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3日勇者  作者: 楠木あいら
day2
32/52

再会

 呆然とする俺の姿に気づいたらしく栞音は顔色を変えた。

 しかし『岳春、危険です』と後を追ってきたドーベルと、新たなる武装した者たちの登場を確認して『そこの犬っこ、たけちゃんをこっちの部屋に運んで』と命令する。

 命令されたドーベルは俊敏に動いてくれた。隣室に入り込むのに1秒とかからなかっただろう、俺を小脇に抱えてだが。


「カジュマル、ボーとしてないで何とかして。ママに何かあったらどうするのよ」


 ドーベルに降ろしてもらっている間に、閉めたドアに幾つもの蔓が張りめぐらされた。細かった茎が小枝サイズまで膨れた頃に、ようやくドア外をどんどんと叩いて訴える声が聞こえる。


「ドアが開かないように細工して。それから窓も」


 栞音に命令され不満なのか返事はなかったが、一緒に行動していた|(と思われる)人の姿をした植物、カジュマルは素直に従う。


「これで侵入の恐れはないわね……」


 一安心出来てから、栞音は現状を思い出す。

 ミニガンをぶっ放し、一部始終を幼なじみに見られていたことに。


 ミニガン

 ガンゲームに興味ない方なら、手のひらサイズの可愛い銃? と想像するかもしれない。

 しかしミニガンの『ミニ』はバルカン砲|(艦艇などに 設置(・・)する)の小型化だからのミニ で、ショルダーバッグサイズの固まりに細長い6本の銃口がついている重量級の武器となる。

 もちろんチートなしの女子高生が簡単に持てるものではない。

 可能なのは植物性、カジュマルブランドによる最軽量化によるものだろう。

 カジュマルから貰った剣も板一枚分の重さだったし。


「…………」


 そのミニガン、今も手にしている。正確には重量級なので両手で持っているが。


「…………」


 そう言う俺も呆然としたままである。

 幼なじみがミニガンをぶっ放し何人も消滅させていた事と、やっと再会できた事に。

 人類滅亡を阻止するため。何よりも栞音と話をするため、ひたすら探し回っていたのに、なぜ、隣に泊まっていたのか? という疑問も混乱の1つになっていた。

 それらが頭の中でひしめき合い、何から話せば良いのか分からなくなっていた。


「…………」


 ドーベルやカジュマルは何も言わず、無言の空間はしばらく続くと思ったが、口火を切ったのは栞音だった。


「やっぱり、無理」


 向こうも混乱していたらしく、武器を置いて逃げ出した。

 とはいえ、入り口が塞がった安いビジネスホテルなので、お風呂場に向かうしかない。


「ママ、ママ、無理。もう、駄目」


 騒動と混乱で気づけなかったが、そう言えばママさんの姿はないのは、風呂場にいたからか……って、入浴中だった?

 いや、このホテルはユニットバスだから、トイレもあるわけで…って、地球素材から創り出した非人間ってトイレを使うのか?まて、昨日はどうだった?


「岳春、大丈夫ですか?」


 混乱する俺にドーベルが、声をかけてくれたので、混乱思想から戻ってくることができた。


「あぁ、大丈夫」

「なぜ、お前達の隣にいたのか知りたいだろう?」


 カジュマルがにやりと笑いながら、情報提供の手を差しのばしてくれた。


「お前達を尾行してたからさ」


 状況を悪化できる事を楽しむために。


「尾行? 何で?」

「ママが許可してくれた。お前を再び同行しても良い事に」


 今まで不許可だった事と、ついでにママさんが高い所に長時間いても可能な事も教えてくれた。


「私の1部を持っているお前の居場所など、簡単に分かったのに。栞音の奴、声を駆けることなくずーっと後ろをつけていたよ。こっちは可笑しくて笑い転げてたが」


 カジュマルから貰った武器、発信器的なものもついていたか…

 種銃を向けたどころか撃ったから、声をどうかけたら良いのか分からなかったということか。


「あの襲撃は?」


 栞音に対する考えを後回しにしたかったので、口は、別の気になる事を質問していた。


「研究所ってそんなに武装して襲撃するほどヤバイ事か、状況なのか?」

「研究所が何をしていたかなど知らないが、昼間、危害を加えようとしたた奴らだろう」

「え? 昼間? 何があったんだ?」

「人類滅亡を知った人間どもが上から目線で来たから、返り討ちにしただけだ。栞音と人間以外の全生物が。特に栞音はそこのボスを種にした。連中が武装してきたのは、そのせいだろうな」

「……栞音が」


 ミニガンといい、人を消す感覚が可笑しなっている。


「……」


 栞音は変わり果ててしまった。

 昨日、いや人類滅亡という騒動が起きる前までの幼なじみではなくなった真実に、気づいてはいたか、受け止めていなかった。

 人類滅亡に振りまわされて考えないようにしていた。

 でも、彼女と向き合わなければならない。

 そう考えを読んだのか、カジュマルは言った。


「2人っきりで話すには、ちょうど良い機会だな」

「2人っきり?」

「私とママは、出かけなければならない」




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