アリーの魔法教室 2
閲覧ありがとうございます。
結局更新1回分お待たせしてしまいました。
連載200回記念エピソードの続きです。キリの良い所で投稿します。
「うっ。」
まさか自分がエルデに解説を求められるとは思っていなかったアリーは、言葉に詰まった。
―――ゾエならサーラさんの後って言って誤魔化せると思ったのに、まさか依頼主から解説して欲しいと言われてしまうとは。
「あの~エルデさん。普段学校では、この辺は説明しないのですが。」
アリーは冷や汗が背中を流れ落ちるのを感じながらエルデに言った。
「ん、そうなのか?」
エルデはアリーの言葉に意外な反応をした。
「はい。学校の生徒は、魔力検査で魔法の才があると言われて来る者がほとんどです。」
「まあ、そうだろうね。」
エルデはアリーの話に頷いた。
「このため、学校では生徒が魔力や魔法について全く分からない、魔法を使うところを見たことが無いという前提で授業を行います。ですので、魔法については理論を説明するよりも教師が実際に魔法を使うところを見せて『そういうもの』だと教える場合が多いのです。」
「ふむ、そうか。ミリル、学校の魔法の授業ってそうなのか?」
エルデは魔法屋で唯一学校に通ったことのあるミリルに尋ねた。
「エルデさん、何で私に聞くんですか?今日の主役は私ではなくサーラさんですよね?」
ミリルは急に自分へ話を振ってきたエルデに抗議した。今日のミリルはサーラと同じように一生徒の立場ではあるが、あくまでもミリル自身は見学者という立場で参加しているつもりだったのだ。
「魔法を習うのはサーラだが、魔法屋で学校に通っていたのはミリルしかいないからね。ミリルが通っていた時はどうだったのか知りたいと思って聞いてみた。」
「まあ、エルデさんが私に質問した理由は納得しました。アリーさん、今の内容は学校に入ったばかりの頃に習うことですか?」
ミリルはエルデにされた質問をアリーに質問し直すという形でやり過ごした。
「ミリルさんの言う通り、学校に入ってすぐに教える内容ですね。」
「アリーさん、ありがとうございます。エルデさん、そんな急に聞かれて思い出せるようなものではありませんわ。学校に入ったばかりということは、6年以上前の話になりますもの。」
ミリルの返答にエルデは納得したようだった。
「そうか。この日のために、ミリルには学校でどんなことを学んだか思い出してもらうよう、事前に私も伝えておくべきだったな。私もミリルが覚えていたらいいな、という軽い気持ちで質問したから気にしないでくれ。アリー、話の腰を折ってしまって悪かった。授業を続けてくれるかい?」
「は、はい。エルデさんも気にしないで下さいね。」
アリーは呼吸を整えて気を落ち着かせると、授業を再開した。
「今、皆さんに大きく息を吸ったり吐いたりしてもらったのは、私達の身の回りには、身体を出入りする『何か』があると言うことを分かってもらうためです。」
「アリーせんせ~。食べ物じゃだめなのぉ~?」
ゾエが生徒になりきってアリーに質問した。
「ゾエさん、確かに食べ物は体に入ってから出て行きますね。食べ物は目に見える物ですが、ここで皆さんに理解して欲しいのは、目に見えない『何か』が身体を出たり入ったりしている、ということを感覚として掴んで欲しいという目的でやっていますね。」
アリーは先生らしく、ゾエに答えた。
「ふ~ん、そうなんだ。」
「ゾエ。変な質問をしてサーラさんの邪魔しちゃまずいって。」
アリーの答えに納得しているゾエに向かって、隣に座っているフェイがゾエの脇腹を肘で突いた。
「いやいや、光の風の皆さんも魔法屋の皆も滅多にない機会だ。色々な質問が出た方が、我々やサーラの学びになるだろうから、皆も遠慮なく質問して欲しい。先生役のアリーは少々大変になるかもしれないが、よろしく頼む。」
「は、はいぃぃ~分かりましたぁぁ~。」
―――ああぁ~難易度跳ね上がったぁぁぁ~
アリーは微笑みを浮かべながら裏返った声でエルデに了承の返事をしたが、心の中で絶叫していた。
「それなら、もう一つ聞いていいか?」
「ゾエさん、どうぞ。」
「寒い所に行けば、息を吐いたときに白く見えるだろ?それはいいのか?」
「それは・・・生徒の誰かに指摘されたら、王都は寒くなっても息が白く見えることは滅多にないですから、目に見えない物として息を例に挙げたと答えますね。」
「成程な。アリー、分かったよ。」
ゾエはアリーの説明に納得して頷いた。
「それでは、次は皆さんの身体にある魔力を感じてみましょう。」
アリーは気を取り直すと、いつも学校で教えている手順通り授業を再開した。
「アリー。私は魔力検査で『魔法の才は無い』と言われたが。」
ゾエが右手を小さく挙げて、アリーに質問した。
「アリー、私もだ。ゾエと私にやる意味はあるのか?」
フェイも魔力検査で『魔法の才は無い』と判定されたので、アリーに聞いた。
「えっと・・・。」
アリーはゾエとフェイの二人に『魔力の才が無い』と言われて困惑した。普段アリーが授業を行っているのは『魔法の才がある』と魔力検査で認められた者達だけであるからだ。
「アリー。魔力はみんな持っているはずだから、学校でいつも教えているように進めてくれ。ゾエとフェイも、とりあえずこのままアリーの話を聞いてくれるかな?」
「ああ。よく分かんないが、エルデさんがそう言うならそうしよう。」
「分かりました。アリー、邪魔してごめんね。」
エルデの言葉にゾエとフェイも頷き、フェイがアリーに授業を続けるよう促した。
「それでは皆さん、椅子に座ったままでいいので両手を擦り合わせてみましょうか。こんな感じでやって下さい。」
アリーは自分の胸の前に両手を出すと、皆の前で両手の掌を擦り始めた。アリーの様子を見て、皆も両手を擦り始めた。アリーはしばらく自分の両手を擦りながら、皆が両手を擦り合わせる様子を見守った。
「サーラさん、何か変わったことはありましたか?」
アリーはサーラに問いかけた。
「手があたたかくなりました。」
「そうですね。寒い時にする人も多いと思いますが、手を擦り合わせると温かくなりますね。皆さん、手を擦るのは止めていいですよ。」
アリーは皆に手を擦るのを止めさせた。
「アリー先生、手が痒いです。」
「私は指先がジンジンする。」
「そうですね。皆さんの手に、いつもと違う感じがするのが分かれば大丈夫です。それが、魔力を感じ取る初めの一歩です。」
「そしたら俺っ、いや、私でも魔力を感じられるのか?」
ゾエがアリーに前のめりになって尋ねた。ゾエの言葉にフェイも心なしか期待に満ちた表情をしていた。
「ゾエ。あなたはパーティーメンバーだから正直に言うけど、私はこれからすることを魔力検査で『魔法の才が無い』と言われた人にはやったことない。あなた達が魔力を感じられるかどうか、私には分からないわ。」
アリーはゾエとフェイに向かって真摯に答えた。
「いや、折角だから試してみて欲しい。私も非常に興味がある。」
後ろからエルデがアリーに言った。
「エルデさん!今日はサーラさんに魔法を教えるんじゃなかったんですか?」
「依頼主の私が『良い』と言っているんだ。是非ゾエとフェイに魔力が感じられるかどうかやってみてくれたまえ。」
「でもっ!」
アリーは自分なりにサーラに魔法を教えるという任務を果たそうとしているのだろう。
「アリー。依頼料はきちんと払う。私達は魔力検査で『魔法の才が無い』と言われた人達と知り合う機会が少ないんだ。是非、私達の目の前でゾエとフェイにも魔力が感じられるか試してみてくれ。」
「わ、分かりました。」
「アリーがいつも学校でやっている時と同じようにしてくれると参考になる。」
―――エルデさん、依頼料は払うと言ったわ!やればいいのよね。分かったわ。こうなったら、結果がどうであれ、やってやろうじゃないの!
アリーはエルデの発言に戸惑ったが、自分の心の中で気持ちを奮い立たせるとゾエとフェイに話し掛けた。
「それでは、エルデさんのご要望もありましたので、ゾエとフェイから試してみたいと思います。先にやりたいのはどち―――」
「はいはいはいっ!アリーせんせ~、やりたいですっ!」
アリーが言い終わる前にゾエが元気よく手を挙げてアリーにアピールした。
「分かりました、それではゾエさんから始めましょうか。」
か、閑話回のはずだったのに今回で終わらなかった・・・(汗)。全員が胸の前で両手を擦り合わせている光景は、傍から見ると「これ何の宗教団体・・・?」と思えそうですね。書いてて楽しかったですが、ゾエが途中から小学生男子みたいなリアクションになってきたのは気のせいかしら。
3月末までリアル多忙が確定しており、更新が不安定になるかもしれません。頑張って書き続けますのでお待ち頂けると幸いです。更新予定がずれそうな場合は活動報告でお知らせします。
今回も最後までありがとうございました。




