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3日勇者  作者: 楠木あいら
day2
17/52

突然の…

「……」


 俺は、中味のいないヤンデレ地球、ママさんを見つめた。

 目を開けたままなので、アースブルーの目は開いたまま、まるで人形のようだ。

 美しい。その言葉が当てはまる。美術3以上とった事がない俺でも、目の前にいる人形は特別に見えた。


「…………」


 美し過ぎて、視線が離れられない。


「ママが向こうに行ったってことは最終宣告ね。最先端宇宙施設も今頃は大森林……」


 栞音の話が耳に入っていたが、途中で途切れた。


「たけちゃん」


 やべぇ栞音の奴、イライラしていたんだった。こう言う時に話を聞いてないと、いつもキレて手に負えなくなる。

 『ごめんごめん』となだめるため、幼なじみに振り返った俺は、本日、2度目の口づけを体験していた。


「…………」


 目の前に背伸びをした栞音の顔があって、口に柔らかい感触が伝わってくる。


 頭が真っ白になった。


 カジュマルの時は、果実を食べさせるための恋愛感情のないものだったが。今、目の前で起きているのは、明らかに恋愛感情があった。それも幼なじみと。

 栞音は ただの幼なじみで、子供の頃と変わらない仲のまま、それが永遠に続くと思っていた。まあ、たまに男女の仲的な妄想はしてたが『あり得ないんだろうな』で片付けてた。

 だが、今、目の前で一線を越えた事になる。


「栞音……」

「口直し」


 口直しって事は、カジュマルの口移し、見られてた。


「口直しって、お前、そんな事で自分の大切なファーストキスを台なしにするなんて」

「台なしじゃない。それにファーストじゃないし」


 またもや頭が真っ白になった。


「え? いつ? 誰と?」

「それは……言えない。とにかく、カジュマルなんかに、たけちゃんの口を汚したままにしたくないの」

「自分はしておいて」

「あれは……。

 たけちゃんだよ」


 本日3度目の頭、真っ白。


「え、ちょっと待て、俺、何もしてない。小学生の缶ジュース回し飲みなんて言うんじゃないだろな」

「違う。中学の時」


 慌てて脳内から中学の記憶に『栞音とキス。もしくは、それらしき出来事』検索をかけてみるが、全くもって引っかかる記憶はなかった。


「中二の時、テスト勉強中、たけちゃんが爆睡してた時に」


 寝込みを襲われてた。

 と言うより、一線は越えていたという衝撃の方が大きかった。


「たけちゃんの事が好きだよ。ずーっと前から」


 真っ直ぐに俺の目を見つめて栞音は言った。

 幼なじみという、友達の延長まま安定した楽しい関係が崩れていく。


「………」


 言葉が返せない。

 突然のキスに、突然の告白。それに人類滅亡な状態で。


「たけちゃんは、栞音の事、どう思ってる?」


 しかし栞音は、積極的に聞き出そうとしていた。唇が再び触れそうなほど近づいた。


「どうって、幼なじみ……」

「付き合おうよ、私たち。あと2日しかないんだよ」


 あと2日。

 その言葉が引っかかった。

 もし、それがなかったら、更に近づいた栞音の唇を受け入れてたと思う。

 しかし人類滅亡という言葉が、栞音の肩を軽く押して距離を離した。


「たけちゃん?」

「2日って、何とかすれば、阻止できるんじゃないのか?」


 栞音の表情が険しくなった。


「阻止なんてできない。人間は2日後に滅亡するの。

 ママが決めた事は絶対なの」


 視線を栞音の肩に向けた。彼女の後ろにはピンク色のキャリーバッグがあり、その中には40センチぐらいある小型のチェーンソーが入っている。

 元理髪店から出る時に入れていた|(さすがにそのまま持って歩けば、人目が気になるどころか通報騒ぎになる)

 また、それを向けるのではないのか と不安になるが、栞音は動く気配がないので、気になっている事を聞くことにした。


「栞音、研究所で何があったんだ?」


 彼女が人類滅亡を賛成する理由は、研究所が問題になっているのは明らかだった。

 険しくなった表情が弱まり、視線をそらした。


「………」

「栞音」

「……無理」

「俺には話せないのか」

「……たけちゃんだから話したくない」

「栞音が悩んでいるのに、見て見ぬ振りできるわけないだろ」

「悩んでいるわけじゃあない。悩んで、もう、諦めたから。もういいの」

「何があった?」


 声を強くして、栞音の目を見た。今の俺は純粋に栞音の事を心配する保護者になっていて、告白やキスという記憶はどこかに消えていた。


「………」


 そのお陰なのか栞音は背を向けたが、口は開いてくれた。



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