序章、2
今回は、前回より日常が強いです。
ホリィのキャラクターも理解していただければ幸いです。
あれから二人で、終始無言で歩き間も無く家についた。
夕飯を食べ、風呂に入り、ふと考える。
ジョウの奴、俺がホリィの家に居候しているのは嫌だったろうな…
恋…かぁ…
ホリィは学園のアイドルとか言われてるみたいだけど、俺にとっちゃ妹だし、同時に姉でもある。まあ、そういう対象にはならないだろう。周りは理解してくれないだろうが。
「シース君」
カチャリと扉を開けて入浴中の風呂場にホリィが現れる。
タオル一枚で。
「ちょっ!おい!何やってんだ!」
慌てて目を逸らし、前を隠す俺に、ホリィは不敵な笑いを浮かべる。
「あれ?もしかして照れてる?」
バカなのかこいつは?
「当たり前だろ!高3だぞ俺たちは!」
見ないように顔を背け、右手でしっしっと出てくように促す。しかし、返ってきた返答はいつも明るいあのホリィではなかった。
「あの…さ……今日だけ…今日だけ一緒にいて欲しいんだけど、だめ…かな…?」
少し目を落とすと、視界の端に見えるホリィの足が震えているように見える。
そりゃそうだ、今、考えられないことが起きている。
ジョウが生きてるかもしれない、でも生きてたとして、それはジョウと呼べないものかもしれない。
生きていて欲しい、でも、生きていたら恐ろしい。
強がっていても、やはり怖いのだ。
はぁ…バカは俺の方だ。
「なあ、ホリィ…」
少しの沈黙の後、俺はホリィを諭す。
「…ったく、らしくないな、俺は大丈夫だ、今までもそうだったろ?これからも、一緒にいるさ。血は繋がってなくても、俺はホリィの兄だし、弟だ。」
ホリィの横を通り過ぎ、頭を軽くポンと叩く。
「先に上がるぞ、そこで待ってるから」
「うん」
安心したのか、声に少しだけ元気がもどる。
風呂をあがり、二人で二階へ。
軽く雑談しながら、今日は一緒に寝ることにした。
翌日、ホリィの母親に心配されつつ、いつものように学校へ向かう。
「なあホリィ、卒業したらさ、どっか二人で旅行いこうか」
ホリィは目を細めて俺を見る。
「あのさ〜、シース君って自覚あるの?」
言ってる意味がよくわからないが。
俺が首を傾げると、ホリィは溜息まじりで言った。
「学校の女の子達に私がどういう目で見られてるかよ〜く考えてみてください。」
なんで敬語だよ。
だがまあ、確かにホリィが同性と話しているところをあまり見たことがないな。ああ、もしかして。
「ホリィ!」
「はいなんでしょうか」
ホリィは目を閉じ、ツンとしているが、俺は目の前に立ち、肩を掴む。
「もしかして、いじめられてるのか?」
ホリィが呆れている。何か間違ったのだろうか。
「はあ…あのね、シース君はモテモテ過ぎていつも私嫉妬されてるんだよ。そんな状態なのによくこの通学路で二人で旅行行こうなんて言えるね。」
周りを見ると確かにそんな感じだ。女子達がホリィを睨んでいる。
俺、モテてるのか、ええ、初めて知りましたよ。
まあ、男子には俺が睨まれているが。しかし少し安心したな、ホリィの奴、いつもみたいに元気がでてきたみたいだ。
「おっはよ、ホリィ!朝からイチャイチャ羨ましいね」
ホリィの背中を叩き、話しかけてきたのは同じクラスのシャン。
中国からきた気のいい猫目の女の子だ。
地面に着きそうなくらいの紫色の髪をなびかせる。
ホリィに負けずとも劣らない人気女子。
「おはよ、シャン、好きな人とだったらイチャイチャしたいんだけどね。シース君で我慢だよまったくまったく。」
おい、それは聞き捨てならんぞ
「あはは、いいじゃんシース君イケメンだし」
ホリィの数少ない友人、仲が良いのは結構だが、俺を巻き込まないでほしいものだ。
だが、平和な日常に一時的に戻れたようで、少し気が楽になった。
感謝しないとな。
「そうそう、昨日さ〜不思議なことあってね〜」
シャンが腕を組み、空を見ながら話し始める。
「寝る前にストレッチしてたら凄い風が吹いてさ、びっくりしちゃって外を見たら赤く光るものが凄いスピードで飛んでったの。」
俺とホリィはピタリと動きをとめ、その話の詳細を頼んだ。
「ん〜詳しくっていってもね〜、ホントに一瞬のことだったから。なんで?なんかあったの?」
シャンまで巻き込みたくはない。
その気持ちはホリィも同じだった。
「あ、あはは、いや〜不思議だな〜って思って。あ!そうだ、シャンの家ってさ…」
ホリィは何とか話を逸らそうとするが、勘が鋭いのか、シャンは明らかに気にしている。
「う〜ん…ねぇホリィ、シース君、わざわざ聞かないけど、私にできることあったらなんでもいって、大事な友達なんだからね」
「…うん、大丈夫、ありがと…」
なんか、流石だなシャンは。
ホリィもそうだが、俺も泣きそうだよ。
そうこうしているうちに、学校に着く。
迷惑と思っていたが、あいつとの毎朝のバトルがないのは、それはそれで寂しいと、俺は心底思った。
…
学校の休み時間を利用してこそこそとガンマ、ホリィの三人で今後について話し合う。
結論はとことん情報を集めようということになっただけだったが、ガンマが気になる事を言い出した。
「見たって奴がおるんよ」
おそらく俺とホリィが朝聞いた赤い光の事だと思い、俺はガンマにシャンの話をした。
ところがガンマの話はそんなこととは比べ物にならないほど衝撃的な事だった。
「光?いや俺が聞いたんはな、なんと、ジョウを見たって奴がおるっちゅう話や」
「なんだって!?」
まさかこんな急展開になるとは思ってもみなかった俺たちは、半信半疑ながらもジョウを見たというやつに話を聞きに行く。
二つ離れた教室に向かい、赤い髪のボーイッシュな、今まさに1.5リットルのコーラをラッパ飲みしている1人の女子の元へガンマが歩みよる。
「シェリル、さっきの話なんやけど、もう一回詳しく教えてくれへんか?」
シェリルは袖で口を拭い、こちらを睨む。
「なんだ、シースにホリィかよ。ま、シースは気になるだろうと思ってたけどね。」
自分の席から手を伸ばし、クラスの男子が座っている椅子を強引にこちらにもってくる。
「どきな、ちょっと話するから」
言いながら自分の席をどかし、スカートだというのに足でクラスメイトを蹴飛ばす。
「ちょっとちょっと、何してんのよ!?」
ホリィが慌てて蹴飛ばされた男子に駆け寄る。
「大丈夫?」
「うん、気にしないでよ…」
女子に蹴飛ばされ、挙句違う女子に心配される、ああ、男のプライドズタズタだろうな。
「おお〜さすが学園のアイドルは違うね〜」
からかうシェリル。
やれやれ、やっぱこうなるのか…。
シェリルは美人なのに性格がヤクザ以上に怖く、相手が誰であろうとくってかかることで有名な女子だ。
義理堅いことも知ってはいるが、この性格だ、敵を作りやすい。巷では恐怖を込めてこう呼ばれている。
「相変わらずのビューティビーストだなシェリル」
意味は''美女の野獣”というらしい。
上手い事を考える奴がいるもんだ。
「シース、あたしはそのアダ名ムカついてんだ、ナメてるといくらあんたでも容赦しないよ」
俺は割とシェリルとは仲の良い方だと思っているが、流石に野獣呼ばわりされりゃ怒るか。
「ああ、悪かったよ」
シェリルは舌打ちしながら席を戻す。
「ったく、何がビューティだよ、女子かっての」
いやそっちかよ。
っていうかお前は女子だぞシェリルさんよ。
明らかに敵意を出してるホリィを収め、ひとまず話を聞くことにした。
「ああ、昨日夜11時くらいかな?うち住宅街なんだけど、コンビニに向かってたらなんか焦げ臭くてさ、気になって匂いのする方に行ってみたら、なんか見たことある後姿が道路に1人ポツンとたってたんだよ。んでよく見たら、ジョウじゃんって気付いたんだよね」
生きてたのか、やっぱり。
よかった…本当に…
複雑な気持ちはあるが、俺たち三人はホッと胸を撫で下ろした。
「でもさ〜変なんだよ。」
「…何がだ?」
俺の中の不安が少し大きくなりながらも、聞いてみる。
「ん〜いやね、最近休んでるだろ?、で、話しかけたんだよ。何してんだって。そしたらガン無視よガン無視、ムカついたもんだから、蹴りいれてやったら、熱いのなんのって。熱したフライパンを蹴ったみたいだったよ。キモすぎ。直感でなんかやばいって思ったからそのままコンビニに行ってきてさ、帰り、まだいんのよ。ぼーっと突っ立ってて、流石のあたしも恐怖を覚えたね。」
シェリルは嘘を言うような奴じゃない。
おそらく、事実なのだろう。
そして、その話の流れで気になっている事を聞いてみた。
「指は、あったか?」
シェリルはハッと思い出したような顔をする。
「そうそう!あいつの指、両手の指全部、ザリガニみたいに赤くてさ、トゲトゲになってたんだよ、趣味悪い指サックだなっと思ったけど、よくみたら、ザリガニみたいな指と手のの境界線が無くて、同化してる感じだったんだよね。いや〜さらにキモかったよほんと。あははは」
事情を知らないとはいえ、バカにしたような話し方にホリィがついにキレた。
「あなたねぇ!さっきから何なの!?よく知りもしないで!!最低よ!」
教室に静けさが広がる中、シェリルが至極真っ当な意見を言う。
「じゃあ、何があったか教えたら?あたしは聞かれたから答えただけだし。それともあんたらが傷付かないように言わない方がいいかなって思ったことは隠しといた方がよかったわけ?」
まあ、今回シェリルの言う通りだな。
だがまあ、ホリィの気持ちもわかる。
悔しくて、怖くて、辛くて…俺もおんなじだ。
「私はただ…その…うう、ヒクッヒク…そんな、言い方、しなくても、エグッ…うう、シース君〜!」
ホリィが俺の背中に顔を埋め泣き出した。俺は髪が邪魔にならないよう前にもってくると、後ろに手を伸ばし頭をポンポンと軽く叩く。
「まあなんや、今回は痛み分けちゅうことで、許したってや、はは」
「はぁ?なんであんたが締めんのよ。意味わかんないんだけど。調子のんなくされワックス、どうやって固めてんのよそのダッサいヘアースタイル」
ガンマ撃沈。
くされワックスは酷くない?
ホリィの真似して俺の背中で泣き真似をするタチの悪いボケをかましてくれた辺りで、チャイムがなる。
「じゃあシェリル、ありがとな、もうちょっと落ち着いたら何があったかちゃんと言うよ。…その、悪かったな」
「気にすんなよ、あたしも悪かったって。ホリィ、悪かったね、口が悪いのは昔からで、今後気をつけるよ。」
ホリィが子供に見えてしょうがない。
俺の背中で泣きながら「ゴベンナザイ〜」とかいってるし。
ガンマはガンマで白くなってるし…
っていうか、ガンマには悪いと思ってないのな…
その後、放課後にシェリルの言っていた指の異常を調べるために、可能性は少ないが、図書館へ行こうと言う話になった。
「じゃあ、今日はここまで、起立!…」
放課後のチャイムが鳴り、俺、ガンマ、ホリィの三人で図書館にいく。道中、俺は教室にサイフを忘れた事に気付き、先に行っててくれと頼み、別れた。
「えっと、ああ、あったあった。」
俺はサイフをポケットに入れ、早足で学校を後にするが、グッドタイミング、雨が降り始めた。
「折りたたみ傘は、と、そうだ、バッグごとホリィに預けたんだった。はぁ、仕方ない、まだそんなに降ってないし、濡れていくか。」
二人の待つ図書館に小走りで進んでいく。
ザー…
「雨、強くなってきたな。」
俺は早々に諦め、割と大雨の中、普通に歩いていくことにした。
すると、どこからか妙な匂いがする。
「雨の匂い?こんな匂いしたっけ?」
独り言をブツブツ言いながら、何となく匂いが強いと思われる方へ、引っ張られるように進む。
曲がり角を曲がった瞬間、そこにはいた。
「そうだ、なんか嗅いだことあると思ったら、焦げ臭いんだ、これ。ああなるほど、だからか。はは…」
そこに立っていたもの、こちらを向いて立っていたもの、2日くらいしか経っていないのに、妙に懐かしい姿がそこにあった。
…ジョウだ。
シェリルのあの話を聞いた後なのだから、普通は多少警戒すべきだったのだが、俺は歓喜のあまり、すぐに駆け寄り、どこ行ってたんだよとか、心配させんなとか、色々涙声で声をかけた。
だが、その瞬間
腹部に猛烈な痛みが走った。
次回はシリアスな展開、異能力バトルもの感へ進む感じになる予定です。