.%◇第3話 -異変-
美悠はなんとか練習に間に合い
体を馴らしはじめた。
その隣で優美も
体を伸ばしはじめる。
「お疲れっありがと美悠♪」
「もうっこっちは散々だったんだから。で、優美の用事って何だったの?」
「えっ?あー...なんでもない♪」
苦笑いを浮かべ
明後日の方向に
視線を向ける優美。
美悠は長年の感から
何かを悟り
それ以上突っ込まなかった。
「よしっ!!!練習始めるよっ!!!」
「はい!!」
コートの中央へ
向かおうとして
立ち上がる優美。
美悠も立ち上がろうと
膝をついた瞬間。
「..ッ!!!ぁッ...」
急に胸に激痛が走り
その場に崩れ落ちてしまった。
「美悠!??」
優美が慌てて駆け寄る。
他の部員も美悠へと
視線が走る。
「だっ大丈夫。ちょっと胸が痛んだだけっ」
「そう...?本当に大丈夫...?」
「うんっ」
そう言って
立ち上がる。
「兼実っ大丈夫?」
キャプテンの
西永 歩が
駆け寄ってきた。
「キャプテンっ!!大丈夫ですっ!!!」
「大会前なんだし...無理しちゃダメだよっ」
「はいっ!!!」
そういうと
心配そうに美悠を見て
またコートへと
戻っていった。
....今の激痛。
なんだったのかな...?
その日は
練習に集中できず、
何度もミスをしてしまった。
ー校門。
「はぁ....」
「そんなに落ち込まないのっ!!!」
「だってぇ...」
肩を落とし俯きながら
歩いていた美悠は
元気のない声をあげた。
その時、後ろから
声が聞こえた。
「君っそこの髪の長い子!!!止まって!!!」
振り返った美悠は
思わず優美を見た。
優美はストレートで
肩に少しかかるくらいの
ショートヘアー。
対する美悠は
ロングの髪を
ポニーテールに
結い上げている。
そして
辺りには
猫一匹すらいない。
ということは...
「わっ私!!!」
「そう君!!!」
声の主もそうだと言う。
そして美悠達に追い付き
荒い呼吸を整える。
「えっもしかして...安斎先輩ですか!!?」
「...?知ってるの優美?」
「当たり前よ!!!高校バスケ部の期待のエースっ安斎 藍!!その美貌と頭の良さから高等部の王子様って呼ばれてるのよ!!!」
目を輝かせて
語りだす優美。
「ふーん。」
しかし
美悠は全く興味なさげに
返事をした。
「へぇ...そっそうなんだ...」
そして
藍も全く知らない事実に
苦笑いを浮かべた。
「えっ...待って...安斎って...あぁ!!!さっきぶつかっちゃった...」
「そうそう。あの安斎だよ。あの時は本当にごめんね。」
「ちょっちょっと美悠!!!あの時って何!!!」
「えっ?あぁ...優斗兄にノート渡しにいったときぶつかったんだ。」
優美は目を見開き
唖然となっている。
「優斗...?あぁ月島かっ!!!そういえば君....顔が似てるもんね!!兄妹かなっ?」
そう言って優美に
笑顔を向ける。
「はっはい!!!そうです!!!」
優美は顔を真っ赤にして
返事をする。
美悠は横目でそれを見ながら
どうしたのかなぁ...
っと考えていた。
その時、藍の携帯が鳴った。
携帯を取り出し
液晶を見た藍は
一瞬で顔が青ざめた。
「やっやばい。時間がないっ!」
そして美悠を凝視して
がばっと肩を掴んだ。
「君...中等部だよねっ!!!」
「はっはい...」
「名前は?」
「兼実...美悠です。」
「学年とクラスは?」
「2年3組です。」
勢いに圧倒されて
思わず個人情報を
ベラベラと話しだす美悠。
「わかった!!!じゃぁ美悠ちゃん。また明日会いに行くからっ!!!」
「はっ?」
「えっ!!!!」
美悠と優美の声が
ハモった。
「まだ...お詫びしてないしっ」
「...お詫びなんていいです。」
「いや。こっちの気がすまないんだよ。」
「はぁ....υ」
「じゃぁ明日っ!!!!」
そう言ってまた藍は
走り去っていった。
「よく走る人だなぁ...」
思わず呟いた美悠の声に
反応がない。
「優美っ?うわっ!!!」
優美は目をハートにして
顔を真っ赤にしていた。
「藍先輩...かっこいい!!!!」
「....υ」
呆れて何も言えず
美悠はさっさと歩きだした。
藍先輩...か....
変な人...
「あー!!!待ってよ美悠!!!」
「いーやっ」
そうやって喧嘩しながら
美悠と優美は帰っていった。