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正義という名の自己犠牲  作者: 北村ゆきかず
安楽死という名のデスゲーム
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02話 宿の確認

 友情の後は自己紹介が必然だ。


「僕の名前はガーター=ベルトだ」


 マサヒロの表情が一瞬だけ固まった。

 そこはかとなく危険な香りのする名前だ。

 その名前を付ける前に、少しだけでも周りに与える影響か何かを考えなかったのか疑問が残る。


 いや、考えてその名前にしたのかもしれないが。

 とりあえず疑問はスルーして受け止める事にした。


「えっと、名前はマサヒロだ」


「千代と申します」


 大和撫子さんはその姿にふさわしい古風な名前だった。

 このゲームは性別以外の年齢背格好を好きに変えられる。

 言動から、中身も古風な気もするがこれも疑問はスルーする事にした。


 何事も理解してスルーするのが現実的な賢い生き方だ。


 そんなわけで場所移動だ。


 周りを見ると、さすがにもう残っている人はいなかった。

 恐らく武器やスキルの為に倉庫や図書室に向かったのだろう。


「僕達も倉庫か図書室に向かおうか」


 ガーターがそう提案するが、ちょっと待ってほしい。


「いや、普通だとそれが正しいと思う。ゲームだしな。だが、このチュートリアルエリアは半年まではあるって言ってたよな。つまり滞在日数があるわけだ」


「……あ、宿ですね」


 すかさず千代さんが察してくれる。

 ほんわかさんだが鈍くはないようだ。


「何日このエリアにいるかは判らないけど、少なくとも一ヶ月は滞在すると思うんだよ。慣れずに本編に行ったら即死亡な気がするし」


 いつかは死ぬだろう。その覚悟はある。しかしさすがにすぐに死ぬのはアウトだ。

 イズミさんも言っていた。


『できるだけ長く生きてこのゲームを楽しんでください』


 これはこのゲームの本質だ。

 現実の今までの環境その他諸々全てを忘れる事ができる。

 圧倒的な自由がここにある。

 ゲームに職業を採用しなかったのもそこから来ているのかもしれない。


「宿代とかもあるかもしれないね。それじゃまずは宿に行きますか」


「んだんだ」


 ガーターを先頭にログハウス風の部屋を出る。

 他に同じような部屋が五つほど存在した。

 数人が残って談笑している。


 そういえばイズミさんの紹介の時に四番担当とか言っていたか。

 一部屋四十名で計六部屋。二百四十名か。


 ログハウスを出ると、周りに同じようなログハウスが建っていた。

 見える範囲では計四軒だ。

 少なくとも約千人くらいは人がいそうだ。

 今でも周りに結構な人が見える。



《【聞き耳】取得》



 おう?

 まぁスルーだ。


「えーっと、宿ってどっちだろう」


 イズミさんの説明は話半分で聞いていたので細かいところは憶えていない。


「確かここが西側で、宿は南側の奥だっけ」


「後は中央が倉庫や図書館、買い取り場。東側が病院とか言ってましたね」


 ガーターと千代さんは説明をちゃんと聞いていたようだ。

 というわけで南側を目指す。


 先に宿を確保しておこうとしたのは少数なようだ。

 明らかに人が少ない。

 ほとんどが武器やスキル、もしくは戦闘を優先したようだ。


 まぁマサヒロ自身もソロだったら宿なんて後回しにしていた気がする。

 道中、遠くの風景が目に映る。

 どうやらこのエリアは山に囲まれているらしい。

 東西南北、全方位に大きな山が見える。



《【遠視】取得》



 次々とスキルを覚えていく。

 この調子だとやはりスキル枠は貴重になりそうだ。


 南側に着くと、圧倒的なローマ風の巨大な建物が目についた。

 でかい。

 その建物を包囲するように二階建てのモーテル風な建物がかなりの数で幾つも建てられている。


 一つのモーテルには外側に開かれたままの扉が五つほど。

 受け付けのような建物は存在していないようなので、どうも宿に関しては無料なようだ。


 馬車や乗り物でもあるのか、ご丁寧にモーテルの前はかなりの広さが保たれている。

 ローマ風のどでかい建物がかなり気になるが、まずはとりあえず宿という事で一番近い部屋を見てみる事にした。


 2という数字のモーテルの一番端の部屋を三人で覗き見る。

 表札には【201】と書かれてある。

 靴箱はあったが日本の玄関のような仕切りはなかった。


 ですよねー。

 洋風ですよねー。


 靴箱の上には同じ鍵が六つ置いてある。



《【鑑定】取得》



 む?

 観察と鑑定は別なのか……?


 中はかなり広い。

 入り口近くに男女別に分かれたトイレがあり、一階はリビングとキッチン、二階には六つの小部屋が存在した。


「パーティって最大六人だっけ?」


「確かそうだったと思うよ」


 なるほど、つまり居住兼パーティの拠点といった感じか。


「これも何かの縁ですよね。このまま三人でパーティを組みませんか?」


 千代さんがそう提案してくる。

 経験値の概念がないからパーティを組む事はあまり重要ではなさそうだが。


「なら、ちょっと実験も兼ねて組んでみようか」


 というわけで組んでみる。

 視界の左端にパーティ全員の体力気力が表示される。


 ちょっと邪魔だ。


 思うと同時に表示が消える。


 戦闘中は消えてたらまずいか……?


 思うと同時にまた表示される。


 なるほど、微妙に便利か。

 各自気付いた情報を共有する。


「んじゃ、とりあえず暫定で組んで、ここを拠点にしますか」


 反対はなかった。

 まぁ見えた範囲でもモーテルはかなりの数があった。

 後々パーティ解散したとしても各自別の部屋を探せばいいだけだ。


「というわけで、拠点も決まったので次は中央なんだろうが、ちょっとその前にローマの建物を覗いてみないか」


「まぁ、あれは確かに目立つよね」


「異存はありません」


 どうやら二人も気になっていたようだ。

 次の目的地が決まる。


 玄関の靴箱の上に置いてあった鍵は合鍵だったようで、各自で手に持ち、鍵を閉めて目の前のローマな建物に足を向ける。

 というか荷物袋か鞄が欲しい。


「アイテム欄とか無いのかな」


「少なくともイズミさんは言ってなかったね」


「布が一枚でもあれば風呂敷にできるんですが……」 


 さすが千代さんだ。年齢が非常に気になる。

 うーむ、しかし本気で無いんだろうか。

 それとも武器と一緒に倉庫にあるんだろうか。

 ちょっと不便だ。

あれぇ、説明回が終わらない……

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