幕の間 first impact ―井上正輝―
その日は天気のいい日だった。
俺はもうひとりの活動部員であり部長である悪友とともに部室を出て校門に向かって歩いていた。
「翔子」
「んー?」
夕暮れ時の空の下で少し先を歩く悪友が間の抜けた返事をする。
「どうしてあいつをうちにひっぱってきたんだよ」
「あいつって?」
「なんか今日部室に来てただろ。勧誘なんて珍しいじゃないか」
立ち止まり顔だけをこちらに向ける。一瞬視線をあげて考えをめぐらすと、「ああ」と小さくつぶやいた。
「井上のことか」
「そう、たぶんそいつ」
「別に。特に意味はないよ?」
それだけ言うとまた前を向いて歩き出してしまった。
「嘘だろ」
目を丸くして振り返る。嘘だな。
「第一なんて言って連れてきたんだ? なんであんなにせっぱつまった顔してたんだよ、あいつ。ふつうに勧誘できないのかお前は」
「んー? 別にふつうだよ」
「……まあいいや。それで、今日井上となに話してたんだよ」
「秘密」
「俺には聞かれたくないってことか」
「ちがうよ、二階堂は聞いてもおもしろくないと思うからさ」
「それは聞いてみないとわからないな」
「それもそうだね」
校門を抜けて高校前のバスを待つ列の最後にふたりして加わる。少し時間が遅くなったので運動部の帰りとぶつかってしまったようで結構な長さの列になっていた。ついていない。
とはいっても前に立っている翔子がなにやら考え事や調べ物をしていたから遅くなったわけで、オカルト研究部としての活動で遅くなったわけではない。なので別に先に帰ってもよかったのだが一応確認しておきたいことがあったので、しかめっ面で考え事をしている翔子を横目に本を呼んで時間をつぶしていただけだ。
「なあ」
「だからなんだって」
「本当に井上を勧誘したことに特別な意味はないんだな?」
「さっきからなんなんだよ、二階堂」
前にいる翔子が振り返って面倒くさそうな顔をする。早く話を切り上げたいのだろう。
「嫌な予感がするんだよ」
「なんで?」
「どうせまた余計なことに首つっこんでるんだろ」
「そんなことはないよ」
「じゃあなんで具合悪そうなんだ」
「風邪」
「嘘だろ」
「うん」
微かに笑うとまた前を向いてしまった。ていうか鼻で笑うなよ、おい。
「俺は心配してるんだからな?」
「わかってるって。でも心配いらないよ。少なくとも二階堂には面倒かけないから」
「翔子ーー」
同じ丘留都高校の生徒がわいわいと楽しそうに会話する声と前の道路を通る回送バスに言葉はかき消された。
「バス、遅いな」




