.%◇第1話 -幸せな日々-
朝陽が差し込み
心地よい日差しが降り注ぐ朝。
「んッ〜朝かあ〜」
目覚めスッキリな朝を
迎えていた。
少女、美悠は
制服に着替えると、
元気よくリビングへ向かった。
リビングでは
母、美咲【みさき】が
フレンチトーストを
焼いていた。
部屋中が甘い香りで
いっぱいになっている。
「おはよう。お母さん♪」
「あっおはよう、美悠。」
にっこりと微笑して
またキッチンへと向かう。
美悠はテーブルに座り、
真ん中に置いてある
写真盾を手にとる。
「おはよう...お父さん。」
美悠の父、
兼実 蓮は
今、ハリウッドにも進出した
日本の誇る大人気俳優なのである。
美悠の母、
美咲は蓮の所属している
プロダクションの元社員。
そこで知り合い恋に落ちたと
いうわけである。
現在は専業主婦となり
蓮のいない兼実家を
切り盛りしている。
「ねぇお母さんっ。お父さん...いつ帰ってくるの?」
「そうねえ...来月には帰ってくるんじゃないかしら?」
「来月かあ...」
蓮は現在アメリカに在住していて
滅多なことでは
家に帰ってはこない。
「ほら早く食べないと...」
言いかけた美咲の声を
遮るように玄関のベルが鳴った。
「ほらっ。優美ちゃんが来ちゃったじゃないっ。」
「うそっ!!!」
慌ててパンをくわえて
鞄を持って飛び出した。
後ろでは
「座って食べなさい!!!」
という美咲の声が聞こえたが
そんなことしては朝練に
遅れてしまうと
さっさと玄関へと向かった。
「おはよう優美♪」
「おは..ってまた立ち食いしてυ」
半分呆れながら
美悠を迎えたのは
隣に住んでいる、
月島 優美。
名前が
【みゆ】と【ゆみ】と
いうことがきっかけとなり、
仲良くなったのだ。
幼稚園からずっと
一緒なのである。
2人ともバスケ部に所属していて
次期エース候補として有名なのだ。
「ほらっ。さっさと行かないと遅刻するでしょ!!!」
「まっ待ってよ優美!!!」
そう言って
慌てて優美の後を追う美悠。
兼実美悠の一日は
こうやって始まった。
-体育館。
朝から体育館には掛け声が響き
練習が行われていた。
「よし!!!全員集合!!!」
「はいっ!!!」
部長の掛け声で
すぐに集まってくる
バスケ部員。
「今日の練習はここまで!!!大会近いんだから気を抜いちゃだめだよ!!!じゃあ解散!!!」
優美は朝からの激しい練習で
汗がびしょびしょだった。
しかし、美悠は余裕の表情で
元気にスキップしていた。
「なんでそんなに元気なのよ...さすが兼実蓮の娘...」
「優美!!!!」
慌てて優美の口を塞ぐ美悠。
「はいほ〜ふよ。はれほひいへはんはいはいはほ。」
訳すと
『大丈夫よ。誰も聞いてなんかいないわよ。』
である。
美悠は手をとると
周囲を確認した。
皆疲れていて、
それどころでは
なさそうだった。
美悠は父親が【兼実 蓮】だ
ということを隠している。
【兼実 蓮】は
結婚していないことに
なっているからだ。
蓮は発表していいと
言っていたが
美咲が迷惑をかけたくない
と言って公表していないそうだ。
美悠としても
親に振り回されるのは
正直迷惑だったので
ありがたかった。
だからと言って蓮のことが
嫌いなのではない。
いつも会えるのを
楽しみとしているのだ。
「あっ早く戻ろうっ!!」
「うわっHR始まる!!!!」
そう言って2人は慌てて
教室へと走り出した。