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第四話

 どうやら俺とディーネは相性が良いらしい。

 現在4層までやって来た俺達は、特になんの苦もなくここまで来ていた。俺自身はビームライフルを射って敵のヘイトを稼ぎながら、できれば撃破。

 俺がヘイトを稼いでいるうちにディーネが後ろからナイフで倒すという戦法が見事にヒットしていた。既に3層のファングリル討伐クエストはクリアしている中、後は5層を目指すだけだ。


「や、やっぱりパートナーがいると楽です。案外、私と相性いいですねハルトさん?」

「……そうか?」 


 内心、思っていても頷きたくない。ナイファーと相性が良いとか、誰得なんだ。

 索敵をしながら10層へ上がる階段を探す俺達。俺も多少余裕ができてきて、会話をするぐらいはできるようになった。いつの間にかディーネは俺のことをハルトと呼ぶようになっているし、このゲームの子供はどこか距離が近い。

 むしろゲーム感覚だからだろうか、普段こういった手合と話す機会のない俺でも普通に会話ができるのはゲームのいいところかもしれない。


「それよりも、お前がフッと消えていなくなるアレ。スキルか?」

「ですです。『ハイド』ですね、アレがないとモンスターの裏を取れないのですよ。ハイド状態で攻撃したり、攻撃をくらったりするとハイドが切れるので1人で相手取るとヒットアンドアウェイができないんですよね」

「ふーん、じゃあ攻撃の時叫んでいるのも何かのスキルなのか」

「それはただの掛け声ですね。ナイファーの人が後ろから首筋に一撃を加える時に、そう言っていたのを真似しているのですよ。今では、ハイドからの裏取りバックスタブはナイファーの基本です。実際には近接格闘のスキルは多少の命中補正だけですが……。あ、因みに私ナイフ戦なら負け無しなのですよ?」

「ソレは聞いてない」


 正直、ウィキ先生で見たナイファーよりかは、ディーネはマシだと思った。

 協調性はあるし、魔獣も上手く狩っている。存外、戦力的にも役に立っていた。


 スキルは12種存在し、プレイヤーはその中から3つ選択できる。

 スキルはおおまかに別けてアクション系とウェポン系になっており、ディーネの使っている『ハイド』はアクションスキル、そしてナイフを使用する際の補正スキルが『近接格闘』がウェポンスキルになっている。

 俺はなんでもできるようにと『短機関銃』『突撃銃』『狙撃銃』のウェポンスキルをとったのであんな芸当はできない。

 今度スキルを変更するまでに構成を考えないといけないな。

 

 俺自身、まだまだ下手くそだからアレだが、『ハイド』状態なら対人戦闘でも優位に立てると思うけど……、まぁそれは後々調べるか。


「そういえばお前、10層に用があるって言っていたけどなんかのクエストか?」

「ご存知、ないのです? 10層毎にボスモンスターが出るんですけど、そいつのレアドロップ武器を狙っているのですよ」

「その武器って……ナイフ?」

「当たり前ですよぉ。えへへ、ハルトさん。もしかして私と一緒でナイフのレアドロ目当てにこの魔天廊に来たのですか?」

「んなワケねーから!」


 なんで俺がナイフを探さねばならんのだ。少なくとも実銃タイプじゃなきゃ意味が無いのに、ナイフだなんてありえん。


「レアドロの武器は基本的に高性能ですし、売れば安くても数百万クレジットになりますです。その為『ハイエナ』も湧きますですけど」

「す、すうひゃくまんっ!?」


 え、えっと。ゲーム内通貨で100万クレジットの場合現実通貨に還元すると……。


「じゅうまんえん!」

「うぇえ、なんですか急に。まぁ、実銃とかは使ってマネーインバトルで稼ぐ人の方が多いですから、あまり市場には流れないですけどね」

「気が変わった。おいディーネ、すぐに10層へと向かうぞ」

「……目が¥になってるです」


 そ、そんなことないぞ。決して、金に目が眩んだわけではない。


「ってかそもそも、なんでこのゲームでナイフなんか使ってるんだよ。ナイフとか使いたいならファンタジー系のゲームに行けばよかったじゃないか」


 痛いところをつかれそうになったので俺は露骨に話題転換をする。

 このゲームの種類からいって、ナイフを使うのはあまりに不利だ。上記でも述べた様に、敵に近づく前に蜂の巣にされる事が多々ある。

 なのにディーネはナイフを1本持っただけで、銃なんてどこにも装備してない。

 いやそも、スク水に装備できる場所なんてないんだが。


「何を言っているんですか、ハルトさん。このゲームでナイフを使って輝くことこそがロマンでしょう! 銃弾が飛び交う中、さっそうと駆けまわり首を刈り取る。まさにロマン、これこそが私の求めていたゲームなのです!!」


 いきなり熱の篭った声で説明するディーネ。ロマンとかはわかるけどさ、それで負けたら元も子もない気がするんだよな。


 もっとも、これはゲームだ。

 俺は金を稼ぐためにプレイする。でもプレイヤーの中にはただ楽しむためにやってる奴もいる。俺がソレを否定することなんかできっこないものだ。やり方も人それぞれ、口には出すもんじゃない。


「ちなみに、スク水着てるのもロマンか?」

「あ、それは私の個人的趣味です」

「……そう」


◆◇◆◇


 ついに10層へとたどり着いた。

 1~9層に比べ入り組んでおらず、一つの大部屋の様になっている。

 奥には11層への階段が見えており、ボスを倒せればそのまま直通で行けるようだ。


「ではでは、サクッと倒しちゃいましょうハルトさん」

「サクッとってな、お前……」


 首を上げるほどの巨体。多分10メートルはあるその巨体をノソノソと動かし地面を揺らす怪物が、そこにいた。


「大丈夫です。10層ボス『バリステイカー』の行動パターンは頭に叩き込んであるです。モブ戦同様、ハルトさんにはヘイトを稼いで貰って、私が後ろから叩くですよ!」


 ディーネはそういいながら駆け出す。

 俺もクロスヘアを合わせ、射撃を開始する。着弾と同時に俺の姿を見とめたバリステイカーはその巨体とは裏腹に俊敏な動きで間合いを詰めてきた。

 ……あれ? ディーネからあいつの行動パターンとか聞いてないんだけど。


「くっ、前言撤回! やっぱり協調性ない!!」


 走りながら光弾をバラ撒き石柱に身を隠す。

 ボスモンスターにはHPバーがあるようで、視界上を横いっぱいに広がるバーのほんの数センチ減っただけだ。

 こりゃ、ダメージソースはディーネのナイフになるな。


 半ばやけくそになりながら走る。

 とりあえず間合いを詰められないように、ディーネの方にヘイトが向かないように心がけながら適度に応戦する。


「『バックスタブ』!」


 掛け声と共に高く飛び上がったディーネは、バリステイカーの首裏を正確に切り裂いた。HPバーは3割削れて……3割!?


 おいおい、ナイフの威力が高すぎないか? まぁ、俺としては万々歳だが。


 バリステイカーは唸りを上げながらまるで蚊を払うかの様にその巨大な腕をなぎ払った。

 おおよそ当たればそのままペチャンコになりそうな攻撃を、ディーネは余裕の笑みを浮かべてナイフを構えなおす。


「ふっふっふ、効かないですよ」


 腕を空中で避けたディーネはそのまま腕を伝い、顔面めがけて猛ダッシュ。


「『エビセレイト』!」

「グオアアアアァァァァ!」


 黒光りするナイフを目にくらうバリステイカー。どうやら早々に決着が付きそうだ。


 その後はハメでもするかのように同じ行動を繰り返し、ボスを倒した。まぁ10層ということは最初のボスだ、比較的簡単に倒せるように設定しているんだろう。

 ボスを撃破したことによる報酬として、2千クレジットが手に入る。……少ない。ドロップ品も大したことのないものだった。


「どうだ? レアドロップはしたか?」

「うー……。しませんでした」


 コンソールをいじりながら目尻に涙を貯めるディーネ。そこまで欲しかったのだろうか。


「ま。また今度こればいいだろ。とりあえず11層のポイントまで――」

「待ってくださいです」

「……おい、なぜまた羽交い締めにする?」


 食い気味にきたディーネはまたもや俺を羽交い締めにし、帰還ポイントまで行かせないとばかりに力を入れた。


「まだ、まだ1回だけですよハルトさん。リポップを待ちましょう、ささ、でるまでいきましょうやりましょう殺しましょう! ナイフが私を待っていますです!!」


 ああ、もう。どうにでもなれ。


――――


「わーい! やっと出たぁ。待っていたですよ『バリスティックナイフ』!! うふふ、うふふふふふ」


 幾体のバリステイカーを狩っただろうか。いやもう正直、覚えていない。もはや作業と化した状態だった。

 その甲斐あってか、スク水姿でナイフに頬ずりをするディーネの姿がそこにあった。


「やっとか。んじゃさっさと帰るぞ、そろそろ眠い」

「あ、待ってくださいよハルトさん! えへへ、今日はありがとうございますです。お礼に今度レストランをご馳走するですよ」

「へいへい。ありがたくご馳走されるよ」


 俺はにこやかに笑うディーネを背に11層へと向かう。

 階段を上ろうと足を掛けた時、俺とディーネの足元に何発もの銃弾が着弾した。


「――おっと、待ちなァ。11層へ行くなら、そのナイフを置いていきな」


 何時からそこに居たのか。後方から聞こえた声に振り向くと、大部屋の隅には完全武装した5人のプレイヤーが居た。


「おいおい、抵抗すんなよ? こっちは実銃装備だ、そっちの初心者のあんちゃんはビームライフル。どうしたって勝ち目がねーよ」

「っ……! 盗賊クラン、ですか」

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