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天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ


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202/202

アリーの魔法教室 3

閲覧ありがとうございます。

大幅に遅刻しましたが、今日中にお届けできて良かったです。

 「やったぁっ!」


最初に自分が選ばれたことに、ゾエは思わず両手を握り締めて喜んだ。

 

「ゾエさん、立って下さい。」

「あ、ああ。」


ゾエはアリーに言われて、その場で立ち上がった。


「皆さんにも見えやすいように、少し真ん中の方へ来ましょうか。」

「こ・・・ここら辺でいいか?」

「ええ。ゾエさん、私の方を向いて向かい合わせに立ってくれますか?」


アリーはゾエの反対側に立つと、自分の方を向くよう指示をした。


「ゾエさん、私に向かって掌を見せて下さい。」

「こうか?」


ゾエは自分の胸の前で掌をアリーに見えるように向けた。


「私の言い方が悪かったですね。ゾエさん、掌を上に向けて手から肘が水平になるようにして下さい。」

「これでいいか?」

「はい、大丈夫です。」


ゾエがアリーに指示された通りの姿勢を取ると、アリーは満足気に頷いた。


「これから実際にゾエさんの手に魔力を流す前に、いつも学校でやっているやり方を皆さんにお見せしますね。あくまでも今はやり方を見せるだけで、魔力は流しませんよ。」


アリーはゾエの両手の指先をそっと握り締めた。


「皆さん、見えましたか?」

「「はい。」」

「「「ああ。」」」

「ああ~懐かしいわぁ~。」

「見えましたわ。」


アリーは皆それぞれの反応を確認すると、ゾエの指先から手を放した。


「学校では教師が生徒の両手を軽く握り、教師が自分の魔力を指先から生徒の指先に少しずつ流していきます。」

「アリー、それは教師が生徒の両手に魔力を同時に流すと言うことか?」


エルデが立ち上がってアリーに質問した。


「はい。両手同時に、魔力を同じ位ずつ流しています。」

「ありがとう。そうか、両手同時に流すのか・・・。」


エルデはアリーに礼を言うと、独り言をぼそぼそ呟きながら座った。


「今回は私も初めての試みとなりますので、ゾエさんの右手だけに私の魔力を流していきたいと思います。ゾエさんはこのままの姿勢のままでいて下さいね。」

「ああ。」


アリーはそう言うと、ゾエの右手の指先を両手で優しく包み込んだ。


「それでは、ゾエさんの手に魔力を流しますね。」


アリーは目を閉じてじっと集中すると、自分の魔力をゾエの右手に流し始めた。ゾエは肘から先を水平に保ったまま、アリーの様子を瞬きもせずにじっと見守った。皆の視線もゾエとアリーの手に集まっていた。


 「・・・アリー先生。分かりません。」


しばらくしてからゾエがアリーに向かって答えた。


「そうですか。流した魔力が少なかったのかもしれません。次は、もう少し魔力を多めに流してみますね。」


アリーは自分の両手からゾエの右手に、先程よりも多めに魔力を流し始めた。しばらく魔力を流してからアリーはゾエに問いかけた。


「ゾエさん、どうですか?」

「う~ん。正直、ちっとも分かんねぇなぁ。」

「ゾエ、口調。」


フェイがゾエに注意をした。ゾエは自分の手の感覚の違いを把握しようと集中したことで、口調が戻ってしまったようだ。


「あっ、さっきとの違いはよく分かりませんでした。」


フェイに指摘されて口調をただしたゾエがアリーに答えた。


「そうですか。やはり、学校の生徒と同じようにやっても同じようにはならないのですね。」

「ちょっといいか、アリー。学校の生徒だと、どんな風になるんだ?」


学校の生徒とは同じようにならない、という言葉に反応したエルデがアリーに質問した。


「学校の生徒では両手に魔力を流しますので、両手が暖かいとか、指先がムズムズするとかいう生徒が多いですね。」

「成程。魔力が動く感覚かな?」

「恐らくそうだと思います。」

「ありがとう。アリー、続けてくれ。」


エルデはアリーの答えに満足すると、腕を組んでアリーの授業を見守り始めた。


「それではゾエさんの右手に、もう少しだけ魔力を強めに流してみましょう。」


アリーは再び両手でゾエの右手の指先を包み込むと、ゾエの指先に自分の魔力を流し始めた。


「んんっ?」


ゾエはアリーの両手を振り払うと、右手をぶらぶらと振った。


「ゾエさん、どうかしましたか?」

「ああ。何か、指先に変な感じがしたような気がする。」

「違和感があるような感じですか?」

「そうだな。」

「恐らく、それが魔力を感じたと言うことだと思います。試しに、両手でやってみましょうか。」

「ああ、頼む。」


アリーは学校の生徒にするように、ゾエの両手の指先をそっと握った。


「ゾエさん、先程と同じ位の強さで魔力を流し始めますよ。」


アリーはゾエの両手に魔力を流し始めた。


「おおっ?何か指先がジンジンしたぞ。」

「ゾエさん、両方の手で感じましたか?」

「ああ、同じように感じた。」

「それでは、今の感覚が私の手から流した魔力をゾエさんが感じたということです。」

「俺は魔力検査で『魔力が無い』と言われたのに?アリー先生、なんで『魔法の才が無い』と言われた俺が魔力を感じられるんだ?」

「えっ?!わ、私に言われても・・・。」


急にゾエから質問されたアリーは困惑した。学校でそんな質問をされたことは無いからだろう。


 「そこは私から説明しよう。研究所では、生きている者は全て魔力を持っていると考えられている。しかしながら、ゾエのように魔力検査で『魔力が無い』『魔法の才が無い』と判別されてしまう人がいるんだ。」

「そうなのか?」


エルデの話にゾエは驚いた。


「ああ。全ての人は魔力を持っているはずなのに、残念ながら魔力検査で『魔力が無い』『魔法の才が無い』と判定されてしまう人がいる。それがなぜなのかは研究所でも、まだ解明されていないんだ。」

「研究所って、王城の中で凄い魔法の才能がある人達が魔法の研究をしてる所だろう?」

「うん。まあ、有体に言えばそうだね。」

「研究所の人達でも分からない事なんてあるのか?」

「あるに決まってるさ。分からないことだらけだから、それを解明しようと研究してるんだよ。」

「へえぇ~。研究所の人って何でも魔法でパパッと解決できる人達の集まりだと思ってた。」

「実際、そうでありたいとは思ってるだろうけどね。さて、ゾエの体験はこれ位でいいのかな?」

「そうですね。次はフェイさんにしましょうか。ゾエさん、席に戻って下さいね。」

「あ、ああ。」


ゾエはアリーに言われた通り、素直に席に戻った。


 「フェイさん、前へ出てきてください。」

「はい。」


今度はフェイが席を立って皆の前に出て来た。


「ゾエさんと同じやり方で進めていきますね。まずは右手だけに魔力を流していきますね。」


アリーはフェイの右手の指先を両手で包み込むと、魔力を流し始めた。


「ん?」


フェイは何か感じたようだ。


「フェイさん、どうしましたか?」

「何か指先に変な感じがした。」

「もしかしたら、ゾエさんより魔力を感じ取りやすいのかもしれませんね。ゾエさんの時は同じ強さで魔力を流していましたが、少しずつ魔力を流す量を増やしていってみましょう。フェイさんは何か感じたら言って下さいね。」


アリーはフェイの右手に魔力を少しずつ強めながら流していく。


「あっ!」


フェイが目を見開いてアリーの顔を見た。


「フェイさん、どんな感じがしていますか?」

「指先から手首の方に向かって、何かがじわじわと来ている。」

「それはフェイさんが、私の流している魔力を感じ取れたと言うことですよ。」

「私でも魔力を感じることが出来るのか・・・。」


フェイは感心して自分の右手をしげしげと見つめた。


「フェイさんも、両手に魔力を流してみましょうか。」

「ああ、お願いします。」


アリーはフェイの両手を取ると、フェイの両手の指先に自分の魔力を少しずつ流していった。


「ああ、分かる!両手でも分かるよ!」

「フェイさんも両手で魔力を感じ取ることが出来たようですね。良かったです。フェイさんも席に戻りましょうか。」


アリーは胸の前で拍手をしながらアリーに着席するよう促した。


 「それでは、最後はサーラさんの番ですね。サーラさん、前へ出てきてくださいね。」

「あ、はい。」


サーラはおずおずと皆の前へ出て来た。


「ゾエさんやフェイさんがやっていたように、掌を上に向けて、肘から掌をまっすぐになるようにして下さいね。」

「は、はいっ。」


サーラはアリーに言われた通りの姿勢をしたが、先の二人とは何かが違うようだった。


「う~ん。サーラさん、もしかして緊張してますか?一旦、肩の力を抜きましょうか。身体に力が入っていると魔力を感じ取りにくくなってしまいますからね。」


アリーはサーラの緊張を解そうと、両手でサーラの肩から肘の間をポンポンと軽く叩いた。サーラの肩の力が少し抜けたのがアリーの手に伝わってきた。


「うん、これで良し、と。それではサーラさんも右手に魔力を流しますね。」


アリーはサーラの右手の指先を両手で包み込むと、自分の魔力をサーラの指先へ流そうとしたが―――


「ええっ?!」


アリーの叫び声と同時に見えたのは、サーラの向かい側から少し離れた所で尻餅をついているアリーの姿だった。


「あいたたた・・・。」


自力で立ち上がったアリーは右手で腰の辺りを擦っていた。尻餅をついたときに打ったのだろう。


「アリー先生、大丈夫ですか?」


サーラはアリーに近付くと、アリーが擦っている所に手を翳した。そんなサーラを見て、ローズが目を見開いて呟いた。


「治癒魔法・・・。」

「サーラちゃんって治癒魔法使えるのか?」

「へ?」


ローズの言葉に驚いたロイがサーラに聞いたが、サーラはが何をしたのか全く分かっていないようだった。


 その後色々と検証した結果、サーラは治癒魔法が使えることが明らかになった。エルデが認めた者のみという条件で、サーラが魔法屋の隣に増築した部屋で治癒魔法を扱う治療師の仕事をひっそりと始めることになったのは、また別の話である。

やっと終わった~!ということで、この話は本エピソードで終わりです。連載200回記念閑話回のつもりで書き始めたのに1回で終わらず3回も続くことになってしまい、閑話回でなくなってしまった気がします。それでも、ようやく本作タイトルの半分を回収できて、ちょっと嬉しい筆者です。残りのタイトル回収は物語の終盤になると思います。

なお、魔力検査の「魔力がある」「魔法の才がある」ということについてはep.105~ep.106辺りを参照下さい。次はこの話の考察回になりそうな感じがしますが、これから書くので別物が出て来るかもしれません。その辺りも含めて楽しみにして頂ければ幸いです。

寒さがだいぶ和らいできましたが、まだまだ皆様ご自愛下さいませ。

今回も最後までありがとうございました。

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