの制約は厳しいのですか。」

「ああ。同じ目的で新たに人を雇うよりも、制約付きでギルドが介入する分、契約した方が安く済むようになっていたはずだ。安く済むとはいえ、店主や経営者といった連中は他人の作った決まりを守るよりも、自分に都合のいいように決めたルールで物事を進めたがるからね。ある程度資金に余裕のある所は契約に縛られるこの制度よりも、お金で解決する手段を選ぶ場合が圧倒的に多いだろう。」


ロイが思い当たる節があったのか苦笑している。無視してこのまま話を進めよう。


「例えば今回の場合。うちはオーランの店まで毎回試作品を受け取りに行く人、オーランもうちの店まで配達に行く人がいない。それから、試作品を作るための材料と費用をこちら持ちにするという条件についてだけど―――オーランも試作のための材料や費用は欲しいけど、材料や仕入先を我々に教えたくないかもしれない。」

「ああ、確かにそうですね。材料や購入する量でである程度配合の見当が付きますからね。可能な限り材料や仕入先は秘匿しておきたいでしょう。」


ロイは納得したようだ。


「ミリルは大丈夫かな?サーラには分からないことだらけかもしれないけど、とりあえず聞いておいて。」

「「はい。」」


ミリルとサーラの二人が頷いてくれたので、話を進めるとするか。


「オーランの所はどういう条件を希望するか分からないから、うちの店について話そうか。」

「ええ。お願いします。」

「まず、試作品をオーランの店からここまで配達してもらえる。」

「おおっ、それだけでも十分有難い。」

「そうですね。」


「それから試作に使う材料についてだけれど、うちが支払いをするという条件でオーランが指定したものを、こちらがその詳細を知ることなくオーランの所へ配達してくれる。」

「それは便利ですね。試作品の材料を他の商品へ流用されてしまう恐れはないんですか?」

「その辺は、契約時に要交渉だな。オーランがどこまで他の通常商品を製作するためのものと共用しているかにもよる。今回だと揚げ油とか調味料がその対象になるのかな。その辺りは彼に手持ちの材料から試作品を作るのに使った分を申告してもらい、その分の費用を請求してもらうという方法もある。」

「いちいち使った量を申告するのは面倒臭いですわね。最近商いを一人で始めたとなると、しっかりとした帳簿をつけていない可能性もありますわ。」

「そうだね。私自身は最初にある程度まとまった量の材料を彼に渡しておいて、新商品の開発が終了した時点で残った材料については、うちが今後購入する新商品専用の材料とするとか、若干安い価格で残りの材料をオーランに譲渡する代わりにうちが購入する時は優先的に商品を供給してもらう、とかという文言でもつけておこうかな、と思っているよ。今は契約前だから問題ないけれど、契約に関する詳しい話は商業ギルド内で行う決まりだ。契約を破るとギルドにすぐ分かるようになっているからね。」

「そうなんですか・・・。」

「意外と厳しい制度なんですね。」

「新しい商品ができると新しいお金の流れも生まれるからね。そこは厳重にしておかないと商いの元締めを名乗るギルドとしても立場がないだろう。」

次回も今回の内容が少し続きますが、次回から別の話も始まります。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ