視線の先
白色の袖無しシャツを膨らませる胸が、視界に入り込んできた。
人類滅亡を無視してでも眠かったのに、一気に吹っ飛んだ。
「ドーベル?」
こう状況からストーリーが始まると、高い確率で残念な結果に終わる。
しかし、今、この状況を語れたということは、逆フラグではなのか、それって…
「………」
期待しつつ視線をドーベルに向けると…縦長の耳をピンとたて、顔は廊下側の壁に向いていた。
「危険が近づいてます」
残念な方だった。
ドーベルが俺の上に移動したのは、永遠の友を守ろうとするのと、廊下側のベッドで音を聞き取ろうとするためのようだ。
しかし、ガッカリしているどころではない。
「危険って?」
「複数の人がこっちに近づいてきます。鋭い気配を放って」
スマホがメール着信を告げたのは、その時だった。
開けてみるとオヤジから。
『研究所の所長が変な組織に捕まっていたので、派手な行動を避けるように。
もちろん研究所員関係者だと分かるカードを使っちゃダメ。モロバレするよん』
「………」
極悪なタイミングで教えてくれたよ。
更なる危険を察知したのか、ドーベルはドアに向かう。
「まて、ドーベル、開けるな」
後を追い、ドアに着いて、のぞき窓で様子を窺うと…
「………」
黒い格好の人達が複数いるよ。しかも防弾チョッキとかヘルメットとか、ニュースで見る物騒に対応できる格好だし、棒やらじ、 やら武器まで持っている。
どど、どうしよう。カジュマルから武器をもらったけれども対植物用だし。そもそも格闘なんてゲームしかない、しかも弱い。
逃げようにもここは3階。ベランダもないから非常用はしごで降りる事も出来ない。
「………………あれ?」
などと考え、その間にも時間が流れているのに、何もない。ドアをノックする音も聞こえない。
もう一度、のぞき窓で廊下を見てみると…黒い格好をした人達はいる、それどころか増えているのだが。
皆、左側を向いていた。
しかも左に動き出した。
「俺らじゃない?」
誰1人として、俺らが泊まる部屋を無視していた。
武装した人達は隣人に反応があったらしく、声を荒げ。
そして消えた。一瞬で
「栞音!」
気がついた時には飛び出していた。
トサトの消滅を目の当たりし、種銃を所持している記憶により、栞音と判断した。
外は危険な状態だとわかっていたが、いてもたってもいられないなかった。
廊下に出た時、最後の1人が消滅する瞬間だった。
「栞音」
隣の部屋を駆けつけた俺は、深緑色のミニガンを手にする幼なじみの姿を見ることとなった。




