第1章 初めの力 その後2
今回はシャンが語り部です。
文化祭の話なので、バトルはありません。
ジョウとみんなが完全に打ち解ける回でもあります。
10月26日、今日は待ちに待った文化祭初日ね。
昨日は色々残念だったけど、ジョウも一回り大きくなれたはず。
せっかくいい男だと思うのにホリィったら勿体無い。
さてさて、気持ちは切り替えて楽しまなくちゃね。
それでは、大変長らくお待たせ致しました、私、シャンお姉さんの、愛と友情の物語、始まり始まり〜。
っとまあ、そんなこんなで、私は毎朝、5時に起きて、支度をする。
シャワーを浴びて、髪の毛を整え、お化粧をし、うん、今日も素敵なお姉さん!
「行ってきまーす!」
通学路を歩いていると毎朝恒例の行事がある。そこを曲がると、きっといるだろうね。
「シャンさん!これ、呼んで下さい!」
「シャンさん!よかったら、これ、食べて下さい!」
「シャン様!僕を踏んで下さい!」
はい、いました。今日は三人。一人変なのいるね。
「ごめ〜ん、急ぐから、またね〜、文化祭、見にきてね〜」
私は走り抜けるが案の定、追いかけてくる。でもこう見えて私は足が速い。学校が近づくにつれてまた一人、また一人と増えていくが、誰も追いつけない。大分距離を稼いだ辺りでジョウとガンマを発見する。
「おっはよ!お二人さん!」
私は二人の肩を叩き挨拶をする。
「シャンか、お早うだな。」
「お〜シャン、なんや朝からテンション高いで自分〜」
よかった。ジョウったら意外と元気そうね。ガンマは相変わらずだけど。
「だって文化祭だよ?!あなた達には負けないからね〜」
「望むところや!今年の俺らはちょっとちゃうで〜」
「ああ、オレのクラスはホリィがいるからな。1組にも3組にも負けるつもりはない」
確か、ジョウの2組は喫茶店。私がシース君をホリィから引き離そうとした撮影会案、間接キスとかはやめて、単純に店内写真撮影OKにしたみたい。
まあ、シース君にジョウがいるから、スカートの中の盗撮とかは大丈夫そうね。
ガンマの1組はお好み焼きだっけ?意外と普通。ガンマのことだからなにかしてくるとは思うけど。
そうこうしているうちに後ろから連中が追いついてくる。
(ヤッバ、早く逃げないと)
「それじゃ、試合会場で会いましょう。楽しみにしてるね〜」
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………
……
…
「…なあジョウ、あいつ、あないなキャラやったか?」
「俺に聞くな」
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やっと学校についた。文化祭スタートまであと1時間もある、最後の準備をしても30分くらい余るので、2組に遊びにいく。
しかし、毎朝の事で慣れてるとはいえ、どうしてホリィやシェリルは私みたいに追っ掛けられたりしないんだろうと疑問がでる。
二人とも凄く綺麗なのに。
何と無く腑に落ちないと思ったのか、ホリィに聞いてみることにした。ホリィはとっくにメイドさんの服に着替え、真剣な顔でメニューと睨めっこしてる最中だ。
「おはよ、ホリィ!」
「むぅ〜……7番がオムライスで…えっと…」
超可愛い。全然気づいてない。
後ろから襲ったらどんな反応をするのか気になった私は、こっそりホリィの真後ろに隠れ、ガバっと下から胸を触る。
「わわっ!え?なに?なに?」
そのままほれほれと言った感じに胸を揉みしだく。
「え?え?誰?シース君?」
……普通はキャーとか言って逃げるもんだよあんた。なんでされるがままなのよ。っていうかなんでシース君を最初の選択肢に入れてんのよ。
「あ、シャン、お早う。ビックリしたよも〜」
ああそう、もういいわ。
色んなものに呆れた私は、メニューを覚えるのを邪魔しちゃ悪いということもあり、軽く話してからシース君の元へ向かう。
「おはよ!シース君」
「ああ、お早う、昨日は色々悪かったな。」
なんでシース君が謝るのか全くわかんないけど、こういうとこなんだろうなきっと。
シース君のタキシードを大分褒めたあと、聞きたかった事を聞いてみた。
「ああ、ホリィも初めは良く声かけられてたぞ。でも一人一人に凄い申し訳無さそうに半泣きでしかも丁寧に断ってたらなんか来なくなったな。流石に可哀想になったんじゃないか?」
成る程ホリィっぽい。
シェリルはどうか聞いてみると、シース君は笑いながら答えた。
「実はシェリルも、最初凄い数のファンが来てたんだけどな、あいつ、全員に女々しいんだよとか言ってぶっ飛ばしちまってさ。笑えるだろ?」
成る程シェリルっぽい。
「まあ、シャンは追っ掛けても大丈夫そうなキャラだからな〜。ははは」
成る程私っぽい。
そんな下らない話を10分くらいした後、教室へもどり準備を進める。3組の出し物は、私考案の剣舞。クラスのみんなも一生懸命練習して、大分様になって来た。衣装はチャイナ服と呼ばれるものを用意して、クラスではなく体育館で行う。1日に午前、午後の2回やる為、それ以外の時間は自由だ。
まずは午前の部、後30分少々で始まる為、皆で体育館へ向かう。
途中、黒のサングラスに黒の革パン、革ジャン、ブーツを履き、ガムを噛みながら歩く外国のアウトローのような人とすれ違った。
…え?!…シェリル?!
ヤバい似合いすぎる。全身が黒づくめの中、あの赤髪も一役かっているんだろう。
そういえばシェリルのいる4組だけ何をするのかわからない。見学しようにも、クラス中の窓に新聞紙を貼り付け、ドアの前にどっから連れて来たのかSPみたいな人いたし。
まあ始まれば嫌でもわかるだろう。
体育館に到着し、皆息を整え、円陣を組み舞台へ上がる。
思ったより凄い人、一瞬のまれそうになりながらも、皆で団結して、無事ノーミスで30分間舞尽くした。惜しみ無い拍手がなった。
汗だくになりながらも達成感は物凄いものがある。
皆で、午後もこの調子で頑張ろうとハイタッチをし、私はまず、休憩も含めクラスの友達と3年2組に向かう。
「いらっしゃいませー」
中に入ると中々人が入っている。
ホリィは…いた。
手を前で組み、顔を真っ赤に染めて、物凄い勢いで写真を撮られている。
超可愛い。
よく見たらおヘソを出してて、あまりそこを撮られないように隠そうとしているのかもじもじしている。
超可愛い。
私達も携帯で写真を撮り初めると、ゆでダコのようなホリィが私を見て首を振っている。
超可愛い。
喉が渇いたのと、小腹が空いたのもあり、写真を撮られている最中だが、ホリィを指名して接客をしてもらう。折角メニューを覚えたのに勿体無いもんね。
でもちょっと意地悪して、書いてある料理名を言わず、横の番号で注文してみる。
「3番と〜7番と〜10番ね、あと20番二つと23番一つお願いね」
ホリィは伝票に番号を書き込む。
「はい!ピラフがお一つ、オムライスがお一つ、カレーライスがお一つ、ドリンクにアイスティーお二つ、
アイスココアがお一つ!以上で宜しいですか?」
ホリィはえっへんと言った感じで得意そうにしている。
超可愛い。
少し待ち、私達の元にジョウが引きつった顔で料理を持ってくる。そういえば、入り口に肩を叩くと男子の服がイリュージョンとか書いてあったっけ。
奥をみると、キッチンから顔を覗かしているシース君が、口を手で押さえ、笑いを相当堪えている。
ジョウがお待たせしましたと料理を置く。妙に肩を庇っている気がしたので、気になった私はジョウの肩をバシっと叩いてみた。
「あ、おい!」
その瞬間、ジョウの上着がバラバラになり、筋肉質なジョウの半身が露わになった。私達爆笑。
超面白い。
奥でシース君が大笑いしている。
すると突然部屋内がクラブみたいになり一人のタキシードの男子が急にマイクパフォーマンスをしだす。
「皆様大変長らくお待たせ致しました。只今より、ジョウタイムの始まりです!」
ショウタイムとジョウタイムをかけてるようだ。
その発想はなかった。
ディスコみたいな音楽が流れ、ジョウがその場でボディビルダー顔負けの色んなポーズをする。
物凄い引きつった顔で、似合わない事してるジョウに再び爆笑、お腹が取れるかと思った。
超面白い。
奥でシース君がお料理出すとこをバンバン叩きながら爆笑している。
ホリィはニコニコしながら何故か手拍子をしている。
ジョウタイムが終わると、ジョウは恥ずかしそうに奥にひっこんでしまった。
面白かったのでさっきのマイクパフォーマンスの男子を呼んでみる。
「すいませーん、さっきのジョウタイム写メ撮り忘れちゃって〜」
すると察してくれたらしく、まさかの再びやり直し。
「皆様大変長らくお待たせ致しました。只今より、ジョウタイムの始まりです!」
再度クラブのようになり、音楽が流れる。シース君はもう限界らしい。客席に出てきてお腹を押さえ転げ回っている。
ジョウは嘘だろ?という顔で律儀にも再び出てポーズを決め出す。
超面白い。
今度は写メをちゃんと撮ったが、光の反射がイマイチで写りが悪いとクレームを入れてみる。
「皆様大変長らくお待たせ致しました。只今より、ジョウタイムの…」
「帰れよお前ら!」
ジョウ超面白い。
ホリィはあれ?始まんないよ?といった顔でジョウを見た。
「いや、 ホリィ、頼む!本当に勘弁してくれ!」
ホリィ超可愛い。
シース君はこのまま死ぬんじゃないかってくらい爆笑している。
その後お会計を済ませ、次どうしようかと悩んでいると、友達二人が彼氏が来ているという理由で、それぞれ別の場所に別れた。
一人になったので誰のところに行こうか悩んでいると、シース君とホリィ、ジョウが、私の元へくる。
「ははは、ぶふ、シャ、シャン、ふふ、こ、これからはは、まわらない、たはは、か?」
シース君……気持ちはわかるけどさ。
「お前いい加減にしとけよ」
ジョウは恥ずかしそうな顔をしている。
「シース君笑いすぎ〜。ジョウ君かっこ良かったよ?ね、シャン?」
もうホリィ、良い子すぎ、何なのよもう。
ジョウがホリィに「そ、そうか?」と言うと、シース君が再び爆笑しだす。
「テメェエエ!!。待ちやがれ!!」
シース君は笑いながら逃げ、ジョウは追いかける。
ホリィはバイバーイと手を振り、見えなくなったくらいで私にさてどうしようかと尋ねた。
「さっき食べたのに、笑いすぎてお腹すいちゃった、ホリィは?」
「私も実は朝から食べてなくて…あはは」
珍しい、ホリィが朝食抜くなんてどうしたんだろう。
だがお腹をさするホリィを見て、すぐにそういうことかと理解した。
「おヘソ出してたもんね、お腹ぽっこりしたらみっともないもんね」
「も〜言わないでよ恥ずかしかったんだから〜」
とにかく何か食べようと少し歩くと、1組からいい匂いがする。
「わぁ〜なんか凄いいい匂いだね〜」
興味津々なホリィ。ドアに近づくと扉が開き、ハッピを着たガンマが現れる。
「ハイ、美人お二人さん、ごあんな〜い」
ドアに手をかけてもいないのに気付くなんて、ガンマ凄すぎ。
「すご〜い」
ホリィが教室を見渡し関心する。
「確かにね〜、凄い本格的じゃん。でも火事とか大丈夫なのかな?」
生徒机には全てに小さな鉄板が置いてあり、窓に簡易ダクトのようなものが煙を吸収している。見ると、店員役の男子、女子が全部の席でお客と楽しそうに話しながらお好み焼きを焼いている。
「よう来たな!本格関西お好み焼き屋、「GANMA」や!」
ああそう、「γ」ではないんだ。
「全員に関西弁勉強させてな、お好み焼きの作り方から、話し方まで、大変やったで〜。まあ、そないな事はええねん、お二人さん、腹減ってんちゃうか?すぐ用意するでちょいと待っといてや。」
見た所、満席だけどどうするんだろう?まさか床にまで鉄板置けるわけないし。
ガンマは、話しながら食べてる横並び二人のお客の元へ行き、少し話した後、頭を下げながら席を立たせた。
「え?え?悪いよそんな」
ホリィも心配してる。
食べ終わってるならまだしも、最中だし、折角楽しそうに笑ってたのに、そこまでしなくても。
ところがお客は笑いながら会計を済まし、ガンマと仲よさそうにして、満足そうに帰ってった。成る程、知り合いだったんだね。
「待たせてしもたな。席空いたで〜」
「ありがと〜。さっきの二人、知り合いだったんだね?なんかゴメンね〜」
私がそう言うと、ガンマはナハハと笑った。
「ぜんっぜん知らんで」
「へ?!」
「全くの他人ちゅうやつやな」
「ええ?知らない人を食べてる最中に帰したの?」
でも笑顔で満足そうに帰っていったし…一体どんな魔法を使ったんだろう。気になる。
「まあ細かいことは気にすんなや、特別に俺が焼いたるやさかい、よう見とってや〜。因みにこれはサービスや」
そう言って明らかに高価そうな大きなエビを鉄板の隅で焼き出す。
「ちょちょちょっとちょっと、大丈夫なの?!テレビでしか見たことないよこんなの!」
ホリィは手を叩いて「凄い凄い!」と大喜び。
「ええねんええねん、折角来てくれたもんやから、奮発せなな」
お好み焼きを焼きつつ、ガンマは楽しそうに話しながらジュースを注ぐ。
焼けたお好み焼きを口に運ぶと、ガンマが自信満々に笑っている。
「美味し!何これ!」
私はあまりの美味しさに、つい口に出した。
「ほんほ、ふっほふおいひい〜!」(ほんと、すっごくおいしい〜!)
ホリィなんか口一杯に頬張って幸せそうにしている。
「せやろせやろ!違いはな!……実はソースにあんねん」
いや違うでしょ、明らかに材料が高級品でかためてあるのに。そのことを言うと、ガンマは笑いながら誤魔化す。
「まあそうともゆうんかな〜、ナッハッハッハ」
多分この店、なんか変な事してるんだろう。そもそも、教室で鉄板焼きなんかしたらすぐに先生が飛んでくるはずだし。材料費ヤバいだろうし。
その後しばらく堪能した後、ガンマにお会計と告げる。
「美味しかった〜、またこようね、シャン」
「まあガンマも細かいことは気にすんなとか言ってたしね〜、美味しかったのは事実だし」
ガンマが伝票を持ってくる。正直、今私は5千円くらいしか持っていない。ホリィの分も奢ってあげるつもりだったけど、ちょっと厳しいかな?
「今日は待たせても〜て申し訳ないな〜、お会計、美人二人で600円や〜」
………
……
…
「はい?」
ああ、関西人の良くやるやつかな、桁を変に言うやつ、普通6,000円を6,000万円とか言うんだろうけど、変なの。
私達はお互いに3,000円を出した。まあこれでも十分安すぎるクオリティだったのは間違いないよね。
「よ、お二人さん、おもろいボケかますなぁ〜、ほいお釣り。」
???
ガンマはお互いに2,700円とレシートを持ってきた。
ホリィも訳わかんないという顔をしている。
「ちょっとガンマ?」
ガンマは扉を開け、「ほなまた来てや〜」と言っている。もうどこまでがボケなのかわからなくなった私達は試しにドアの外に出てみる。
「ほなな〜」
扉が閉まった。
………
……
…
いやいやいや、ちょっと待って。
私は扉を開け、ガンマを呼ぶ。
「お、また来てくれたんか〜、って早いわ!」
違う違う、今そういうのいらない。
「ちょっとガンマ?!お金ならちゃんと払うって!」
「いやもろたやん?消費税込みやねんウチ」
「いやおかしいでしょ、一人300円って!」
ガンマがこちらに詰め寄り小声ではなす。
「実はな………」
「うん」
「消費税込みやねん…」
欲しかった答えとは斜め上の回答で私は呆れ、その場を後にする。また、途中で帰されたお客に関しても聞いたけど、「それが接客ゆうもんや」の一言で返された。
「でも美味しかったからいいじゃない」
うん、美味しかったし満足だけど、謎しかない店だったよ。
そろそろ剣舞の二幕が始まる時間になるのでホリィと別れようとしたが、ホリィったら見たい見たいと言って聞かないので、一緒に行くことにした。
向かう途中、体育館から歓声が聞こえる。
あれ?まだ時間は30分くらいはあるけどな。
他のクラスが出し物でもやってるのかと思い、体育館の入り口を覗くと、なんかどっかで見たことあるようなないような男子達が集まっている。
「ねぇシャン?あの人達、なんか見たことあるな〜って思ったけど、他校のシャンのファンの人達だよね?」
ああそうだ、確かに通学路で見たことある。っていうかこんなにいたの?
「凄いね〜!皆シャン目的だよ!ほら、あれ。」
ホリィが指を差した先に、私の知らない看板が…
【皆のアイドル、シャン姉さんが、セクシードレスで舞う!!】
どうやら賞金に目が眩んだようね。
「も〜!しょうがない!せっかく見に来てくれたんだから、精一杯セクシーに舞ってあげるわよ!じゃあホリィ!行ってくるね!1人で大丈夫?」
ホリィはにっこり笑顔で親指を立てた。
超可愛い。
一応シースとジョウにも連絡を入れ、ホリィが体育館の近くにいるから一緒にいてやってほしいと連絡を入れたら、二人共、すでに体育館にいて、シース君が前の席の取り合いをオタクっぽい人数名としているので、ジョウが迎えに行くという手筈になった。
シース君、あんた何やってんのよ…
始まる前には忙しいのにガンマも来てくれるらしくほんと友達っていいなって思った。
でも、シェリルは来てくれるのかな?
少し気になるけど、今は剣舞に集中しよう。
文化祭、次回で終了します。
シェリルが一度しか出てこなかったので次回は少し多くする予定です。