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3日勇者  作者: 楠木あいら
day1
6/52

1つ 屋根の下

 日が暮れてきた。


「栞音、夜はどうするんだ?」


 観光スケジュールをしきる幼なじみに聞いてみると、なぜかにんまりと笑みを浮かべた。


「たけちゃんに、何を作ってもらおうかな」

「栞音、まずは答えてくれ」

「ああ、ごめん。もちろん、横浜で民泊するよ」

「民泊」


 民泊とはホテルや民宿ではなく、一般の民家に宿泊する所で、一時期テレビのニュースで良く流れていた。

 俺のイメージは海外から来た人がお得に利用する宿泊施設で『そんなのがあるんだ』と聞き流していた。

 それが今晩の宿になるとは。


「1階の部屋を借りれたから、ママも安全だし」

「あんぜん、あんぜん」

「民泊だから自炊でしょ。たけちゃんの美味しいご飯が食べられると思うとヨダレが」


 ヨダレを拭くフリをする栞音にママさんが真似をしながら、栞音に近づくこうとするが、チャイルドシートに座っているため腕を伸ばすしかできなかった。それを見た栞音の方が密着する。


「たけはる のご飯、そんなに美味しいの?」

「美味しい、美味しい。物凄く美味しいよ」


 料理の腕は悪くはないと思う。


 両親の帰りが遅く、生きるために自分でメシを作っていたせいか、料理スキルは高くなっていた。

 栞音の両親も遅くなる事が多く、作るのではなく、俺の家に食べに来る。インターホンを鳴らして『たけちゃん、お腹すいた』である。


「たけちゃん、私、肉ジャガが食べたい。肉ジャガ、カレーコースでよろしく」


 肉ジャガからカレーコースは、その名の通り余った肉ジャガをカレーにするのだが、問題が一つ。


「肉ジャガ、全部、食べるなよ」


 今回は大人サイズを楽々完食できるママさんがい?から、ちょっと心配である。




 スーパーで食材を買ってから、借りている部屋に向かう。

 建物はマンション1階。

 もとは2LDKの部屋だったが、壁を取っ払って改装し、広いリビング一部屋とコタツが置けそうな和服スペースになっていた。

 配置された家具は一通り揃っていて、まるで友達の家に泊まりに来た感覚がする。


「ふうん、これが民泊の部屋なんだ……」


 さらに部屋を見て回ると……シングルベッドが一つ。

 一つ?


「栞音、ベッドが一つしかない」

「大丈夫、和服スペースの押し入れに大きめの布団があるから」


 栞音の発言通り、床から10センチほど高くなった和服スペースに押し入れがある。

 ただ、この和室スペース、ふすまとか個室になるものはないので『和服スペース』であって『和室』ではないのだ。

 しかもシングルベッドの真横。

 運転手の仲原さんは帰ったと栞音が言うから、この部屋を3人で利用する事になる。


「……栞音、念のため聞くけど、俺はどこで寝れば良い?そっちにあるソファー?まさか車?」

「ベッドを使って良いよ。私はママと一緒に寝るから」

「いやいや、栞音よ。俺の性別忘れてないか」


 ママさんもいるが、年頃の男女が同じ屋根の下で寝ることになる。

 いくら妹にしか見えない幼なじみだとしても、それとこれは別問題。


「何言ってるの、一緒の布団で寝てたじゃない」

「ママさんに誤解を招く言い方はしないでくれ。ママさん違うんだ。小5の話で、栞音が恐いテレビを見て1人で寝られないと言ってきたから仕方なく1週間寝てやっただけで。

 しかも、この事を学校でバラしたら、俺の宝物を壊すと脅してきた」

「違うでしょ。たけちゃんの方が恐くなって1人で寝られないから、同じ部屋で寝てたら布団に潜り込んできたんじゃない」

「断じてそれはない。俺は幼稚園に入る前から1人でトイレに行けた。しかも、林間学校の肝試しでも、1番の早さで戻ってこられたんだから」

「恐いから、走ってたんでしょ」

「まあまあまあ」


 白熱するどうしようもない『どっちがホラーに強いかバトル』を止めたのはママさんだった。


「たけはる と栞音は仲良しさん」


 小さな子にくだらない討論を止められるほど悲しいものはない。




 落ち着いた所で、晩メシを作るのだが。


「栞音よ、分かっているだろうが」

「はいはい、わかってるよ。台所に近づくな、でしょ。

 ママ、コンビニでお菓子買いに行こう」


 栞音には料理スキルがない。それどころか ちょい足し、もしくは隠し味を入れたくなる 恐ろしい衝動に狩られてしまうのだ。



 こんなエピソードがある。


「はい、たけちゃんにあげる」


 手渡されたのはカップケーキ。


「大丈夫だよ、調理実習で皆で|(ここ強調)作ったから」

「そうか。もぐもぐもぐも……何で梅干しが入って入るんだ?」


 『隠し味』と答える栞音のスマイルは純粋なものだった。


「栞音、まさかとは思うが味見はしたか?」

「ううん」


 ……こんな感じである。

 なので栞音には『台所禁止令』を敷いた。

 調理時に栞音がいないのは当たり前で、俺が安心して晩ごはんを調理する間に、何か起きていたなんて知るよしもなかった。



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