04話 魔法と戦いの準備
観察云々でそういえば、と始まりから色々とあったせいでステータスを見るのを忘れていた事に気付く。
意識的に考えるだけで開くのはなんとなく便利だ。
名前 マサヒロ
種族 人
レベル 1
【体力】 500/500
【気力】 500/500
【筋力】 10
【頑健】 12
【器用】 10
【敏捷】 14
【魔力】 10
【精神】 18
【抵抗】 17
【回復】 10
【スキル】
観察Lv2 聞き耳Lv1 遠視Lv1 鑑定Lv1 刀術Lv1
皆同じ値からスタートなんだろうか。
違う予感もする。
とすると、この値はどうなんだろうか。
筋力が攻撃力、魔力が魔法攻撃力というのはなんとなく判る。
抵抗もなんとなく予想できるが、精神はどうなんだろうか。
定番では回復職によく使われる言葉だ。
考えるより使った方が早いか。
そう思い、魔法を覚えるのは図書室という事で刀部屋を出て階段を上がる。
件の図書室はえらく小さかった。
確かに図書室という表現が正しい。
司書さんすらいない。
入り口に机や椅子があって、数人が座って本や辞書を読んでいた。
その一人に視線を向けてみる。
名前 蓮蓮
種族 人
レベル 1
頭上に表示される。
観察のレベルが上がれば筋力なんかも表示されるんだろうか。
そんな取り留めのない事を考える。
奥に目をやると、四段くらいの小さな本棚が等間隔に三つだけ置かれていた。
正直な感想としては少ない。
しかし考えてみればここはまだチュートリアルエリアだ。
多い方がおかしいか。
とりあえず一番左の魔法コーナーに足を向ける。
上の段から題名を見てみると、精霊術や召喚術、神聖術や死霊術の記載がある。
回復魔法はこの場合、神聖術だろうと目星を付ける。
一つの本を手にとって見てみる。
《【神聖術】取得》
やはり回復は精神に依存するようだ。
いつでも回復薬が用意できるとは限らない。
定番の回復と毒消しの魔法を修得する。
使う時は単に心に思い浮かべるだけで使えるらしい。
無詠唱も可能だが、好きな言葉を決めて、傷の治りをそれに紐付けてイメージすると使いやすいと記述している。
まぁ考えてみれば日頃使う言葉も"傷を治す"を"治療"という言葉で紐付けている。
確かに使いやすい。
他に麻痺や石化の解除も覚えようとしたが文字化けで本は読めなかった。
読む為の精神の値が低いようだ。
まぁ今すぐ必要というわけでもない。
最後に光の矢を修得して図書室を出る。
さて、これで大体の準備が揃った。
刀を二本と防具類。
厚手の服の懐のポケットに無くさないようにモーテルの鍵を入れ、背負い袋にはランプにロープ。そして方位磁石。
後の雑貨は追々必要に応じて揃えていけばいいだろう。
回復薬に関しては倉庫になかったので、恐らく病院に置いてあると推察する。
神聖術もあるので、一戦して様子見と決めた。
必要なら病院に行けばいいし、必要なさそうなら神聖術だけで十分だろう。
何せ荷物が微妙にかさばるのだ。
持った当初は軽いものだったが筋肉疲労によって徐々に重く邪魔になっていくという。
ここまでリアルに作らなくても……
なので荷物は軽ければ軽い方がいい。
そのまま建物を出て北の方に足を向ける。
さぁ、初戦闘だ。
左右に深く茂った森を眺めながら歩を進めると、抜けたその先には視界一杯の大きな草原が広がっていた。
多くの人が戦っている。
遠目に見れば鹿や水牛が多く存在し、そこでも多くの人達が戦っているのが見えた。
人口密集度が半端ない。
奥には川も見える。
カサリ、と耳が何かの音を捕らえた。
見ると、すぐそばでウサギがこちらを見ていた。
刀を抜く、と同時に素早い動きでウサギは森へと消えていた。
というか速かった。
機敏というレベルじゃない。
狩猟といえば弓を連想するが、多くは罠が主流だったとか。
さっきのウサギを見れば、あれは確かに弓で仕留めようとするのは無理がある。
やはり鹿を狙うべきか。
草原に目を移すと、一人の人間が鹿の角で上空にふっ飛ばされていた。
さらに見ると、一つのパーティが水牛の突進によって数人まとめて上空にふっ飛ばされていた。
これ、近接一人は無理ゲーじゃないのか。
少なくとも何匹も続けて簡単に討伐している人間もちらほら存在しているので不可能ではなさそうだが、マサヒロ自身自分の運動神経には自信が持てない。
とにかく近接初心者でも倒せそうな魔物を捜す事にした。
森沿いに歩を進めると密集度がほころんでいく。
深い森レベルから浅い森レベルだ。
これなら奥へと進めそうだ。
刀は抜いたままで、いつ襲われても反応できるように慎重に進む。
そんな時、匂いがした。
森の匂いとはまた違った匂いだ。
《【嗅覚鋭敏】取得》
そんなインフォメーションと同時に、目の前に腰くらいの背の高さの緑肌の小人が現れていた。
剣と盾を持ち、胸当てを装備している。
一発で判った。
この魔物はあれだ。
名前 ゴブリン
種族 妖精
レベル 3
やはりゴブリンだ。
目の前のゴブリンは不敵に笑う。
「ウゴキデワカル ヒヨッコ ワレニイドムカ?」
イメージと違って、知性を感じさせる言動だ。
なんとなく、死を予感させる。
ゴブリンは弱い魔物じゃなかったろうか。
いや、レベル的には弱い方とは思うんだが。
刀を両手に構える。
とにかく、心を落ち着ける。
レベル差を考えれば勝てない勝負じゃない。
さぁ。
殺し合いの始まりだ。