表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブックシェルフ

index:code-second for third


今これを読んでいるのは、ただ読み返しているだけの僕か、それとも別の僕か、全然関係ない他者か。まあ、とりあえず僕でないのなら僕を知ろうとしてのことだろう。いいだろう、それなら存分に理解してもらおうじゃないか。

 (ふと視線を戻したあなたは、理解の字が誤解に変化していることに気付く)

さて。まず君が何かを疑問に思うとすれば、僕が何の為にこれを記したのかということだろうか。読んでいるのが僕以外である時点で、僕は死んでいるのだろう。その時の為、というのが一番簡潔な答えになるだろう。まあ、この序文を除けば残りはただの日記、覚書だ。僕の記憶能力は人より優れているとは言えないから記録として重要な事項を残しておくためのものなのだが。

そもそも、僕の記憶は他者に弄られている節がある。外部メモリは用意しておくにこした事はない。まあ、そちらも改変されてしまえばどうしようもないのだが。

僕じゃない僕ですらない、他者が読んでいる場合は、別の僕、僕ではない僕、という言い回しが引っかかっているだろうか。まあ、言葉通りの意味なんだが。何故そんなものを想定しているのかといえば、僕がそれであるからだ。判り易く言うなら、そうだな。最初に私がいて、私が死んだ後にちゃんと人格を形成出来て安定した自我を発現できたのが僕だ。身体的に死んでいない。私という人格が死んだ後の私の躯に生まれた人格が僕だ。私は記録も痕跡も残していないから、僕じゃない僕には疑わしいかもしれない。それとも、僕と同じように、記憶の残滓くらいは残っているだろうか。

僕と同じであるなら、僕ではない僕はきっと、精神に重大な瑕疵を抱えていることだろう。埋められる何かは早急に見つけた方がいい。おそらく自分で判っているであろうとは思うが。迷いは行動を妨げる。判断の遅れは時に生死に関わる。必ずしも正しい必要はない。間違っていると判った時には正せばいい。死ぬかもしれないが。

僕は博士を信じている。だから、僕ではない僕は博士を信じてはいけない。でなければ、僕が死ぬ意味がなくなる。盲目的な狂信はただの思考停止だ。やるなら他の奴にしておけ。それは僕の通った道だ。

僕が何であるかという問いに対する満足な答えは、僕には持ち合わせがない。私なら知っていたかもしれないが、僕は知らされていない。博士からも満足のいく返答を得られたことはない。博士も知らないのか、或いは黙しているだけか。黙しているだけであれば、博士の管理しているフロアに何か資料があるだろう。それを調べることが本当に君の為になるかはともかく。調べるのであれば、日記の中にでもパスコードを隠しておくからそれを使えばいい。安全は保証しかねるが。

肉体的物理的な問題でなく僕が死ぬとして、その理由は推測が付く。それは悲しい事だ。そうならなければいいが…まあ、野暮な話だな。自殺にしろ他殺にしろ、引き金を引くのはあの人だ。僕はあの人にとって都合の悪いものになっているだろう。君はそう見做されないことを祈る。

自分が何も知らないということを忘れてはいけない。

確かなものなどないのだと忘れてはいけない。

絶対的な基準が存在すると思ってはいけない。

相手と自分の考えが一致していると思ってはいけない。誰もが同じ価値を認めると過信してはいけない。

意識的にも無意識的にも、人は嘘をつくが、それは必ずしも悪意によるものとは限らない。

価値観が違えば、利己的な行動が利他的に働く事もあり得る。善行は他者の為にすることではなく、己の為にすることだ。

何も疑わないことと全てを疑う事は似ている。

声の大きいもの、一人称が大きい主張をするものを簡単に信じてはならない。

幸せの形はそれぞれ違うが、一つ確かな事がある。本人が幸せだと感じている事が幸せだ。他者の幸せを定義することはできない。己の幸せを他者に委ねることはできる。

楽な道が良い道とは限らないが、必ずしも悪いわけではない。最善を尽くせば最善を得られるはずではあるが、それは誰にとっての最善なのか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ