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天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ
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始まりは森の中で

 いつものように魔法に使う材料をファルドの森へ採取しに行った帰りだった。ここファルドの森は用の無い者は立ち入らないところである。なぜなら森は非常に深く、夜になると野生生物だけではなく魔物が徘徊するのだ。腕に覚えの無い者はこの森から歓迎されない。


 私は休憩を取ろうとして森の中にある少し開けた場所を目指す。そこは私だけのお気に入りの場所。深いファルドの森のなかでも珍しく灌木が少なく、水場も近くにあり見通しがよくて比較的安全な場所だ。あと少しで休めると思って気が緩んだのか、私の視界に異様なものが入った。


 オークの木の根元に何かある。


あれは幻覚なのか?今までファルドの森で幻覚など一度も見たことのなかった私は愛用している濃紺のローブのフードを上げ、目をごしごしとこすった。そして、もう一度オークの根元を見た。


あれは・・・人間? まさか。ここはファルドの森だぞ。私ですら足手まといになるからと、供をつけずに来ているのに。もしかして、何かに襲われて倒れているのか?

私はオークの木から少し離れたところで愛馬のティスから降り、手綱を手近な木の枝に結びつけた。「大丈夫だよ。」とティスのたてがみの辺りををぽんぽんと叩いてやる。万が一を考え、ティスと自分自身それぞれに結界を張った。これで私もティスも怪我はしないだろう。


周囲を魔法で軽く索敵したが、こちらに敵意を持つ者の気配はない。それでも私は慎重にオークの木へ近付いて行った。


 やはり、人間が倒れているようだ。簡素な茶色いローブの隙間から、銀色で緩やかにウェーブのかかった髪の毛が見える。私は顔が見える距離まで足を進めた。・・・少女か?私は慌てて少女に駆け寄り、彼女の顔に手をかざして息を確かめた。息はあるようだ。目立つところに襲われた形跡や怪我もない。どうやら無事のようだ。


「もしもし、お嬢さん。」


声をかけてみたが、返事はない。もう一度、声を大きくして少女に声をかけてみる。


「大丈夫ですか。」


やはり返事は無いようだ。無防備な女性の身体にいきなり触るのは抵抗があるが、止むを得ん。念のため反撃を警戒して自分の結界を強化してから少女の肩を叩いてみた。少女の身体が少し動いたが、それだけのようだ。彼女に反撃の魔法や身体に触ると触った相手を攻撃する武器は仕込まれていないようだ。やれやれ。それでも自分の結界は張ったままにしておく。

彼女の身体が少し動いたので、ローブのフードがずれて少女の顔が見えた。目は閉じられており、呼吸に合わせて上半身が動くのが分かる。睫毛、長いな。なんてことはさておき。


「お嬢さん、大丈夫ですか。」


声をかけながらもう一度肩を叩いてみた。目は変わらず閉じたままだが少女の口角が一瞬上がり、にまっとした。まさか。


こんな所で寝てやがる。何て奴だ。命は惜しくないのか。


 目の前の少女に思うことは色々あったが、ふと空を見上げると真上にあった太陽が幾分か動いていた。まずい。そろそろ移動を始めないと、街へ帰り着く前に日が暮れてしまう。私は、彼女が女性であることを無視して叩き起こすことを決意した。


「おい、起きろ!何でこんな危険なところで寝ているんだ!早く起きないと魔物に喰われるぞ。」


自分も腕は立つとはいえ、こんな所で単独で野営をするほど愚かではない。ましてや無防備な初対面の女性を守りながらなんて、もってのほかだ。何度も声をかけながら、彼女の身体をバンバン叩いた。


 相当しつこく身体を叩きながら、声をかけ始めてどれくらいたったのだろう。

ようやく、彼女は寝返りを打つとゆっくり薄目を開けた。


「お、おはようございま・・・す?」

主人公、ようやくお目覚めです。

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